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国境へ

12 何故こうなったのでしょう?

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 私は、修理されたばかりの馬車を走らせた。
 街を出てからは、何度も振り返った。

 追ってきていないかどうか、不安だった。
 追ってきて欲しいのか、それすら分からずただ不安ばかりが膨らんだ。

 本当に良くして貰ったのだ。

 そんな思いを飲み込んで、山道を駆けた。

 国境の街ブルンデンへは、山道が続く。
 高低差があり、場所によっては険しい道となる。

 この旅で随分慣れたから、馬車の操縦には困らなかった。
 家を追放された当初だったら、危なかったかもしれない。

 この地形こそが、国境の街ブルンデンとオーリア国との交流が多い理由だ。
 国は違えど、便利さは格段にいいからだろう。

 私はそんな事を思いながらも、休息を取っていた。
 手元にあるのは、商隊の人達と買ったおやつ。

「楽しかったなぁ」

 一人ポツリと呟いた。




 いつもの様に野宿を挟み、そろそろ国境の街が見えないかな……と、思っていた所に異変が起こっていた。

 そこは、小さな村だという。
 本来国境の街に着く前に、ひと休みする人が多いそうだ。

 ところが、今は驚く程に違っていた。

「ちょっとどいて、邪魔だよ。はいはい、そこで立ち止まらない。馬車で移動の者はこっちね。通した通した~」

 道の整理をする、威勢の良い声が響いた。

「一体、どうなっているのですか?」

 私は驚いて、周りの人に聞いていた。

「嬢ちゃん、何も知らずにここに来たのか?今、大変な事が起こっているんだよ」
「よく、前の街を通過出来たね。今ブルンデンへ行く道は封鎖されたと聞いたよ」

「そうなんですか?私は朝早くに街を出たから知らなかったです」

「じゃあ、嬢ちゃんは閉鎖前だったのかね」


 そう言えば、追っ手どころか、後ろからやって来る人は誰もいなかった。

「びっくりしただろう。半年前に簡易門が使えなくなったのは知ってるかい?」

「えぇ、それは知ってます」

 愕然となりましたもの。

「それで、かなり街の者が不自由してたんだ。正規の門だと、手続きやら確認やらで時間取られちまうだろ。かなり混みあっていて、苦情が凄かったんだ。そんな所に王都の騎士が無理難題を吹っかけてきてね」

 王都の騎士?それって……私は身震いした。

「もっと荷物の中味を精査しろだとか、水晶をもっと丁寧に扱えとか。まぁ、色々と難癖付け出してさ。それで街に入る事自体も制限し始めて、この村まで人が溢れてんだよ」

「この時期は特に、他の所からも国境目指して人が集まるのに酷いもんさ」

「今交渉中らしいんだが、どうなる事やら……」

 私は馭者席に座りながら、他の従者の方や護衛の方達から情報を集めた。

 馬車の移動も、どこかで止めているのだろう。
 全く進まず、村の子供達が水や飼い葉を売りに来ていた。

 そんな中、魔道具を使ったのだろうか。
 突然の大声が、響き渡った。

「あまりの混雑でこの村も困惑しております。ブルンデンの街の長と協議した結果、一時人を押し出す事に決定しました。騎士は現在、長の説得に応じた模様です。予行・・で厳しくしすぎたと言う風にこちらに伝わって来ました。本番はいつから始まるのか不明です。騎士に止められるまでの間の処置となりますが、お急ぎの方も列を乱さず進行してください。我が村は、皆様の旅の無事を祈ります」

 足止めされていた者達の、怒号の様な雄叫びが響いた。

 途中で馬車を降ろされたのか、最初から徒歩だったのか。
 一斉に止まっていた馬車のいる所に、人が押し寄せる。

 もちろん、私の元にも人が押し寄せた。
 私の馬車は二頭式だが、修理して取っ手が変わり、貴族の馬車には見えないのだろう。

 私は、どうしていいか分からない状態に陥ってしまった。

「なぁ、空いてるんだろ?乗せてくれよ」
「ブルンデンの街迄でいいの。空いてるでしょう?」
「子供がいるのよ。乗せてくれない?」

 そんな中、私と同じ位の少年少女五人が当たり前の顔をして、勢い良く近づいてきた。

「あーー、この馬車はダメよ。俺らのだから」
「ほら、見てわかるでしょう?私達ちょっと用事があって、席を外してただけなのよね」
「俺達、これからオーリア国に学びに行くんだ。遅れるとやばいから邪魔しないでくれよな」

 私が 五人のあまりの勢いに、口をぱくぱくとするも言葉にならない。
 その間に、四人はちゃっかりと馬車の中に乗り込み、一人は馭者席に座った。

「行先同じだったら、一緒に行こうぜ。俺達と合わなかったら、街着いて降ろしてもいいからさ。よろしく頼むよ」

 この状況で彼らを無理に降ろしても、他に声を掛けられるだけだろう。
 私の新しい旅の道連れは、知らぬ間に決まってしまった様です。
 


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