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第二章
海坊主ですわ
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寝れなかった。
ここ数日、自分の過去を聞いて想像もしていなかった事実に驚き更にピカピカ、ツヤツヤ綺麗なダリルさんにプロポーズみたいな告白をされて脳がおかしくなっているみたいだ。
隣でイビキをかいているキルジーさんを見てなんかホッとする。
ずっとここに居たい気持ちときちんと術を解いてもらって帰らないといけないのかなって思う気持ちの板挟みだ。
顔を洗いに行って鏡を見る。
酷い顔だ。こんな化け物だけど寝不足だって分かる。
ふふ......。化け物が更に化け物に。
でも今日はシャンとしないと。
海坊主の話をきちんと聞きたい。
朝食を食べながらボーとしていたらシャーロットさんがミルクティーを持ってきてくれた。
「あら、寝不足?やっぱり私と同じ部屋にしない?キルジーさんのイビキで寝れないんじゃない?」
こんな顔なのに寝不足って分かるの⁉︎
「駄目です。シャーロットと一緒の部屋なんて。違う意味で寝かせないのでは?」
ダリルさんが私の隣に座ってシャーロットさんにシッシッて手を振り向こう側に行けとやっている。
「どういう意味よ。このムッツリ!それに私には何故『嬢』をつけないで呼び捨てなわけ?」
「貴方が想像してる通りですよ。この変態。貴方に『嬢』など......つける人などいますか?」
「いやぁぁ!朝から頭くる!貴方って人をムカつかせる達人ね!」
あ~。朝から賑やかだな。
「ほら、ほら、お前さん達も食べちまいなよ?ミアが来ちまうよ」
キルジーさんがシャーロットさんとダリルさんの分の朝食を用意している。
何かいいなぁ。こーゆーの。
家族っぽくて。
私はニコニコしながらミルクティーを飲んだ。
ちなみに今日のレストランは午前中臨時休業にしてくれた。夕方からの営業だ。
「おはようございます。アイラ嬢は今日も可愛いですね。朝から会えるなんて嬉しいな。王都にいた時は朝から会いたいと毎日思っていたのですよ?」
「お、おはようございます......え?あっ、そうなのですか?それはありがとうございます」
昨夜の事もあって私は照れる。
顔、赤くなってないかな?
いや、この顔じゃあ顔色なんて分かりっこないか。
「何だ?そのラブラブした雰囲気は!一晩で何かあったのか?」
いつの間にか私の隣に座っていたルカさんがもの凄い勢いで訊いてくる。
「いつの間に来てたのですか?驚くじゃないですか」
ダリルさんが朝食を食べながら淡々とルカさんに返事をする。
「アミーが心配でね。さっき来た。で、アミーとダリル何かあった?」
ルカさんが私に訊いてくる。
プロポーズされたとは言えない。
「しつこい男は嫌われますよ?ね?アイラ嬢?」
ダリルさんは余裕がある。
素敵な人だな。でも変態なんだよね?
私まだ変態の定理が分かってないかもしれない。
なんだかんだやっている内にミアさんがやって来た。
私は頭からきっちりスカーフを被って顔を見えないようにしている。
顔に傷があるからとミアさんには説明した。
ミアさんは14歳。学校の行事で海坊主を見たらしい。
「『海の学校』って行事が昨年あったのですがその時に友達数名とボートに乗ったんです」
ミアさんが恐る恐るといった感じで話し出した。
「海の学校とは何をする行事ですか?」
私は学校に行った事が無いので興味津々だ。
「海の近くにある宿泊施設に毎年14歳の子達だけで泊まって色々勉強します。海の生物の事とかこの島にとってどれだけ海が大切かとか」
へぇ~。楽しそう。
「ルカさんも行きましたか?」
私はルカさんに訊く。
「勿論行ったよ。ランチを自分達で作ったりして楽しかった。この島では13歳から15歳までが学校に通うんだよ。その中間の14歳達が毎年行くんだ」
「そうなのですね。楽しそうです」
「アミーは来年から学校だな!」
ルカさんが微笑みながら言った。
するとダリルさんが間髪いれず言ってきた。
「アイラ嬢は王都に帰って今年から学校に行きますよ?王都では12歳から通いますからね」
「アミーはずっとここに住むんだ。王都には行かない」
ルカさんとダリルさんの静かな戦いが始まる。
「はい、はい。その先は後からにしておくれ。今は海坊主の話だろう?」
流石キルジーさん。
2人の喧嘩を直ぐに止めてくれた。
「では、続きを」
シャーロットさんが仕切る。
2人の喧嘩を少し驚いていたミアさんが続ける。
「あ、はい。それでボートで結構遠くまで行ってしまって慌てて岸に戻ろうとした時に声がしたんです。海の中から」
海の中⁉︎
「最初は皆んな気のせいだと思って誰も何も言わなかったんですけど私が海の中から声が聞こえるって言ったら皆んなもうん、うんって」
「なんて聞こえたのですか?」
ダリルさんが前のめりになった。
「助けてくれって聞こえました。他の子達もそうだって」
「助けてくれ......ですか」
探偵ダリルさん降臨だ。
「私達、周りを見たんですが勿論誰もいなくて。波の音がそう聞こえたんだってなって。そしたら突然に海から海坊主が飛び跳ねてきたんです。ボートの上に」
「え⁉︎ボートの上に?」
私は驚いて思わず叫んでしまった。
そんな間近で見たの?海坊主を?
だって海坊主って結構気持ち悪い生き物じゃなかったっけ?
「はい。驚きました。だって顔は人間で首から下がタコだったので......」
うわー。何かグロテスク。
「助けてってまた言って直ぐに頭から溶けてしまいました。溶けた液体も蒸発して跡形もなくなりました。なので私達は幻でも見たのか?って少しパニックになりました」
ここ数日、自分の過去を聞いて想像もしていなかった事実に驚き更にピカピカ、ツヤツヤ綺麗なダリルさんにプロポーズみたいな告白をされて脳がおかしくなっているみたいだ。
隣でイビキをかいているキルジーさんを見てなんかホッとする。
ずっとここに居たい気持ちときちんと術を解いてもらって帰らないといけないのかなって思う気持ちの板挟みだ。
顔を洗いに行って鏡を見る。
酷い顔だ。こんな化け物だけど寝不足だって分かる。
ふふ......。化け物が更に化け物に。
でも今日はシャンとしないと。
海坊主の話をきちんと聞きたい。
朝食を食べながらボーとしていたらシャーロットさんがミルクティーを持ってきてくれた。
「あら、寝不足?やっぱり私と同じ部屋にしない?キルジーさんのイビキで寝れないんじゃない?」
こんな顔なのに寝不足って分かるの⁉︎
「駄目です。シャーロットと一緒の部屋なんて。違う意味で寝かせないのでは?」
ダリルさんが私の隣に座ってシャーロットさんにシッシッて手を振り向こう側に行けとやっている。
「どういう意味よ。このムッツリ!それに私には何故『嬢』をつけないで呼び捨てなわけ?」
「貴方が想像してる通りですよ。この変態。貴方に『嬢』など......つける人などいますか?」
「いやぁぁ!朝から頭くる!貴方って人をムカつかせる達人ね!」
あ~。朝から賑やかだな。
「ほら、ほら、お前さん達も食べちまいなよ?ミアが来ちまうよ」
キルジーさんがシャーロットさんとダリルさんの分の朝食を用意している。
何かいいなぁ。こーゆーの。
家族っぽくて。
私はニコニコしながらミルクティーを飲んだ。
ちなみに今日のレストランは午前中臨時休業にしてくれた。夕方からの営業だ。
「おはようございます。アイラ嬢は今日も可愛いですね。朝から会えるなんて嬉しいな。王都にいた時は朝から会いたいと毎日思っていたのですよ?」
「お、おはようございます......え?あっ、そうなのですか?それはありがとうございます」
昨夜の事もあって私は照れる。
顔、赤くなってないかな?
いや、この顔じゃあ顔色なんて分かりっこないか。
「何だ?そのラブラブした雰囲気は!一晩で何かあったのか?」
いつの間にか私の隣に座っていたルカさんがもの凄い勢いで訊いてくる。
「いつの間に来てたのですか?驚くじゃないですか」
ダリルさんが朝食を食べながら淡々とルカさんに返事をする。
「アミーが心配でね。さっき来た。で、アミーとダリル何かあった?」
ルカさんが私に訊いてくる。
プロポーズされたとは言えない。
「しつこい男は嫌われますよ?ね?アイラ嬢?」
ダリルさんは余裕がある。
素敵な人だな。でも変態なんだよね?
私まだ変態の定理が分かってないかもしれない。
なんだかんだやっている内にミアさんがやって来た。
私は頭からきっちりスカーフを被って顔を見えないようにしている。
顔に傷があるからとミアさんには説明した。
ミアさんは14歳。学校の行事で海坊主を見たらしい。
「『海の学校』って行事が昨年あったのですがその時に友達数名とボートに乗ったんです」
ミアさんが恐る恐るといった感じで話し出した。
「海の学校とは何をする行事ですか?」
私は学校に行った事が無いので興味津々だ。
「海の近くにある宿泊施設に毎年14歳の子達だけで泊まって色々勉強します。海の生物の事とかこの島にとってどれだけ海が大切かとか」
へぇ~。楽しそう。
「ルカさんも行きましたか?」
私はルカさんに訊く。
「勿論行ったよ。ランチを自分達で作ったりして楽しかった。この島では13歳から15歳までが学校に通うんだよ。その中間の14歳達が毎年行くんだ」
「そうなのですね。楽しそうです」
「アミーは来年から学校だな!」
ルカさんが微笑みながら言った。
するとダリルさんが間髪いれず言ってきた。
「アイラ嬢は王都に帰って今年から学校に行きますよ?王都では12歳から通いますからね」
「アミーはずっとここに住むんだ。王都には行かない」
ルカさんとダリルさんの静かな戦いが始まる。
「はい、はい。その先は後からにしておくれ。今は海坊主の話だろう?」
流石キルジーさん。
2人の喧嘩を直ぐに止めてくれた。
「では、続きを」
シャーロットさんが仕切る。
2人の喧嘩を少し驚いていたミアさんが続ける。
「あ、はい。それでボートで結構遠くまで行ってしまって慌てて岸に戻ろうとした時に声がしたんです。海の中から」
海の中⁉︎
「最初は皆んな気のせいだと思って誰も何も言わなかったんですけど私が海の中から声が聞こえるって言ったら皆んなもうん、うんって」
「なんて聞こえたのですか?」
ダリルさんが前のめりになった。
「助けてくれって聞こえました。他の子達もそうだって」
「助けてくれ......ですか」
探偵ダリルさん降臨だ。
「私達、周りを見たんですが勿論誰もいなくて。波の音がそう聞こえたんだってなって。そしたら突然に海から海坊主が飛び跳ねてきたんです。ボートの上に」
「え⁉︎ボートの上に?」
私は驚いて思わず叫んでしまった。
そんな間近で見たの?海坊主を?
だって海坊主って結構気持ち悪い生き物じゃなかったっけ?
「はい。驚きました。だって顔は人間で首から下がタコだったので......」
うわー。何かグロテスク。
「助けてってまた言って直ぐに頭から溶けてしまいました。溶けた液体も蒸発して跡形もなくなりました。なので私達は幻でも見たのか?って少しパニックになりました」
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