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第一章
シャーロットに溺愛されているような気がしますわ
しおりを挟むあの事件で私の聖力がかなりのものだとお父様とお母様に知られてしまいました。お母様は私に保護魔法をかけてくれましたわ。
保護魔法とは色々種類があるのですけれど私にかけたのは私の聖力が周りの人には感知できないようにするものだそうです。そして言いました。
「いい?アイラ。この力は人前では使ってはいけませんよ?使ってしまうと私達家族と別れなけばいけなくなります」
「あい!じぇったいにちゅかいましぇぇん」
10歳の聖力検査までは隠し通したいようですわね。
ま、聖力検査でも私、隠しますけれど。
それとルース様とご家族様には私の聖力のことは秘密にして頂きました。
もちろん命を助けてもらって腕まで元通りに治してもらったので口が裂けても言いませんとお約束してくれましたわ。
そして今日もシャーロット親子が訪ねて来ています。2週間に一度くらいの頻度ですの。お母様も思う事がおありで様子を窺っているようですわ。
お母様とオレット様がお話をされている時は大体シャーロットとお庭に出て遊んでいます。いつもマリルが側に居てくれるので安心していますわ。今回違うのはアクアも庭の隅っこに待機している事かしら。
「新しい従僕?なんか怖い」
5歳のシャーロットがアクアを見て少し怯えています。何かを感じるのでしょうか?
「なにもこわくないでしゅよ?」
「そ、そう?」
シャーロットは前の人生の時みたいにいつでも優しくしてくれます。でもそれは演技なのでしょう?少し悲しいですわ。
今世、静かに生きていく為にはシャーロット親子をどうにかしないといけません。なので私は聖女様に興味など無い、聖力はあってもとても微量だとアピールしています。毎回です。
ですが、前の人生と少しシャーロットの様子が違います。
「今はまだ3歳だもんね。力が少ないのは仕方ないと思う。そのうちアイラなら沢山力を使えるようになるわ。力を使うアイラはとても綺麗で素敵だと思う」
と、そんな事を言ってくるのです。
そして私の手を握り
「アイラは一生私が守っていく。ね?大好きなアイラ。誰であっても貴方を傷つける人は許さない。それがお母様だとしても......ね」
また出ました。「一生」です。私の周りの人達は本当にこのフレーズが好きですわね。
まだ5歳児のシャーロットがこんな事を言うなんて。確かに普通の5歳児より大人びていますが。
しかも自分の母親に対しても敵意を抱いている様な......。
気のせいですわよね?
シャーロットがギュッと私を抱きしめてきます。これは最近毎回ですわ。
そして愛を囁きます。
「アイラがもう少し大きくなったら手を繋いでデートしようね。私達ずっと一緒だよ?結婚できなくたって一緒に住めばなんだって出来るし。ね?」
5歳児にして妖艶な微笑みですわ。
何かが違うのです。シャーロットがおかしいですわ。
なんだって出来る......とは⁉︎怖いので考えるのを止めますけれどなんとなくお兄様と同じ道を走っている様な気がしてなりません。
そろそろ離してはくれないかしら?
そう思っているとマリルがシャーロットを私から引き剥がしました。
「シャーロット様、お嬢様が暑がっておいでです。今日は日差しが強いので過剰なスキンシップはお控え下さいませ」
「あら?メイドごときが私に指図するの?」
凄いですわ。5歳にしてもうそんな事が言えるのですわね。
前の人生を振り返ると私が5歳の頃はまだ何も分からず美味しいお菓子をただひたすら求めて生きていた様な気がしますわ。人間にさえなっていない様な。反省です。
「しゃーろと。まりるにいじわるしないで?ね?」
毎日鏡を見て練習しているとびっきりの笑顔で言ってみましたわ。
今からシャーロットに恨みをかうのは面倒なので。
するとシャーロットはお顔を真っ赤にしましたわ。まずい。これは相当怒っていますわね?お顔が赤くなるまでって。
「わ、分かったわ。アイラがそう言うのなら。アイラが嫌がる事はしたくないの」
そう言ってうつむきました。
良かったですわ。怒っていないのですわね?でも疑いたく無いけれどこれも演技?私を陥れる為の嘘なのでしょうか?
「あら?先程まで曇っていたのに晴れてきましたわね?」
突然私の後ろにオレット様が立っていました。後ろを振り返ったのですが勢いがよすぎて尻餅をついてしまいました。
まだ小さいから頭が重いのでよく転びます。
オレット様の隣にはお母様が居ました。視線が鋭く少し怖いですがどうやらオレット様を監視している様子。
「驚かせてしまってごめんなさいね?あらあら、可愛いお顔が土で汚れてしまっていますわね?」
オレット様が私の頬に触れようとします。あっ、これ、化け物に見せる為の術をかけようとしてますわね?そうはいきませんわよ?
私がその手を払い除けようとした瞬間でしたわ。
シャーロットがオレット様の手を叩きました。
「お母様でも駄目。アイラは私だけのアイラなの!触らないで!」
ん?デジャブかしら?
お兄様と同じ様な事を言っていますわ?
「あ、あら?そうなの?シャーロットがそんなにアイラちゃんを好きだったとは知らなかったわ」
ほほほと笑ってオレット様は屋敷へと戻っていきました。
お母様も私とシャーロットにニコリと笑いかけその後に続いて歩いて行きました。
「お母様でも駄目!アイラは触らせない!」
がばっとまた抱きつかれました。
シャーロット?どうなってますの?これは演技?それとも。
まだ見極められませんわね......。
またマリルがこめかみに青スジを立ててシャーロットを私から引き剥がします。
その夜です。
私がベッドに入りマリルが灯りを消してお部屋から出て行きました。
するとアクアが現れましたわ。
「よう。昼間の親子。かなりお前に執着してるみたいだな。それぞれ違う理由でだが」
違う理由?いえ、目的は一緒のはずですわよね?
「そうでしゅか?どちらもわたちをころしょうとちてましぇんか?」
「母親の方は明らかにそれだけど娘の方はアレだ、お前の変態兄貴と同じだぞ?」
は?そうなのですか?
変態......。
シャーロット、何故に変態の道へ踏み出したのですか?黒魔術師の道よりはいいのかしら?
「なじぇわきゃる?」
ふっ......。3歳児とはいえ何故私はきちんと話せないのでしょうか?
今更ですが。
「俺は何でもお見通しなわけ。便利だろ?」
「ふぅ~ん。そーゆーちからがあるのでしゅね?」
「そう。だからチビはいつまでも純粋で綺麗でいてくれよ?」
「わたちはもうしゅでにはりゃぐろでしゅよ?」
悪女風に決めたはずがこの話し方のせいでイマイチですわ......。
「ははは。腹黒って。チビは可愛いな。しかしお前の周りは変態だらけだな。まともな奴が殆どいなねーぞ?」
変態だらけ。
そんな環境で地味に静かに暮らしていけるのかが心配になってきましたわ。
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