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第一章

処刑されましたわ

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「天使......ですの?」

「そうだ」

ニコニコして立っている男性がそう答えてくれました。確かに教会に飾ってある絵に描かれている天使と同じ服だし羽根もあるわ。信じましょう。
でもガラが少々お悪い。

「もう、私は処刑されましたの?」

「されたよ」

あっさり言いましたわね?
もう少し可哀想に感とか残念だね感を出してもらえると有り難かったのですけれど。

「でも今、こうして話してますし、まだ幽閉されてますわ?」

私は部屋の中を見渡して言いました。

「あぁ~。これはね、お前が勝手に創り出した妄想の場所。本当は生と死の狭間の空間なんだよねぇ~」

パチンと天使が指を鳴らすと今まで居た石造りの部屋が一瞬にして無くなり真っ白な空間になりました。

「あれ?」

私は慌てます。

「な?本当はこんな空間なんだよ。お前がなまじ力が強いから完璧にあの部屋を創り出せてたわけ」

力が強い?
なんの事かしら?

「お前は後の大聖女になる予定だった。それだけの聖力があったんだよ。それなのにまんまとあの女に騙されやがって。馬鹿なのか?」

天使に暴言を吐かれました。
そんな事より今、なんと言いました?

「え⁉︎私が大聖女様になる予定でしたの?わぁ。嬉しいですわ~。でも聖力全然無かったですのよ?」

「喜んでる......。この状況で。流石は大聖女、器がデカいな。その聖力が無かったのもあの女に騙されてたんだよ」

あの女に騙されたとは?
そこら辺を詳しくお願いしますわ。

「シャーロットだよ。あの女の家系は黒魔術が使える。ずっと白魔術に見せかけてるけどね。で、お前が邪魔で排除した。それも小さい頃からお前の力を封じて。きっとあいつらには分かってたんじゃないか?お前が大聖女になれるって」

あいつら?
シャーロットだけではないの?

「シャーロットの母親もグルだ」

「え?ですがオレット様はお母様の親友でしたわ?」

「親友のフリして本当はお前の父親狙いだよ。お前の父親はシャーロットの母親を振ってお前の母親と一緒になったからな。まだ未練タラタラだ」

「もしかしてですけれどお母様の毒も?」

「ああ。あの親子だ」

その瞬間に私の中で何が切れる音がしましたわ。
ブチッ。ブチッ。ブチィィィ!

「ぶち殺しても......いいえ、ぶっ殺してきてもいいですかぁぁぁ⁉︎」

「だからお前はもう死んでんの。無理。ぶち殺すとぶっ殺す、何処が違うんだよ。だけど今、お前一皮剥けたな。そうそう大聖女になるやつは代々凶暴なんだよね。そうじゃないと魔王と戦えない。なのに力が封じられていたせいで性格も地味で我慢強くて嫌なになるぐらいい子になってたからな~」

魔王?魔王って言いましたか?

「何その顔。聖女が居るんだから魔王だって居てもおかしくないだろう?」

そうですわね。

「私はそれと戦わないといけないのですか?平和的な解決策は......」

私が憧れた大聖女様の絵本には戦うなんて場面は無かったのですけれど。人々を癒し緑を増やし......。

「うーん。魔王次第かな」

あっ、私が大聖女様に想いを馳せていたのに遮るなんて!
しかも魔王次第だなんてとてつもなく面倒くさいのではないでしょうか?
あっ、でも私もう死んでますし関係ないですわね。

「あ~今、私関係ないよ?死んでるもんって顔したね?いや、いや、いや、お前には生き返ってもらうから」

えー。またあの嫌な人生をやるの?

「嫌ですわ。もう死んだのですし。さっ、天界へ連れてって下さい」

「でもさ~。お前が死んだ後、父親と兄貴は聖騎士の資格剥奪されちゃうよ?更に魔王が攻めてきて大聖女が居ないって分かって暴れまくりお前の父親と兄貴はバラバラにされるんだぜ?いいのか?それにシャーロットと組んでひでー世界を創り上げちゃうわけ。いいわけ?お前さえ生きてればそれがどうにかなる予定なんだけどな」

ぐぬぅ~。家族の事を出されたら嫌とは言えないではないですか!卑怯な!
でも私のせいでお2人の天職だった聖騎士の資格剥奪だなんて......。しかも今、バラバラって言いました⁉︎あの麗しいお父様とお兄様がバラバラって!!有り得ませんわ!!

「あら?でも大聖女が居ないって?シャーロットが大聖女になってましたけれど?」

「だって偽物だろう?そんなの直ぐにバレる。お前が本物なんだからな。で、本物さえとりあえず生きてれば魔王もあんなに暴れないと思うし」

うーん。

「それにさ、次の人生は好きに生きたらいいよ。シャーロットがどうやってお前の力を封じていたかとか王太子や周りの奴らにかけていた黒魔術も教えてやるから回避してハッピーな人生歩んでよ」

「王太子にかけてた黒魔術?」

王太子、私のトラウマ。
もう私にはヤバい男としてインプットされてしまっているわ。

「お前の事すげ~化け物に見える術かけられてたわけよ。周りの奴らもね。聖騎士と元聖女だったお前の家族には中々術が効かなくてかけるの諦めたみたいだけど」

そう言って天使は私に手鏡を渡してきました。その中を覗いてみると。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!化け物!化け物がいますわ!怖いぃぃぃぃ!」

怖すぎて思わず鏡を放り投げてしまいました!

「だろう?その化け物、お前だから。シャーロットが王太子と周りの奴らに見せてたお前の姿」

な、な、なんと!容赦無しですわね!こんな化け物にするなんて!
......確かにこんな化け物が嫁にくるなんて王太子が可哀想ですわ。あんなになるのも分かりますけれど。でも私は傷ついています。

「私の家族に術は効かなかった......。それで私の事を可愛いと溺愛してくれていたのですわね」

ほら、やっぱり王太子の目がおかしかったのであって私の家族が正しかったわ。
ふん。ざまーみろですわ!
まあ、術をかけられていたせいですけれどね。

「そーゆー事。ま、俺からも言っておくがお前は絶世の美女だ。500年に1人いるかいないかぐらいのな」

何故500年?その数字は何から弾き出したのかしら?でも天使にそう言われると嫌な気はしないですわ。ふふふ。

「そんなわけで生きていてくれればいいから生き返ってくれ」

「何故、あの世界を壊したくないのですか?そもそも私なんかより貴方があの世界を救えばよいのでは?」

「そこな!俺の上司が、あ、上司って神様なんだけど案外この世界気に入ってて平和で保ちたいんだとよ。創った本人にしたら子供?みたいなもんだって。そしてな~。神様は世界を創れるけどその後は手出しできないんだよ。神様が出来ないんだから天使にも出来ないわけ」

ふぇ~。創ったらもう丸投げなんですか?そんなものなの?

「それに俺達はその世界に降り立つ事も出来ないんだよ。今、お前と話せてるのはこの場所が生と死の狭間だからだ」

何だか面倒くさいですわね。

「大聖女様が戦う為に存在するのなら私はなりませんわよ?私は人々を癒したいから大聖女様になりたかったのです。なのでもう大聖女様を目指しませんわよ?田舎で治療院とか開いてまったり生きますけどそれでもいいのですか?」

「ああ。いいとも。お前さえあの世界に居ればいい。もちろん今までの記憶とこの記憶も持っていけるから安心しな」

「分かりました。私も家族は守りたいのでそこら辺は頑張りますわ。生き返る前にもっと詳しく私が知らなかった事を教えて下さいませ?」

交渉成立。

「ま、聖女の力が覚醒したお前を周りはほっとかないだろうけどな。その力を隠したとしてもな」

ん?何て言いました?天使のくせにボソボソと!天使ならもっと堂々とお話しなさいな!

先ほどからちょっと気になる事があるのですわ。訊いてしまいましょう。

「疑問がお一つあるのですけれど」

「何だ?」

「あの世界に降り立つ事も助ける事も出来ない貴方がどうして時を戻せるのでしょうか?」

「いい質問だ。時を戻すのは俺じゃない。お前だ。大聖女の力がありながら一度も使わず、あっ、そーいえばあの石の部屋を再現したな。それだけしか使ってないから力が有り余っているのだ。それを全部出してもらう」

なるほどですわ!
時間を戻すのは私なのですね!

「俺がしてやれるのは魔王に時が戻った事を気付かれないようにする事だけだ。気付かれると面倒くさいからな」

まぁ!そんな大事な事をやって頂けるのですね?初めて天使に感謝の心が芽生えましたわ。
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