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第一章:天醒

第10話:風呂

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 魔法を教えて貰ってから見た目には兎も角として、頭の中で可成りハイテンションがビリビリとキてる。

 魔法だ。

 何しろ魔法なのだ。

 前世ではアニメにラノベに漫画にゲームにと架空の世界にしか存在しないし、氣功術は【錬術】といった形で使えたが、余りにショボ過ぎて泣けるレベルだった訳だし。

 漫画みたいに『波っ!』とか放射出来れば楽しかったろうけど、ユートに出来たのは拳に氣を収束させる程度だったのだから。

 だが、転生したこの世界には魔法が存在した。

 それを使えるのだから、テンションが上がるのだって無理からぬ事。

 全属性に適性があるのだと知り……

「火精集い、焔の矢よ翔べ……『火矢ファイヤアロー』!」

 実際に外に出てものは試しと魔法を放ってみた。

 一条の火が矢の形に形成され、目標となる標的へと向かって飛ぶ。

 ボッ! 見事に命中して標的に火が上がる。

「おおっ!」

 魔導言語とはいえ単純な詠唱、それでもユートの語り掛けに応えた火の精霊が力を貸したのだろう。

「まさかの一発成功!? ひょっとしたらひょっとするかも……」

 アウローラ伯爵家は一部例外を除き、優秀な魔術師を輩出する家系であるが、ユートは正に別のベクトルで例外だった。

 優秀に過ぎたのである、同じく優秀な彼女をして驚いてしまう程、ユートの才は際立ったものである。

(星神アーシエルの所為? だけどスキルに魔法適性に関するモノは無かった。僕に与えられていたのは、【叡智瞳】と【錬成】だったからな)

 何かあれば『だいたいがアーシエルの所為』と言いたいが、スキル関連にそれが無いのもおかしな話。

(あ、魂の階梯が上がったからか!?)

 魂とは何ぞや?

 精神そのものとも云える魂の階梯が上がったなら、精神に依存される魔力にも影響があるかも知れない。

 ユートの魂の階梯が次の段階にシフト、進化したからこその全属性適性。

 辻褄合をわせるには面白い仮説だった。

 それに悪影響という訳ではないし、寧ろ魔法を扱ったり魔導具を造ったりするにはうってつけの適性。

 ユートは我知らず口角を吊り上げるのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 バシャン。

 ユートは湯船に浸かりながら魔法について考える。

「魔法……か。前世には無かった非現実的な力だな。まあ、氣功も似たり寄ったりなんだけど。魔導具造りとはまた違っていた」

 酔いしれるかの如く両手を見つめながら先程の感覚や感触を思い出し、あろう事か下半身に在る分身までがおっきしていた。

 初めてで余程の興奮を覚えたらしい。

「魔法、魔導具……か」

 頬を仄かに赤らめているのは決して風呂に逆上せたからではなく、初めて使った魔法に昂りが抑えられないという事。

 そこら辺はやはりユートもまだ子供なのだろうか、分身の方は父親譲りなのか立派だったりするが……

「とはいえ、流石にもっと撃ちたいとか人を狙いたいとかは思えない。日本人のメンタルか、僕自身の性質かは判らないけど」

 ガワも見た目に日本人、中身は正真正銘の日本人というユートは、少なくとも意味無く誰かを傷付けたい衝動は無いらしく少しだけ安堵していた。

 力を持てば使いたがる、それも人間の性だから。

「ハァ、気持ち良いねぇ」

 風呂……よくあるこの手の世界のテンプレよろしく存在が希少で、一般的な家には無いのが普通だ。

 ユートの家は裕福な為、建てる段階で風呂を設置していたらしい。

 沸かすのは大変だけど、
その苦労に見合うだけ心地好いものだった。

 尚、一般家庭は桶に水を張って身体を洗うとか。

 ガラリ……木製な引き戸が開かれる。

「は?」

 今はユートが入っているのは言ってある筈だから、何処かの某主人公みたいなラッキースケベなイベントなぞ起きない……ならば、入ってきたのはサリュートかと振り返れば……

「わぁ、小さいけど確かにお風呂があるんだ~」

 何故か従姉様だった。

 数えで十三歳は幼いが、やはり中世であるとはいえヨーロッパっぽい世界観、基本的に小さめな日本人とは違ってそれなりに胸も脹らんでおり、おっきしていた分身も先程とは別の意味でガチガチになっていた。

 まだまだ子供も同然ながらも、それなりに女の子な肢体にはユートの男の子も興奮せざるを得ない。

 まあ、シーナに比べれば小さな胸……視た感じでは七二センチか?

 シーナは一応とはいえ、七八センチはある。

「ちょっ、シータ姉!? まだ僕が入ってる!」

「勿論、知ってたよ」

「んなっ!?」

 ニコリと微笑むソレイユは大きめのバスタオルにて身を包むものの、隠れてはいない部分が透明感のある白い肌を魅せ付ける。

「フフ、お姉さんが背中を流して上げる」

「ちょっ!?」

 有無も言わさず是非も無い侭に、ゴシゴシと本当に背中を流しているソレイユは嬉しそうで、甘んじて受けているユートは恥ずかしいのか顔が赤い。

 ユートとしては女性には慣れていないからなのか、前屈みになってタオルで腰周りを隠しながら、おっきした分身がバレやしないか冷や冷やしつつ腰掛けに座っていた。

 従姉とはいっても会ったのは随分と前だし、そもそもにして覚醒前だったから想い出にも無く、知識として小さな……それでいて今と面影が重なるソレイユ。

 ユートな前世では年齢=彼女居ない歴だったから、余り女性慣れなどしていなかったし、母たるユリアナが相当な美人だから血統という事か、幼い容貌ながら目映い美少女なソレイユにドギマギしてしまう。

 今生のユートと前世での緒方優斗、決して前世しか影響を及ぼしていない訳ではなくて、精神的な年齢に関しては長らく肉体を使っていた今生の【ゆーと】の影響が強いらしく、胸の脹らみも腰のくびれも未だいまいちなソレイユを相手に充分、胸が高鳴るのだから可成り困ってしまう。

(七二、五三、七四)

 何の数字かは気にしてはいけない。

 実際、ユートの荒ぶった分身はこれ以上には無いという程、この数字を気にし過ぎて自己主張をしているのだから。

 ゴシゴシ、ゴシゴシ……

 とても一生懸命に擦ってくれるソレイユ。

「シータ姉、疲れない?」

「うん、大丈夫だよ」

 髪の毛も洗ってくれて、もう丸っきりメイドさんが至れり尽くせり、御奉仕をしてくれている気分。

 勿論、職業メイドというか日本的には家政婦にそんな仕事は無い。

「ねぇ、ユート」

「ん、何?」

「こっち向いて」

「いや、それはちょっと」

「恥ずかしがらないで」

「恥ずいのは仕方ないよ? その、シータ姉のも色々と見えちゃうし、僕のだって見せちゃうしさ!」

「じゃあ、私がそっちに回るから」

「何でさ!?」

 抗議はアッサリとスルーされ、ソレイユはユートの前に座ると首筋や肩や腕に胸板と擦り始める。

「シータ姉ってば!」

 ユート自身も抗議こそしているが、本気で抵抗などしている訳ではない。

 何のかんの言ってみても女の子の素肌を見れる機会なぞそう無いし、チラチラと視線がソレイユの綺麗な肢体へと向かう。

 ムッツリ? 男が女の子の裸に興味を持てなくなったら御仕舞いです。

 一一歳だからまだ我慢も出来るが、若し最低限でもこの世界の成人年齢に達していたら、ソレイユに襲い掛かっていたかも知れないと別の意味で安堵した。

 目の前にバスタオル越しだが仄かな脹らみがある。

 七二センチと小さいが、ユートの目を惹くに充分。

「それじゃ、ココも」

「──はへ?」

 パサリとタオルを剥ぎ取られ、ギンギンにおっきしている分身が明るみになってしまう。

 だが、ソレイユは悲鳴を上げる処か寧ろ大切なナニかを広い上げるかの如く、ソッと手に取って優しく擦り始めたのだ。

「ひうっ!? シータ姉……な、何を!」

「ちゃんと綺麗にしないとダメだよ」

 本当に子供だと思っているのか、その瞳は何処か愛しげで嬉しそうにユートの分身を見つめていた。

 その白い指がユートへと快楽を誘う。

「ちょ、駄目だって!」

 欲情した瞳ではないが、興味津々な様子でユートの分身を弄んだ。

 僅か二~三分の時間……

 ユートとソレイユの間に痛ましい沈黙の帳が降り、シンと耳鳴りがする程の静けさが支配する。

「ゴメンね、ユート。少し調子に乗りすぎた」

「ぼ、僕の方こそゴメン」

「大丈夫、嫌じゃなかったから」

「──へ?」

 呟かれた言葉に否定要素など無く、それ処か抱き着いてきて仄かな胸の脹らみがユートの顔に当たる。

「うぶっ!」

 シーナより小さいとはいえ確かな脹らみ、そいつがユートのリビドーを刺激してくれる。

 メンタルが幼くなってはいるが、ソコはソレというべきか分身は前世の年齢を踏襲しており、充分以上に機能を果たせるから問題となる訳で。

 精通は覚醒前はまだだったのだが、それをした時点で既に迎えているから出せるモノは普通に出せるし、性欲に関しては分身が大人と変わらない分、一一歳とは思えないレベルだ。

 正直、相手がまだ数えで一三歳か其処らとはいえ、これだけのスキンシップをされて襲い掛からない自分を誉めたいくらいだろう。

 本当に成人に達していなくて良かった。

 達していたら……後少しでも精神が大人側だったら今頃、ソレイユを襲っていた可能性もあるから。

 ユートは自分をそこまで賢者タイムにおけない。

 実際、ロリコンという訳でも――実年齢的にはお似合いレベルだが――あるまいし、ソレイユの裸に反応したそれは一回は出しているのに再びおっきした。

「シータ姉、どうしたんだよいったい?」

「私で反応してるよね?」

「うぐっ!」

「良いよ?」

「ナニガ!?」

「ユートくらいの年齢なら女の子に興味も出てくる頃だろうし、押し倒したいって思ってるよね?」

「うっ……」

 露骨に指摘をされては、最早ぐうの音も出ない。

「だから、我慢しなくても良いんだよ?」

「な、何で……さ」

 拙いしヤバい。

 本人が襲っても構わないなんて言うなら、この行為に免罪符が存在しているみたいなものだから。

「いったい、何を考えてるんだ? シータ姉……」

「……」

 肝心な所は語らない。

 かといって、ヤって良いと言われてヤれる度胸があるなら、そもそもユートは前世で童貞ではなかった。

 分身はヤりたいヤりたいと騒いでいるが、ユート的には『冷静になれ、そして落ち着け』と脳内でリフレインしている。

「シータ姉、僕は……さ……シータ姉が好きだよ」

「本当に?」

「だから単なる衝動に任せて貴女を抱きたくない」

「……ん、そうね」

 瞑目したソレイユは肢体を離すと、ペタリと座り込んで話し始めた。

「私のお父様が病死なされたのは知ってるよね?」

「それは……まぁ」

「お父様に子供は私だけ、弟でも居れば話は別だったんだけど、一人娘であるからには私が婿を取って家をその旦那様に継いで貰い、私自身は次期を生まなければならない立場になるわ」

「それはそうだろうけど」

 貴族である以上は当たり前な事でしかない。

「貴族の娘として生まれたからにはそれは義務だし、その事は受け容れてもいるんだけどね」

 更に云えばソレイユとて貴族の義務を蔑ろにしたいなどと、そんな事は露とも思っていないらしい。

「私のお父様が亡くなられた時点で、お祖父様は私の婚約者を捜さなければならなかったけど、ユリアナ様の事があったのと御年を召されていたのとで、臆病になられてしまったの」

「婚約者捜しが難航したって事?」

「そうよ。家柄が良い人、顔が良い人、性格が良い人──それ一つだけなら幾らでも見繕えた。でも全部を兼ね備えるとなると途端に難しくなる」

「そりゃ、どんな完璧超人を捜してんだ? 爺さん」

 とはいえ、顔が良くても性格が破綻していたりとか流石に御免だろう。

 人間は顔じゃないと云うにせよ、やはり整っているに越した事はないのも事実な訳だし、家柄だって高ければ悪くない話だ。

「全部兼ね備えるんなら、もういっそ王族とか?」

「アウローラ家は伯爵だから可能性はあるんだけど、今の王族って姫様しか居ないからね」

「そういやそうだ」

 シーナから聞いた話で、確かに現国王には娘ばかりが三人、王子は居ないのだという事だった。

 勿論、大公家や公爵家といった謂わば分家筋に男はいるだろうが……

 純粋な貴族家で恋愛とか余り無いし、あっても潰されたり周りのしがらみがあったりと難しいもの。

 だからこそ、こんな夢も希望も無い話になっているのだが、そんなソレイユの瞳は何処か冷めやらぬ程に熱いものが宿っていた。

「一番の問題は婚約者を決めかねていた処に、親族筋から立候補があった事よ」

「立候補……ね」

 どうやら話が見えてきた気がする。

「つまり、その立候補者が嫌だと?」

「うん、大嫌い」

 それはまるで虫嫌いな人がGを視る目だったとか。

「えっと、顔が悪い?」

「そうね、普通に整ってはいるかしら?」

「性格破綻者?」

「幼い娘が好きらしいわ」

「家柄は?」

「子爵家の三男坊」

 顔が整ったロリコンで、子爵家の三男というのなら家は継げないから、それならソレイユはピッタリだ。

 まだ成人するまでに二年はあるし、家を継ぐ婿養子を必要としているのだから三男坊には悪くない話。

「因みにその三男坊って、どれくらい嫌いな訳?」

「ゴブリンにヤられた方がまだマシなレベルで」

「うわぁ……」

 これは相当に嫌われているみたいだ。

 つい先日、エルフの少女が二人ばかりゴブリンに犯されて、精神崩壊をしていたのを見たユートからすれば不謹慎とも取れる科白、だけどそれだけ嫌っているという事なのだろうが……

「婚約者なんて──『捜しました』『見付かりました』って訳にもいかないし、そうなるとアイツにもチャンスが巡ってくるかも」

 ブルリと肢体を震わせる様は、本当に毛嫌いをしているのだと判る。

「まあ、お祖父様も嫌っているからお祖父様の目が届く内は大丈夫なんだけど、それが何年続くか……」

 目の黒い内は好きにさせないが、祖父とてそれなりの年齢らしいのだから確かに心配になる。

「それでユートなのよ」

「? 何が?」

 首を傾げても仕方ない、唐突に過ぎるのだから。

「子を成せる中でも一番の近似で、何より家の血筋もバッチリと出てるユートなら最低でも胤を貰う相手に指定出来るもの」

「た、胤って……それに、指定って何?」

「貴族くらいしか使わない制度だけどね、その人物の子供が欲しい場合に交渉をして胤を貰う事が出来る。貴族家の場合は柵とかあるからね、色々と面倒臭いというか……」

 然しながらこの世界での技術で体外受精なんぞ出来ないから、胤を貰う為には抱かれなければならない。

 要するに色々と諸問題を抱えた制度という事。

 だけどこの制度が今回、ソレイユを救うかも知れないとあっては、ユートとしてもツッコミは出来ない。

「判った。取り敢えずだけどシータ姉の御相手が本当に見付からないってなった場合、最後の保険って事ならその……胤を提供するのも吝かじゃ、ないよ」

「本当に!?」

「う、うん」

 正直、ソレイユは現時点でも相当な美少女だから、この侭のペースで成長すれば美味しい相手だ。

 寧ろ、御相手が居なければ自分のモノに出来るのは嬉しいくらいである。

「クス、今すぐ抱きたいって言ってるわよ?」

 ソレイユが指差す先に、またもやギンギンにおっきする分身、ユートは真っ赤になりながらソッとタオルで股間を隠した。

「若いから仕方がないわ。その手の処理は貴族の場合だと、奴隷を買ってヤらせるんだけどね」

 ……でも、ソレイユとてやはり貴族らしい。

 あっさり奴隷とか言える辺りがまた。


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