22 / 49
第三章
2.チャージした
しおりを挟む
翌日、アンは元気だった。熱はまだあるものの食欲もあり大丈夫そうだ。
熱さましを使わなくても大丈夫だったようだ。
キルヒとマリヌ―の夫婦にはアンの薬代はここの宿泊費としてもらい、払う必要がない旨を伝えたが、固辞された。
なので、変わりの案として、今、私が持っている薬を村の人にいるかどうか聞いてみて欲しいと言ってみた。
街の金物屋のおばさんに、頼まれた事も伝えた。
持って居る薬の種類や数、そして価格を書いてキルヒに渡す。すると、とても驚かれた。
「ココ、本当にこんな価格で売っても構わないのか?」
「もちろんだよ、なるべく安い価格で分けてあげたいしね」
前の街でもリサーチしているので、その価格は市価の半分以下だ。常備薬といわれる薬ばかりなので、一つ一つの値はそれ程高くない。でも、何かの時には持っていれば安心だ。
市場で薬が異常に高いのは貴族達の価格操作によるものではないだろうか。この国の貴族層の連中はそれ以下の人間の数が増えすぎないよう、減り過ぎないように操作している様に思えた。
貴族達に刃向かう事が出来ない様なシステムがつくられている。そう感じた。
キルヒは直ぐに村を周って薬を売ってくれた。全て売り切れて足らないというので、もう数泊して薬草を採取した。在庫分と追加の分だ。かなりの量を採取出来た。
この村の周りには多くの種類の珍しい薬草が生えていた。少し山の深い所まで入っていったが、薬草を採取する間、ハンターとキルヒとシオウが魔物や獣が襲って来ない様に守ってくれた。
お陰で、美味しいミートも沢山狩れた。肉フォー!フォー!
ハンターは山に入ると聞くと、最初からついでに狩を楽しむつもりだったらしく、キルヒと共に山道用で使いやすい肉運び用の荷車等を近くまで持って来ていたので楽だった。魔力を通すと、とても軽くなり、多くの荷物が運べる道具だ。
キルヒは魔力を通して使う道具などを作るスキルを持っていたのだ。もしかすると、だいぶ高位の貴族のオトシダネだったのかもしれない。
それに、二人共、かなりの手練れだった。獣人というのは人の姿のままでも、身体能力が忍者よりもすごいんだなと思った。(←表現力皆無)
シオウは山の中で、水を得た魚の様に飛び回っていた。楽しそうで嬉しい。
その後は、村に帰ってから村人総出で肉を捌いて分けるというので、私は部屋に戻り薬を作ることにした。
これを数日繰り返した。もう肉祭りだ。
マリヌ―は料理上手で、特に時間をかけて作った、とろけるような肉の煮込みは、いくらでも食べられる美味しさだった。色々な根菜も柔らかく煮こまれていて、大きな木の匙で口に頬張ると、解けるように崩れる。
煮込んだトロトロの汁に、硬くなったパンをスライスした物を浸して食べると、旨味を吸い込んで柔らかくなったパンが魔法の様に旨くなる。酸っぱいような酵母の香りと、その弾力がたまらない。
「毎日食べたい美味しさだねえ。ここに住みたくなって来た」
「住んでもいいよ、うちの子になる?」
マリヌーの言葉に頷きたくなる。
「ああ、いいなあ、それ。すること全部済んだら、戻って来ようかなー」
「じゃあ、ケリーのお兄ちゃんだね、わーい」
「アンのお兄ちゃんだよ」
食事時はいつも賑やかで、楽しかった。でもね、行かなきゃならないんだ。楽しい時間は直ぐに過ぎて行く。
ここでは多くの珍しい薬草を手に入れる事ができた。よし次に進まなきゃ。
もっと施設の整った場所なら、様々な薬がつくれるだろうけど、それは仕方ない。
そう言えば、アンと仲良しの風邪にかかった子供は、熱が下がらず危なかったので、同じように薬を処方した。
薬代としては、処理した肉を分けてもらうという事で落ち着いた。症状は村を発つ頃には回復していた。
市場の半額以下と言っても、多くの薬を売ったので懐がまた温かくなった。今後も金を貯めるという事に是非専念したいものだ、フッフッフッ。
「お前、そんなに金儲けてどうすんの?」
ハンターが不思議そうに聞いてくる。
「うーん、先が見えないからね、お金大事。たまには宿にも泊まりたいし、美味しい物も食べたいでしょ。それに・・・」
ちょっと夢みたいな事も心に描いてみたりする。
「なんだあ?お前今、すごく幸せそうな顔したなあ」
「へへ、秘密だよ」
「しっかし、どえらい量の肉をリュックに詰め込んでたな。どれだけ入れるのかと思った。マジ、底なしだな、そのリュック」
「ハンターとキルヒが、連日肉祭りするほど狩をしてくれたから、いっぱい貰えたよ。これならかなり食生活に潤いが出たね」
「ああ、村も暫く魔獣や獣の被害を気にしなくて良くなった上に、肉の備蓄が出来て良かったとキルヒが言っていた。自然災害なんかが起ったら、食べ物にも困るからな」
「うん。干し肉たくさん作るって言ってたね」
「ああ。そうだな」
天気も良くて気分がいい。
「キルヒさん、テント改装してくれたから安心だね」
村に泊まっている間に、キルヒさんが二人用のテントに手を加えてくれた。魔力を通せばテントが広がり固定できる様にしてくれたのだ。強度を上げて、大きさも倍に広がる様にしてくれた。
ハンターも一緒に休める様になった。これなら山の中でも少々の雨風でも大丈夫だと言われた。
「まあ、先は長いし、ぼちぼち行くかあ」
「うん、次はどんな場所かな~」
お気楽に行こうぜ、どうせ行くなら・・・。
熱さましを使わなくても大丈夫だったようだ。
キルヒとマリヌ―の夫婦にはアンの薬代はここの宿泊費としてもらい、払う必要がない旨を伝えたが、固辞された。
なので、変わりの案として、今、私が持っている薬を村の人にいるかどうか聞いてみて欲しいと言ってみた。
街の金物屋のおばさんに、頼まれた事も伝えた。
持って居る薬の種類や数、そして価格を書いてキルヒに渡す。すると、とても驚かれた。
「ココ、本当にこんな価格で売っても構わないのか?」
「もちろんだよ、なるべく安い価格で分けてあげたいしね」
前の街でもリサーチしているので、その価格は市価の半分以下だ。常備薬といわれる薬ばかりなので、一つ一つの値はそれ程高くない。でも、何かの時には持っていれば安心だ。
市場で薬が異常に高いのは貴族達の価格操作によるものではないだろうか。この国の貴族層の連中はそれ以下の人間の数が増えすぎないよう、減り過ぎないように操作している様に思えた。
貴族達に刃向かう事が出来ない様なシステムがつくられている。そう感じた。
キルヒは直ぐに村を周って薬を売ってくれた。全て売り切れて足らないというので、もう数泊して薬草を採取した。在庫分と追加の分だ。かなりの量を採取出来た。
この村の周りには多くの種類の珍しい薬草が生えていた。少し山の深い所まで入っていったが、薬草を採取する間、ハンターとキルヒとシオウが魔物や獣が襲って来ない様に守ってくれた。
お陰で、美味しいミートも沢山狩れた。肉フォー!フォー!
ハンターは山に入ると聞くと、最初からついでに狩を楽しむつもりだったらしく、キルヒと共に山道用で使いやすい肉運び用の荷車等を近くまで持って来ていたので楽だった。魔力を通すと、とても軽くなり、多くの荷物が運べる道具だ。
キルヒは魔力を通して使う道具などを作るスキルを持っていたのだ。もしかすると、だいぶ高位の貴族のオトシダネだったのかもしれない。
それに、二人共、かなりの手練れだった。獣人というのは人の姿のままでも、身体能力が忍者よりもすごいんだなと思った。(←表現力皆無)
シオウは山の中で、水を得た魚の様に飛び回っていた。楽しそうで嬉しい。
その後は、村に帰ってから村人総出で肉を捌いて分けるというので、私は部屋に戻り薬を作ることにした。
これを数日繰り返した。もう肉祭りだ。
マリヌ―は料理上手で、特に時間をかけて作った、とろけるような肉の煮込みは、いくらでも食べられる美味しさだった。色々な根菜も柔らかく煮こまれていて、大きな木の匙で口に頬張ると、解けるように崩れる。
煮込んだトロトロの汁に、硬くなったパンをスライスした物を浸して食べると、旨味を吸い込んで柔らかくなったパンが魔法の様に旨くなる。酸っぱいような酵母の香りと、その弾力がたまらない。
「毎日食べたい美味しさだねえ。ここに住みたくなって来た」
「住んでもいいよ、うちの子になる?」
マリヌーの言葉に頷きたくなる。
「ああ、いいなあ、それ。すること全部済んだら、戻って来ようかなー」
「じゃあ、ケリーのお兄ちゃんだね、わーい」
「アンのお兄ちゃんだよ」
食事時はいつも賑やかで、楽しかった。でもね、行かなきゃならないんだ。楽しい時間は直ぐに過ぎて行く。
ここでは多くの珍しい薬草を手に入れる事ができた。よし次に進まなきゃ。
もっと施設の整った場所なら、様々な薬がつくれるだろうけど、それは仕方ない。
そう言えば、アンと仲良しの風邪にかかった子供は、熱が下がらず危なかったので、同じように薬を処方した。
薬代としては、処理した肉を分けてもらうという事で落ち着いた。症状は村を発つ頃には回復していた。
市場の半額以下と言っても、多くの薬を売ったので懐がまた温かくなった。今後も金を貯めるという事に是非専念したいものだ、フッフッフッ。
「お前、そんなに金儲けてどうすんの?」
ハンターが不思議そうに聞いてくる。
「うーん、先が見えないからね、お金大事。たまには宿にも泊まりたいし、美味しい物も食べたいでしょ。それに・・・」
ちょっと夢みたいな事も心に描いてみたりする。
「なんだあ?お前今、すごく幸せそうな顔したなあ」
「へへ、秘密だよ」
「しっかし、どえらい量の肉をリュックに詰め込んでたな。どれだけ入れるのかと思った。マジ、底なしだな、そのリュック」
「ハンターとキルヒが、連日肉祭りするほど狩をしてくれたから、いっぱい貰えたよ。これならかなり食生活に潤いが出たね」
「ああ、村も暫く魔獣や獣の被害を気にしなくて良くなった上に、肉の備蓄が出来て良かったとキルヒが言っていた。自然災害なんかが起ったら、食べ物にも困るからな」
「うん。干し肉たくさん作るって言ってたね」
「ああ。そうだな」
天気も良くて気分がいい。
「キルヒさん、テント改装してくれたから安心だね」
村に泊まっている間に、キルヒさんが二人用のテントに手を加えてくれた。魔力を通せばテントが広がり固定できる様にしてくれたのだ。強度を上げて、大きさも倍に広がる様にしてくれた。
ハンターも一緒に休める様になった。これなら山の中でも少々の雨風でも大丈夫だと言われた。
「まあ、先は長いし、ぼちぼち行くかあ」
「うん、次はどんな場所かな~」
お気楽に行こうぜ、どうせ行くなら・・・。
0
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
恋愛
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~
沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。
ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。
魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。
そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。
果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。
転生要素は薄いかもしれません。
最後まで執筆済み。完結は保障します。
前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。
長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。
カクヨム様にも投稿しています。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
転生幼女の愛され公爵令嬢
meimei
恋愛
地球日本国2005年生まれの女子高生だったはずの咲良(サクラ)は目が覚めたら3歳幼女だった。どうやら昨日転んで頭をぶつけて一気に
前世を思い出したらしい…。
愛されチートと加護、神獣
逆ハーレムと願望をすべて詰め込んだ作品に…
(*ノω・*)テヘ
なにぶん初めての素人作品なのでゆるーく読んで頂けたらありがたいです!
幼女からスタートなので逆ハーレムは先がながいです…
一応R15指定にしました(;・∀・)
注意: これは作者の妄想により書かれた
すべてフィクションのお話です!
物や人、動物、植物、全てが妄想による産物なので宜しくお願いしますm(_ _)m
また誤字脱字もゆるく流して頂けるとありがたいですm(_ _)m
エール&いいね♡ありがとうございます!!
とても嬉しく励みになります!!
投票ありがとうございました!!(*^^*)
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる