上 下
7 / 49
第一章

7.エルフ村の結界

しおりを挟む
 この世界、地図は貴重品だ。とても高価なので買うのはちょっと考える。

 ま、お金に余裕があれば気にする事もないのかもしれないけど、先の見えない旅をしている私は慎重になる。

 そういう時には、地方のギルドに必ず置いてあるという、簡易地図を貰えば役に立つ。

 だってタダだ。タダ!。ありがとうタダ。

 まあ、観光地の簡易マップみたいな感じかな。



 人が一日に歩ける距離ってどのくらいのものかなと思うんだけど、日本では江戸時代、だいたい夜明けから日が暮れるまで歩いて、10時間として、男の人で40キロ位が限度だったみたいだ。道路事情や履物も今と違って良くないしね。

 それでも40キロ歩くってすごくね?江戸から京都までは歩いて15日位だったらしい。

 まあ、そういうの考えながら歩いて、道々果物を採ったり持っていた干し肉かじったりしながら、多分100キロ位かな二日後には、エルフ村にいた。何気にチート能力と私の健脚のおかげさまである。

 幸い、人攫いや、強盗にも会わなかった。と言うのも、左の道はエルフ村のある鄙びた街道で、大きな街に辿り着くにはかなりの大回りになるので、人通りが無いのだ。だから強盗も用がないのだと気付いた。

 エルフ村の中に入る事が出来たのは、偶然だった。

 今から10年前には、私はこの国の瘴気を緑の魔力で浄化して周っていたわけだが。

 しらみつぶしに全てを周る事は無理なので、国に散らばる神殿分室を周り、主に瘴気で枯れた場所を、緑の魔力で浄化していた。

 だけど、人族では無いエルフ族の住む地は取り残されたままで、浄化されなかった様だ。
 
 おまけに御丁寧に、結界まで張られているので、本当に取り残された地になって。村の中も周囲も枯れ地になっていた。

 「わー何で、この辺ぜんぶ、茶色なんだろ?」

 エルフ村の近くに差しかかると、そんな感じで自然も荒れ果ててている。

 たまたま食料を探して歩いていたエルフの幼い兄妹と出会った。

 出会ったっつうか、妹が大泣きしているのを兄ちゃんが持て余して困り果てている所に遭遇した。

「どーしたの?」

 エルフの兄妹は一瞬驚いたけど、私が子供に見えたらしく、警戒しなかった。

 妹はそのまま泣き続けたし、兄ちゃんの方もどうしようかと迷っていた。

「・・・お腹が空いて、果物とか探したけど、全部獣に食べられてて、種だけが転がってるから、妹が泣くんだ・・・」

 なるほど。地面には種が散らばっている。

「種があれば、実にしてあげられるけど、エルフの結界の中じゃないと出来ないんだよね―」

「えっ?本当」

 グズグズと泣いていた妹が、突然泣くのをやめた。

「本当だよ。嘘だったら直ぐに追い出せばいいし」

「う、うん」

 兄の方は10才よりも下そうだし、妹は5才位かな。痩せている。

 そう、結界!結界の中なら、緑の魔力を使ってもバレない。しかもエルフの結界なら強力だろう。

 それに、人族も仲が良くないからと言って、自分達の住む場所だけ浄化させるなんて、嫌らしいにも程がある。

 同じ国に住んでる者同士じゃないか。なんかそういうの腹立つー。

 「心配ならさ、大人のエルフを連れて来たらいいよ」

 ニッコリ。天使の笑み。ニッコリ。

 二人の兄妹は、私の新しい技、『天使の笑み』(仮)に惑わされた。チャララーン。


「お兄ちゃん優しそう。すごくかわいいお兄ちゃんだ―」

 と、妹の方が言った。

 お兄ちゃんかっ!やはりお兄ちゃんに見えるらしい。

「じゃあ、ついて来てくれる?コッソリ入って試してくれる?」

「うん、いいよ」

 にこにこ、にっこり。

 人スレしていない、エルフの兄妹は騙されやすそうだ。心配。←お前が言うな!

 そうして、結界内に入る時に少し抵抗を感じたものの、招かれて入る事が出来た。

 しかし、入ったエルフの結界内は、思ったよりもっと悲惨な状況だった。

 畑らしき耕した土にも、ほとんど野菜は生えていないし、茶色だ。みな茶色・・・。

「茶色だー」

 スゲーなおい、こりゃいかんだろ。さあ、『緑の巫女姫』のターンだ。

 
 

 

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

継母ができました。弟もできました。弟は父の子ではなくクズ国王の子らしいですが気にしないでください( ´_ゝ`)

てん
恋愛
タイトル詐欺になってしまっています。 転生・悪役令嬢・ざまぁ・婚約破棄すべてなしです。 起承転結すらありません。 普通ならシリアスになってしまうところですが、本作主人公エレン・テオドアールにかかればシリアスさんは長居できません。 ☆顔文字が苦手な方には読みにくいと思います。 ☆スマホで書いていて、作者が長文が読めないので変な改行があります。すみません。 ☆若干無理やりの描写があります。 ☆誤字脱字誤用などお見苦しい点もあると思いますがすみません。 ☆投稿再開しましたが隔日亀更新です。生暖かい目で見守ってください。

悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~

平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。 しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。 このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。 教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。

契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
恋愛
 前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。  悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。  逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位 2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位 2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位 2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位 2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位 2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位 2024/08/14……連載開始

【完結】わたしはお飾りの妻らしい。  〜16歳で継母になりました〜

たろ
恋愛
結婚して半年。 わたしはこの家には必要がない。 政略結婚。 愛は何処にもない。 要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。 お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。 とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。 そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。 旦那様には愛する人がいる。 わたしはお飾りの妻。 せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

処理中です...