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19.隣のクラスの男子

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 その日、デリアとリリアナといつものように食堂でお昼を摂っていると、男子二人がトレイに食事を載せて私達の対面に座った。

 魔術学院の食堂は広い。外にもベンチと机がカフェの様に置かれているのでそこで食べる事が出来る。

 混んでもないのに何故近くに座るのかと思ったけど、知らんふりして三人でおしゃべりしていると、声をかけてきた。

「シタン・ヴィエルジュ嬢って君だよね」

 思わず三人でそっちを見て黙る。

「――――ちょっと、貴方、普通は人に名前を尋ねるまえに、自分が名乗るモノではないの?」

 デリアがカチンときたらしく、私より先にそう言った。はやっ。

 男兄弟といつも競り合っていたそうで、男子と話をするのも平気みたいだ。

「ああ、これは失礼。僕はジョ-ン・ウィルソン。となりのクラスにいるんだ」

「私は、ソルジオ・カイン。やはり隣のクラスの者だ」

「・・・私がシタン・ヴィエルジュです。何か御用ですか?」

 名前を聞いて、いつもテストの上位順位の張り出しで、私の名前の前後にある人達だと気付いた。

「いや、いつも成績を争ってる女の子はどんな人なのかと思ってね、ご機嫌伺いだよ」

「はあ?」

 よく分からない、そういうの困る。なんなのだろう。

「困らせるつもりは無かったんだけど、良かったらこれからは学友として仲良くしてもらえないかな」

「あの・・・私、自分の事で手いっぱいで、学校行事や授業以外では何もやりとりをするとか出来ません。もし授業でお世話になる事があればその時、よろしくお願いします」

「ああ、うんそうだね。よろしく」

「君達もよろしくね」

「まあ、あなたたちは上位の成績の子を偵察に来たわけね。シタンは超真面目なんだから、ちょっかい出さないで下さいね」

 付け足したように言ったジョーンにリリアナが少しにらんでそう言った。

「君達は、はっきりした性格してるね」

「そりゃあ、ここには、高給取りになる為に来てるんですから。本気でやってます」

 国に就職すれば安定した生活が出来る。

「君もそうなの?」

 私を見て言うので答える。

「もちろん。お遊びではないです」

「そうなのか。じゃ、俺達も負けないように頑張らないとな。国への推薦枠は上位のみだからね」

 ライバルの偵察てとこなんだろうか?にしては、楽しそうだけど。


 二年生になると、クラス対抗でイベントが色々あるらしい。

 クラスは5年間変わらないそうだ。

 デリアとリリアナもいつも10位以内には入っている。

 がんばって勉強は続けないと向上心が強い人達が多い。


「二年になると、自分の杖を用意する必要があるそうだよ。知ってる?」

「えっ、そうなのか?」

 ソルジオという子がジョーンに聞き返す。

「うん。家は兄上もここを卒業してるから、ちょっと知ってる」

「杖っていくら位するの?」

 リリアナは奨学金の事があるので気になった様子だ。

「それは、安いのから、高いのまで色々だけど、価格が良し悪しの決め手じゃないらしい。自分に合う合わないがあるそうだよ。それに、杖は育てる物だと聞いた」

「へえー」

 デリアも初めて聞いた話の様で、少し、男子に対して警戒心を解いている。

 話をした感じだと、悪い子ではなさそうだ。感じは悪くない。成績が良いのは真面目に勉強をしているからだろうし、さっきお兄さんも魔術学院を卒業していると言っていた事を考えると、けっこうな名家出身なのかもしれない。

「杖は、育てる者の力で、どんどん形を変えるそうだよ。育て方によっては、安く売っているどこにでもあるような杖でさえ、世界に一つの自分にとってはかけがえのない杖に育つそうだ。ようは、自分の魔力と育て方次第って事らしい」

 それは楽しみだなあと思う。私の杖はどんな杖に育つのだろうか?

「シタンにこにこして何考えてるの?自分の世界に入ってるね」

「えっ」

 デリアが困った子を見る目で見ている。

「そうなのよね、シタンて時々こうなってるから、気を付けてあげないとね」

 今度はリリアナにそう言われる。

「あ、すいません」

 ペコリと頭を下げると、皆に笑われた。

「なんだ、フワフワしてて心配になる子だね」

 ジョーンにまで言われた。

 





 


 
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