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1話 「何の?」
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「ミール、遅いなー」
僕は居酒屋の安い酒を飲みながら一人の男を待っていた。
その男の名はミール。僕の冒険者友達だ。
今夜話があるから、何時もの所に来てほしい…っと言われて待っている。
何か焦った様子だし、酒飲みたかったし、僕は二つ返事で了承した。
「だけど…遅いなー」
僕は溜め息をつきながら時計を見る。時刻は十二時。丁度『今夜』が終わっていた。
「んー…帰るかー」
普通なら何かあったのでは?っと思うが、ミールはAランク冒険者。最強であるSランク冒険者や、よほど卑怯な手を使われなければ勝てる実力を保持している。
「リズさん。お父さんから至急帰宅するよう、連絡が来ましたよ。」
柔和な笑みを浮かべた青年が空になった酒を片付けながら、僕にそう告げた。
僕は最後の一杯を飲み、居酒屋を後にする。
「『至急』なんて…何があったんだ?」
王太子であるバラスト兄さんが対処出来ない問題が起きた…のか?
僕は高鳴る鼓動を感じながら、王城へと向かった。
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
「お待たせして申し訳ございません。リズバルト、只今戻りました。『至急』とは、いったい何があったのですか?」
謁見室の扉を開くと、そこには第一王妃様、並びに国王が居た。国王の斜め前には宰相殿も居る。
国王は暫し僕を見ると、厳しい声音で言う。
「何だ、その粗末な服装。王子の自覚を持てと、日頃から言っているであろう?」
(あの重たい服で魔物と戦えと?)
僕はそう思いながらも「申し訳ございません」と謝る。
「はぁ…お前に任せるのは、とても不安だが仕方ない。
…リスカートが失踪した。バラスト、並びに全騎士団が捜索中だ。」
(リスカート?……あぁ、あいつか!)
久しく忘れていたもう一人の兄弟を思い出し、そして首を傾げる。
リスカートは王子の地位を笠に、好き勝手していた奴だ。そいつが、王子の地位を捨てる様な事をするか?これは誘拐…か?
「リズバルト、貴様が代わりになれ」
「は?」
何の?
脈略の無い国王の言葉に、僕は首を傾げる。
・第二王子の業務→元からサボっているらしい
・第二王子の地位→継承権二位の地位を与える訳無い
第二王子の代わり→ 第二王子の(身)代わり?
「それは、第二王子の替え玉になれと?」
国王は何故か舌打ちすると、第一王妃様と共に後ろの扉へ消えた。
「流石でございます、リズバルト王子。」
宰相殿が白髭を撫でながら微笑む。
「リスカート王子の代わり、お頼みしますぞ!
なぁに、一時的ですので、ご安心を!
明日の十時、ハルーラ庭園ですから、お忘れなきよう!」
宰相殿は物凄く上機嫌に、それこそスキップをしそうな勢いで出ていった。
「は?結局何の替え玉な訳?」
一人残された僕は静寂の中、呟いた。
僕は居酒屋の安い酒を飲みながら一人の男を待っていた。
その男の名はミール。僕の冒険者友達だ。
今夜話があるから、何時もの所に来てほしい…っと言われて待っている。
何か焦った様子だし、酒飲みたかったし、僕は二つ返事で了承した。
「だけど…遅いなー」
僕は溜め息をつきながら時計を見る。時刻は十二時。丁度『今夜』が終わっていた。
「んー…帰るかー」
普通なら何かあったのでは?っと思うが、ミールはAランク冒険者。最強であるSランク冒険者や、よほど卑怯な手を使われなければ勝てる実力を保持している。
「リズさん。お父さんから至急帰宅するよう、連絡が来ましたよ。」
柔和な笑みを浮かべた青年が空になった酒を片付けながら、僕にそう告げた。
僕は最後の一杯を飲み、居酒屋を後にする。
「『至急』なんて…何があったんだ?」
王太子であるバラスト兄さんが対処出来ない問題が起きた…のか?
僕は高鳴る鼓動を感じながら、王城へと向かった。
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「お待たせして申し訳ございません。リズバルト、只今戻りました。『至急』とは、いったい何があったのですか?」
謁見室の扉を開くと、そこには第一王妃様、並びに国王が居た。国王の斜め前には宰相殿も居る。
国王は暫し僕を見ると、厳しい声音で言う。
「何だ、その粗末な服装。王子の自覚を持てと、日頃から言っているであろう?」
(あの重たい服で魔物と戦えと?)
僕はそう思いながらも「申し訳ございません」と謝る。
「はぁ…お前に任せるのは、とても不安だが仕方ない。
…リスカートが失踪した。バラスト、並びに全騎士団が捜索中だ。」
(リスカート?……あぁ、あいつか!)
久しく忘れていたもう一人の兄弟を思い出し、そして首を傾げる。
リスカートは王子の地位を笠に、好き勝手していた奴だ。そいつが、王子の地位を捨てる様な事をするか?これは誘拐…か?
「リズバルト、貴様が代わりになれ」
「は?」
何の?
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・第二王子の業務→元からサボっているらしい
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第二王子の代わり→ 第二王子の(身)代わり?
「それは、第二王子の替え玉になれと?」
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「リスカート王子の代わり、お頼みしますぞ!
なぁに、一時的ですので、ご安心を!
明日の十時、ハルーラ庭園ですから、お忘れなきよう!」
宰相殿は物凄く上機嫌に、それこそスキップをしそうな勢いで出ていった。
「は?結局何の替え玉な訳?」
一人残された僕は静寂の中、呟いた。
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