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留木原 夜という人間

【留木原 夜のシアワセな日常】

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「副会長何かあった?」

鴨杉が突然そんな事を言う。
いつも通りにしていた。動揺や恐怖がバレない様に、していた。

「何で?」

「見てたら何となく?」

僕は苦笑した。
僕に隠し事は向いていないのだろう。

「何でもないですよ」

でも、言えない。
迷惑をかけたくない。

「……そう。言いたくなったら言ってね?…頼ってね?」 

「はい。ありがとうございます」

鴨杉は不服そうな顔をしながらも、ひいてくれた。


***

「?何ですかこれ??」

「……えっと…そのぉ…あぁ…えー…」

風紀委員会の持ち物検査の人手が足りないから僕が手伝っていた。

そんな日だった。

「ぜっっっったいに他の人に言わないでくださいね!」

「?分かりました」

「くっ!あどけない仕草!小悪魔!」

「?」

その生徒が言うにはBL同人誌?という本らしい。

「びーえる?」

「男と男が恋愛している本です」

「恋愛漫画ですか?」

「男同士の…ですね…はい」

僕はそんな物が存在する事に驚愕し、そして喜んだ。

「…えっと、没収対象ですよね…?」

「あ、そうですね」

「あぁぁぁ!ーーくん×……くんの続編がぁ」

「???」

その生徒は膝をつき叫んだ。

「反省文を書けば返しますから」

僕は距離を置きながらも答えた。

(BL…他にもあるかな?)


***

僕は学業と生徒会の仕事を終わらせ、寮の自室でパソコンを開く。

「えっと、B、L、と」

検索すると様々な小説、漫画、ゲームがヒットする。

「ゲームもあるんだ…」

そのゲームは選択制で今人気のゲームらしかった。

「ちょっとだけなら…」

僕はダウンロードのボタンを押す。
少しだけ、少しだけ自由に、自分に素直に生きたかった。

《【光の使い手は暗闇を消す】へようこそ。プレーヤー名を決めてください》

「プレーヤー名?名前で良いのかな?」

《ようこそ、ヨル様。
貴方は失われた魔法系統【光】を持って産まれました。
市民だった両親は貴方の身を案じ、教会へ預けます》

《教会は貴方を大切に育て、貴方は順調に育ちました。
そしてある日、貴方は神殿へ訪れた第一皇子であるロイス皇子に見初められます。
貴方はロイス皇子の提案で貴族が集う学園、ローズ学園へ入学します。》

《貴方はローズ学園で様々な傷を負った子息達に出会い、そして仲を深め、彼らを救い、心身共に成長していきます》

《そして貴方はマロス大帝国…いいえ、この世界の暗闇を知り、仲間と共に戦う事を決意します。》

「?そうなんだ?」

システム通りに進めるとシナリオが始まるのが面白い。

『君を一人にできるわけないだろう…』

「うわっ!」

イヤホンで聞いていたので攻略対象者?の声に驚く。

「びっくりしたぁ」

僕のお気に入りはクオトニット君だった。
笑った顔が…その、好きだったのだ。
高身長とかかっこ良いし、筋肉質だし。

自身の好みのタイプに赤面する。
完全に光一さんに影響されている。

「…続きやろう」

僕はそのゲームを気に入り、クオトニットルートを進めた。


***

「おはよう」

下駄箱で零と会ったので挨拶する。

結局あれから朝までゲームをしていた。
内容がとても面白く、クオトニットルート以外もやっていた為時間がかかったのだ。

寝不足で息が苦しい。頭がボーッとする。

「おはよう。…?夜、体調悪いの?」

「えっと…まぁ…ちょっとね」

徹夜でゲームをしていた為なんて恥ずかしくて言えない。
零はしばらく僕を見て『早めに寝なね?』と言った。

(流石だなぁ)

そんな事を思いながら、零と一緒に教室へ向かう。

「瑠木原様結婚とは本当ですか!?」

「教えて下さい!」

「マジですか!?」

「俺達の瑠木原様がぁー!!!」

教室を開くと何故か阿鼻叫喚となっていた。

「結…婚…?夜、嘘…だよね?」

零が鞄を落とし、僕の両肩を掴む。

「本当だよ」

「「「うわぁぁぁぁー!瑠木原様ぁぁー!!!」」」

クラスメイトや廊下に居た生徒達が泣きながら倒れ落ちる姿に驚く。
ここまで慕われていたんだ…照れるな…。

「嘘だよね夜」

「いたっ」

両肩に強い力を込められ肩がズキッと痛む。

「れ、れい?」

僕は恐怖のあまり震えた声を出す。
こんなに動揺した零を見た事ない。

「…………少し体調が悪いから早退するね」

「え?」

零はそのまま僕を置いて早退した。

「鞄、後で届けよう」

体調が悪いからあんなに動揺していたのか。


***

「え、誰もいないじゃん」

生徒会室には誰も居なかった。
時間を再確認し、あっている事を確認する。

「皆サボり?」

元々庶務の子達と書記はサボったり来なかったりしてたけど…。

「遅刻かな?」

遅刻なら何度かある。二人一緒にはなかったけど…。

「下校時間まで寝て待とうかな…」

僕は会長達が来るまで休憩する事にした。


***

「ッ…うぅ…」

苦しい。息ができない。

僕は息苦しさに目を覚ました。

「だ、れ…」

誰かが僕の上に乗っている。

怖い。苦しい。

「………」

「や……、て…だ…れ」

心臓の音が耳元で聞こえる。意識が朦朧とする。

怖い。怖い怖い怖い怖い。

「…………」

「…っ…が…」

抵抗しようにも手足が拘束されて動かない。

"死"

僕の脳裏にその言葉が過る。

(まだゲームクリアしてなかったなぁ)

泣き虫の父さんは大丈夫だろうか?心配性の母さんもきっと悲しむだろう。
会長に渡す書類があったな…。鴨杉にまた負担がいってしまうな…。

すぐ怒る風紀委員長や冗談が好きな副委員長達は犯人を見つけてくれるかな?

零は、大丈夫かな?

最後なら感謝の言葉を伝えるんだった。

「………」

「ご…ね」

その言葉を最後に僕は殺された。















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