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【人形から人間へ】
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『ならば…国の…死ね…カロアス…』
『第一…ロイス…』
学園へ行った帰りに神殿へ寄ってみたら声が新たに増えていた。
これは私の声だ。
そして今知ったがこの愛らしく美しい声は、今日学園に居たあの子の声だ。
神は私に何か伝えたいのだろうか?
あの子の名前はルジルイット・カァロアースのはずだ。
だが今聞いた私の声によるとあの子はカロアス。カロアス公爵家の子息だ。
クオトニットが私に嘘を教えた?
なぜクオトニットがその様な事をしたのだろうか?公爵家ならいずれ私は会うはず…いや。
私はカロアス公爵家子息の顔を知らない。
なるほど…クオトニットは余程会わせたく無いのだろう。
私に嘘をついてまで。
だが子供のクオトニットでは顔写真をどうこうできないはずだ。
ならば協力者がいると見て良いだろう。
私は相当馬鹿にされている様だ。
「………」
先程の私の声では『ならば』『国の』『死ね』『カロアス』と言っていた。
私が言いそうな言葉だと『ならば国の安寧の為に死ねカロアス』だな。
カロアス公爵家は何代にも渡り王座を狙っていた。
それなのに公爵の地位を剥奪されなかったのは公爵には国の闇を背負って貰っているからだ。
建国されたばかりの頃カロアス公爵と王族は"命の盟約"をしている。
もし破ればお互いの一族、そして自身も死ぬ…今では禁忌術に認定されている物だ。
王族は秩序を乱す人間を纏める事を初代カロアス公爵に求め初代カロアス公爵は子孫の安寧を盟約により誓った。
だからカロアス公爵家は剥奪されない。そして必ず子孫が公爵の地位に就かなければいけない。
だが声の私はカロアスを殺そうとしている。
ならばカロアスには他に公爵を継げる人間がいるのだろう。
だが今現在その様な話は聞かない。ならばこれは未来の話と仮定した方が良いだろう。
「?」
そう言えば私はどこで"命の盟約"を知ったのだろうか?
確か誰かに聞いたのだ。
「ッ」
思い出そうとすると酷く頭が痛い。
これは何かの魔法がかけられている可能性がある。
人の記憶に関与できるのは精神魔法だけだ。
だが国に精神魔法を扱える人間はいない。
あの魔法は伝授できない。ある一定の条件で授かる魔法だと聞いている。
誰に聞いた?
「いや…今は…」
あの子に会う事に集中しよう。
私は痛む頭を抱え神殿を出た。
『しなないで』
カロアスの悲しい声を聞きながら。
「死なないよ」
君も殺さない。
私は強くそう思った。
まずはカロアス公爵家の顔写真を手に入れよう。
間違いがあってはいけない。
私は王族しか入る事が許されない図書室に向かった。
「あ!王子やっと見つけました!はやく授業に出席してください!いいですか、貴方は第一王子なのです!もっと自覚ある行動を…王子?どこへ行かれるのですか?」
深い緑色の長髪を一つに纏め片眼鏡をかけた教育係の青年、ルルを無視し図書室へ向かう。
このルルはエルフで魔法学に優れている。
私が魔力のコントロールが上手くなったはルルのお陰だろう。
そしてルルは遥か昔に起きた"帝王国戦争"で帝国を勝利に導いた将軍である。
「おーうーじー!ハッ!まさかこれが反抗期??早くない?王子、くれぐれもアホにはならないで下さいね!貴方のその小さい小粒の手に何億人の命がかかっているのですから!」
これでもルルは遥か昔に起きた"帝王国戦争"で帝国を勝利に導いた将軍だ。
「図書室へ行くだけだ」
「図書室へ?なぜ?」
ルルは私の後ろをついてくる。
理由を言うまで離れなさそうだ。
「カロアス公爵家について調べる」
「………カロアス公爵家…ですか?」
ルルが立ち止まったので私も止まる。
振りかえるといつも笑っているルルが珍しい無表情だ。
普段閉じている目を開け、赤い瞳が私を見る。
「なぜ?」
ルルが私にそう言った。
ルルはなぜ聞いた?カロアス公爵家に何かあるのか?
それとも、ルルがクオトニットの協力者?
「興味が湧いた」
「…殺すんですか?…公子を…」
ルルの言葉に首を傾げる。
「なぜ殺す事に繋がる」
「貴方が愚者だからだ」
私が?
クオトニットもルルもなぜ私からカロアスを遠ざけたがる?私が知らない"なにか"があるのか?
「殺さない。絶対に」
「傀儡は傀儡らしくして下さい」
「ルル。王族侮辱罪で地下牢へ行きたいのか?」
流石に言葉が過ぎるだろう。
私が傀儡?そんな訳ない。
「お忘れの様ですが、私は"帝王国戦争"で捕虜として王国に捕まり、王国の王族を全員殺害したのですよ?」
「脅しに屈する私ではない」
「………そうですか!」
ルルはジッと私を見て、次の瞬間また笑った。
まるで先程の事がなかった様に。
「じゃぁ宿題だけ出しときますので、明日提出して下さい!」
ルルはそう言って去っていった。
「もっと力がいるな」
今の私ではルルに勝てない。
以前ならルルが反逆する可能性が無かったから放置していたが、今は分からない。
何者からでもあの子を守れる様になりたい。
私は図書室の扉を開いた。
『第一…ロイス…』
学園へ行った帰りに神殿へ寄ってみたら声が新たに増えていた。
これは私の声だ。
そして今知ったがこの愛らしく美しい声は、今日学園に居たあの子の声だ。
神は私に何か伝えたいのだろうか?
あの子の名前はルジルイット・カァロアースのはずだ。
だが今聞いた私の声によるとあの子はカロアス。カロアス公爵家の子息だ。
クオトニットが私に嘘を教えた?
なぜクオトニットがその様な事をしたのだろうか?公爵家ならいずれ私は会うはず…いや。
私はカロアス公爵家子息の顔を知らない。
なるほど…クオトニットは余程会わせたく無いのだろう。
私に嘘をついてまで。
だが子供のクオトニットでは顔写真をどうこうできないはずだ。
ならば協力者がいると見て良いだろう。
私は相当馬鹿にされている様だ。
「………」
先程の私の声では『ならば』『国の』『死ね』『カロアス』と言っていた。
私が言いそうな言葉だと『ならば国の安寧の為に死ねカロアス』だな。
カロアス公爵家は何代にも渡り王座を狙っていた。
それなのに公爵の地位を剥奪されなかったのは公爵には国の闇を背負って貰っているからだ。
建国されたばかりの頃カロアス公爵と王族は"命の盟約"をしている。
もし破ればお互いの一族、そして自身も死ぬ…今では禁忌術に認定されている物だ。
王族は秩序を乱す人間を纏める事を初代カロアス公爵に求め初代カロアス公爵は子孫の安寧を盟約により誓った。
だからカロアス公爵家は剥奪されない。そして必ず子孫が公爵の地位に就かなければいけない。
だが声の私はカロアスを殺そうとしている。
ならばカロアスには他に公爵を継げる人間がいるのだろう。
だが今現在その様な話は聞かない。ならばこれは未来の話と仮定した方が良いだろう。
「?」
そう言えば私はどこで"命の盟約"を知ったのだろうか?
確か誰かに聞いたのだ。
「ッ」
思い出そうとすると酷く頭が痛い。
これは何かの魔法がかけられている可能性がある。
人の記憶に関与できるのは精神魔法だけだ。
だが国に精神魔法を扱える人間はいない。
あの魔法は伝授できない。ある一定の条件で授かる魔法だと聞いている。
誰に聞いた?
「いや…今は…」
あの子に会う事に集中しよう。
私は痛む頭を抱え神殿を出た。
『しなないで』
カロアスの悲しい声を聞きながら。
「死なないよ」
君も殺さない。
私は強くそう思った。
まずはカロアス公爵家の顔写真を手に入れよう。
間違いがあってはいけない。
私は王族しか入る事が許されない図書室に向かった。
「あ!王子やっと見つけました!はやく授業に出席してください!いいですか、貴方は第一王子なのです!もっと自覚ある行動を…王子?どこへ行かれるのですか?」
深い緑色の長髪を一つに纏め片眼鏡をかけた教育係の青年、ルルを無視し図書室へ向かう。
このルルはエルフで魔法学に優れている。
私が魔力のコントロールが上手くなったはルルのお陰だろう。
そしてルルは遥か昔に起きた"帝王国戦争"で帝国を勝利に導いた将軍である。
「おーうーじー!ハッ!まさかこれが反抗期??早くない?王子、くれぐれもアホにはならないで下さいね!貴方のその小さい小粒の手に何億人の命がかかっているのですから!」
これでもルルは遥か昔に起きた"帝王国戦争"で帝国を勝利に導いた将軍だ。
「図書室へ行くだけだ」
「図書室へ?なぜ?」
ルルは私の後ろをついてくる。
理由を言うまで離れなさそうだ。
「カロアス公爵家について調べる」
「………カロアス公爵家…ですか?」
ルルが立ち止まったので私も止まる。
振りかえるといつも笑っているルルが珍しい無表情だ。
普段閉じている目を開け、赤い瞳が私を見る。
「なぜ?」
ルルが私にそう言った。
ルルはなぜ聞いた?カロアス公爵家に何かあるのか?
それとも、ルルがクオトニットの協力者?
「興味が湧いた」
「…殺すんですか?…公子を…」
ルルの言葉に首を傾げる。
「なぜ殺す事に繋がる」
「貴方が愚者だからだ」
私が?
クオトニットもルルもなぜ私からカロアスを遠ざけたがる?私が知らない"なにか"があるのか?
「殺さない。絶対に」
「傀儡は傀儡らしくして下さい」
「ルル。王族侮辱罪で地下牢へ行きたいのか?」
流石に言葉が過ぎるだろう。
私が傀儡?そんな訳ない。
「お忘れの様ですが、私は"帝王国戦争"で捕虜として王国に捕まり、王国の王族を全員殺害したのですよ?」
「脅しに屈する私ではない」
「………そうですか!」
ルルはジッと私を見て、次の瞬間また笑った。
まるで先程の事がなかった様に。
「じゃぁ宿題だけ出しときますので、明日提出して下さい!」
ルルはそう言って去っていった。
「もっと力がいるな」
今の私ではルルに勝てない。
以前ならルルが反逆する可能性が無かったから放置していたが、今は分からない。
何者からでもあの子を守れる様になりたい。
私は図書室の扉を開いた。
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