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禁忌の魔法使い 3

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 王女は冷たい人。僧侶は面倒な人。貴族は不気味な人。勇者は怖い人。

「やだやだやだやだ!!誰か助けてっ!!」

 誰かを殺す事はいまだに慣れない。怖いし吐き気がする。
でもまるで習慣の様に、何度も何度も人を誘拐してしまう。

「魔法…使、い」

 その内僧侶にバレた。
でも僧侶は仲間になってくれた。

僕が拐って僧侶が殺す、なぜかそういう流れになった。

「魚や肉を食べろ!!」

「気持ち悪いから嫌だ!」

 前までは食べれていた魚や肉が食べれない。途中で気持ち悪くなる。

…生き物を食べたくない。

「私も無理です」

 本当は食べれる癖に食べない僧侶はやっぱり面倒な人だ。

「レビル卿。時間が無駄だからやめなさい」

「ですが…」

 王女が面倒そうな視線を僕達に向ける。

「一口でも無理か?」

「無理!レビルくんのパワハラ!!」

「な!?…そうか、なら今日は諦める」

 貴族は…不気味。なんで食べさせようとしてくるのさ。

「勇者、どこ行ったんだろ?」

 貴族が勇者を探す。無駄なのに。

勇者は今食事中だ。

 勇者は僕達が殺した人間を食べている。なんでかは知らないし、知る気もない。

「魔法使い。今日は寝れそう?」

 僧侶が毛布を持ってきて僕にかけながら言う。

「別に」

(そういえば僧侶は神殿にいたんだっけ…)

「ねぇ」

「ん?」

 僧侶が優しく笑う。気持ち悪い。
なんでこの人は人を殺すんだろう?

「……なんでもない」

 勇者が魔王を倒したら全員殺すんだ。今更真実とか知る必要ない。











「逃げて!!!!!」

 僧侶の声に目が覚める。そして僧侶が睡眠魔法をかけた事に苛立った。

(確かあっちの方から…)

 僧侶に文句を言おうと、声がした方へ向かった。

「ぞう、りょ…」

(あぁ…また死んだ)

「ゆるさ、ない…レビル…まも、る…やよう…」

「勇者、なんで僧侶を殺したの?」

 勇者は何かの術にかかっているのか知らないが正気ではないみたいだ。

「なんで…雨?…じゃないか」

 視界が揺らぐ。呼吸が乱れる。

(僕は僧侶が大切だったのかな)

 なんでかは知らないけど僕は泣いていた。

勇者が僕に気がついて襲ってくる。

生きたい。弟の分も。

でも、なぜか生きようと思えない。

「ねぇ…だれか、おしえてよ」

 本当は気がついていたんだ。王女も貴族も僧侶も噂とは違う人間だって事。

 でもどうでも良かった。もうそんな気力無くなったよ。

でもさ、なんで僕達がこんな目に合うか、理由ぐらい知りたかったよ。






 僕はなんとなく僧侶の残った洋服の切れ端を握った。
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