上 下
5 / 14

黄金騎士団団長

しおりを挟む
(これは助けた方が良いのか…?)

スノーヴァはただ困り果てていた。

自身を何時も助けてくれる妖精が、笑いながらも瞳が激怒を表すレベル。
ミフィールより妖精を大切にしたいスノーヴァは妖精らのする事にあまり口を出したくなかった。

「《あと何秒かな?》」 

「《愛し子、勝負しようよ!ボクは10秒だと思う!》」

「《あーずるーい!ワタシも参加するー!》」

「おい!医者はまだか!!」

「お待たせしました!すぐに状態を見させて頂きます!!」

妖精達がクスクス飛び回る中、騎士の怒号が飛び医者が走って到着した。
医者はすぐに魔法を使いミフィールの状態を確認している。

妖精の罰フェアリーペナルティー?」

医者が不思議そうに首を傾げる。

「えっと、この者は妖精様に何かしたのですか?」

「何故そうなる!?」

「いえ、状態異常の欄に妖精の罰フェアリーペナルティーと…………私には手の施しようが御座いません!神官様をお呼び下さい!」

綺麗な土下座をして医者は孟スピードで去る。

(神から世界の管理を任されている妖精。
穏和で有名な妖精達を怒らすのは馬鹿しかいないと言われている。
そんな妖精を怒らせられる人間に…関わりたくない!!!)

医者は涙を流しながら走ったのだった。

「おい!待て貴様!!」

騎士達は動揺する。『妖精の罰』など初めて聞いたからだ。

「《あら?以外と生きてるわ?》」

「ん~…」

「《愛し子?どうしたの?》」

スノーヴァは唸りながら考える。
ミフィールはスノーヴァのお気に入りのミィファルトの母親だ。

「お、お兄様!お兄様は何かご存知ですか?」

青ざめながらもスノーヴァに駆け寄ったミィファルトはスノーヴァに問いかけた。
アルファスの部屋での出来事をミィファルトは思い出していたのだ。

「ん~…」

ミィファルトがポロポロと涙を流しながらスノーヴァを見る。
血のような瞳から透明な涙が出るのは、一種の神秘にも感じた。
スノーヴァがどんな返事をしようと他の人間はミフィールに気を取られて聞き取れないだろう。
スノーヴァは妖精とミィファルトを見比べて、溜め息をついた。

「うん、そうだね。その歳で母親を亡くすのは可哀想だ」

「《》」

「《ボクたちこいつ嫌い!!!》」

「《でも愛し子が嫌がってるよ?》」

「《多数決しよ!》」

妖精達が集まり各々手をあげる。
結果は…

「《延命結果!》」

「カハッ!」

ミフィールが咳き込みながらも呼吸を繰り返す。

「お母様!」

「何がどうなっているんだ…??」

黄金騎士団は首を傾げる。
だがそれより王族の避難が先だと、それぞれ避難を開始した。

「スノーヴァ王子、お部屋まで護衛させて頂きます」

そう言ってスノーヴァの元に来たのは黄金騎士団団長レオン・ライ・パルマだった。
オレンジ色の髪に瞳。そして名の通り黄金の鎧を身に纏っている。
三十代には思えない野生じみた美貌も、市民の間では人気があった。
レオンには三人の子供がおり、長男はスノーヴァと同い年だ。
ご学友になる可能性が高い。

「レオン殿、宜しく頼む」

「畏まりました」

レオンと数人の騎士がスノーヴァに付き、スノーヴァの部屋に向かう。

「!?これはどういう事だ!?」

スノーヴァの広い部屋は窓ガラスがない。
いや、ガラスを嵌めるべき場所にガラスがないのだ。

今は冬に近い時期だが、随時外の風が入ってくる。
装飾品も無くダブルベッドと勉強机に椅子、そして数冊の本だけだ。

「スノーヴァ王子、ここは王子の部屋なのですか?」

「あぁ、そうだが?」

閉所恐怖症。
主な原因は過去のトラウマによる物が多く、スノーヴァは前世からその症状を患っていた。

本来スノーヴァの自室程の広さで症状が起こる事はない。だがスノーヴァは密室を苦手としていた為、この様な状態になった。

「私の隊から数人送ります。」

「必要ない。僕は超幸運だ!」

「……では、部屋付の従者を増員します。従者を呼んできます」

「?いないが??」

「はッ!?」

レオンが部屋を一周見て顔をしかめる。
第一王子のスノーヴァだが今まで護衛騎士や従者、侍女がいなかった。
本来あってはならない事だが、他の側妃達が上手く手を回していた。
側妃ら以外、誰も知らなかったのだ。

妖精達も市民を見る事が多いので異常に気がつかない。前世一般人のスノーヴァもだ。

【日常生活において、人間は自分の事は自分でする】

その認識だと考えていた。

「団長、この事は王に知らせた方が宜しいのでは?」

「俺報告してきます。ついでに人材を一時的に見繕ってきます」

「《え、これ駄目なの??》」

「《愛し子育児放棄されてたの??》」

「《ヒャッハッー!しちゃう??》」

妖精が困った様にウロウロする。

「いや必要ない!今まで出来ていたんだ、今更だ!」

それは主に妖精が手伝っていたからだ。
魔力無しはお湯を熱くできないしドライヤーも使えない。
トイレも流せない。
それに侍女もいないなら掃除も出来ていなかっただろう。

妖精の涙ぐましい過保護をスノーヴァは知らない。

「王子、取り敢えず今日は貴賓室へお泊まりください」

「え、やだ」

「…王子、今日襲撃があった事はご存知のはずです。」

レオンがスノーヴァを窘める様に言う。
スノーヴァは九歳にしては小柄な身長だ、六歳と言っても良い程。
その性でレオンは自身の息子である三男を思い浮かべていた。

「王子」

「僕に物申せるのは国王だけだ!」

「王子の安全の為ならば申し上げます」

「…………」

「…………」

「《………えっと、取り敢えず殺っちゃう?》」

シリアスな空気が流れる中、妖精が混乱しながらも粉を撒こうとする。
スノーヴァは大きく溜め息をついた。

「今回は僕が折れてやろう…僕は大人だからな!」

「感謝いたします。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。

無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。 そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。 でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。 ___________________ 異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分) わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか 現在体調不良により休止中 2021/9月20日 最新話更新 2022/12月27日

賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。

かるぼん
BL
******************** ヴィンセント・ウィンバークの最悪の人生はやはり最悪の形で終わりを迎えた。 監禁され、牢獄の中で誰にも看取られず、ひとり悲しくこの生を終える。 もう一度、やり直せたなら… そう思いながら遠のく意識に身をゆだね…… 気が付くと「最悪」の始まりだった子ども時代に逆行していた。 逆行したヴィンセントは今回こそ、後悔のない人生を送ることを固く決意し二度目となる新たな人生を歩み始めた。 自分の最悪だった人生を回収していく過程で、逆行前には得られなかった多くの大事な人と出会う。 孤独だったヴィンセントにとって、とても貴重でありがたい存在。 しかし彼らは口をそろえてこう言うのだ 「君は稀代のたらしだね。」 ほのかにBLが漂う、逆行やり直し系ファンタジー! よろしくお願い致します!! ********************

『ユキレラ』義妹に結婚寸前の彼氏を寝取られたど田舎者のオレが、泣きながら王都に出てきて運命を見つけたかもな話

真義あさひ
BL
尽くし男の永遠の片想い話。でも幸福。 ど田舎村出身の青年ユキレラは、結婚を翌月に控えた彼氏を義妹アデラに寝取られた。 確かにユキレラの物を何でも欲しがる妹だったが、まさかの婚約者まで奪われてはさすがに許せない。 絶縁状を叩きつけたその足でど田舎村を飛び出したユキレラは、王都を目指す。 そして夢いっぱいでやってきた王都に到着当日、酒場で安い酒を飲み過ぎて気づいたら翌朝、同じ寝台の中には裸の美少年が。 「えっ、嘘……これもしかして未成年じゃ……?」 冷や汗ダラダラでパニクっていたユキレラの前で、今まさに美少年が眠りから目覚めようとしていた。 ※「王弟カズンの冒険前夜」の番外編、「家出少年ルシウスNEXT」の続編 「異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ」のメインキャラたちの子孫が主人公です

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て運命の相手を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ──────────── ※感想、いいね大歓迎です!!

使命を全うするために俺は死にます。

あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。 とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。 だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。 それが、みなに忘れられても_

処理中です...