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第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 09
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「な……何だここ……」
「スゴイとこですね……」
コッパー街に到着するやいなや、レンタロウとサヤカの二人はその光景を眺めて呆然としてしまった。
コッパー街は主に、ハチマンシティの鉄工所などで働く労働者の居住区画となっているのだが、その中でも最低所得者と呼ばれる者達がここには住んでおり、メインとなっている通りは狭い上に両隣に建物がひしめき合っていて、余計圧迫感を感じさせる通りとなっていた。
また、路地ともなれば人が一人やっと通れるくらいの幅しかなく、所々にはホームレスが不法居住をしているため、通れない場所もしばしば存在した。
人口比率、人口密度は共にハチマンシティ最多であるため、一件一件回ろうものなら数ヶ月は掛かるだろうこの場所で、最早ニシキから得た目撃情報など、ほぼ無に期したようなものだった。
「これじゃあまた捜しようが無いじゃないですか……」
絶望的状況に、サヤカは早くも諦めムードを漂わせていた。
「面倒くさいが仕方無い……また片っ端から目撃情報を集めて回るしかないか」
「ううう……骨が折れそうですねぇ……」
「そうだ、サヤカ。一応ナノデジのプロテクト機能、強化しておけよ」
「えっ? どうしてですか?」
「歩けば分かる」
「はあ……分かりました」
サヤカはレンタロウの指示通り、ナノデジのプロテクト機能を通常モードから警戒モードに切り替え、大通りとは言えないような狭い道を歩き始める。現時刻は15時頃であり、この時間は多くの日勤労働者が鉄工所で作業を行っているため、ピーク時に比べると人の通りは少ないが、それでも歩いていると常に行き交う人が居る程には人通りがあった。
そんな通りを歩き始めて僅か5分後、事は起きた。
「おっとスマン」
歩いている途中、一人の男がレンタロウと肩をぶつけた。
通常であるならば軽く互いに謝罪して済むものだが、しかしレンタロウはその刹那、その男の腕をガッチリと掴んだのだ。
「な……何だお前っ!?」
男は目を見開いてレンタロウに大声を上げた。
「何だはこっちのセリフだ」
「は? そ……そりゃどういう……」
「お前、俺のナノデジのキャッシュデータをスキミングしようとしただろ?」
「なっ!?」
男の目は泳ぎ、明らかな動揺が見て取れた。
「ど……何処に俺がスキミングをしたって証拠があるんだっ!」
男の主張に、レンタロウは思わず溜息を吐いてしまった。
「はぁ……お前、スリをするのは初めてだろ?」
「どっ、どうしてそんな事を!」
「アラート」
「えっ? あ、アラート?」
「ナノデジは警戒モードに設定しておくと、スキマーに情報を抜き取られそうになった時、アラートってのが働いて生命活動補助機能と電磁バリア展開以外の全機能を一時的にシャットダウンさせるんだよ。無論、お前が欲しかったキャッシュ機能もな」
「ゲッ! グワッ! イテテテテテテテッ!!」
スリの男が逃げる挙動を取ろうとするが、そうはさせまいと、レンタロウは掴んだ男の腕を外側に捻ると、男はあまりの痛みに絶叫しながら、体を九の時に曲げた。
「そうだ丁度良い。お前金に困ってるんだろ?」
「イダダダッ! ――えっ?」
スリの男は悶え苦しみながらも、金という言葉に反応した。
「この男を知らないか?」
スリの男の腕を掴んでいる方とは反対の手で、レンタロウは懐から写真を取り出し、それを見せた。
「し……知らねえよそんな男!」
「そうか」
「もういい加減手を放してくれ! このままじゃ折れちまう!」
「こんなもんじゃ人間の腕は折れねぇよ。それよりお前、この男を捜すのに協力しろ」
「さ……捜すのに協力ゥ? 何で俺がそんな事を――」
「別に協力しなくてもいいぞ。その代わり、今後しばらくは片腕が動かない生活を送る羽目になるかもしれんがな」
「わ、分かった! 分かったから! 協力するからそれだけは堪忍してくれっ!!」
「そうか、ならいい」
するとレンタロウはスリの男の手を開放する。男は瞬時にレンタロウの近くから離れ、無理に捻られて腕がおかしくなっていないかと、腕を回したりして調整を図った。
「な……何だここ……」
「スゴイとこですね……」
コッパー街に到着するやいなや、レンタロウとサヤカの二人はその光景を眺めて呆然としてしまった。
コッパー街は主に、ハチマンシティの鉄工所などで働く労働者の居住区画となっているのだが、その中でも最低所得者と呼ばれる者達がここには住んでおり、メインとなっている通りは狭い上に両隣に建物がひしめき合っていて、余計圧迫感を感じさせる通りとなっていた。
また、路地ともなれば人が一人やっと通れるくらいの幅しかなく、所々にはホームレスが不法居住をしているため、通れない場所もしばしば存在した。
人口比率、人口密度は共にハチマンシティ最多であるため、一件一件回ろうものなら数ヶ月は掛かるだろうこの場所で、最早ニシキから得た目撃情報など、ほぼ無に期したようなものだった。
「これじゃあまた捜しようが無いじゃないですか……」
絶望的状況に、サヤカは早くも諦めムードを漂わせていた。
「面倒くさいが仕方無い……また片っ端から目撃情報を集めて回るしかないか」
「ううう……骨が折れそうですねぇ……」
「そうだ、サヤカ。一応ナノデジのプロテクト機能、強化しておけよ」
「えっ? どうしてですか?」
「歩けば分かる」
「はあ……分かりました」
サヤカはレンタロウの指示通り、ナノデジのプロテクト機能を通常モードから警戒モードに切り替え、大通りとは言えないような狭い道を歩き始める。現時刻は15時頃であり、この時間は多くの日勤労働者が鉄工所で作業を行っているため、ピーク時に比べると人の通りは少ないが、それでも歩いていると常に行き交う人が居る程には人通りがあった。
そんな通りを歩き始めて僅か5分後、事は起きた。
「おっとスマン」
歩いている途中、一人の男がレンタロウと肩をぶつけた。
通常であるならば軽く互いに謝罪して済むものだが、しかしレンタロウはその刹那、その男の腕をガッチリと掴んだのだ。
「な……何だお前っ!?」
男は目を見開いてレンタロウに大声を上げた。
「何だはこっちのセリフだ」
「は? そ……そりゃどういう……」
「お前、俺のナノデジのキャッシュデータをスキミングしようとしただろ?」
「なっ!?」
男の目は泳ぎ、明らかな動揺が見て取れた。
「ど……何処に俺がスキミングをしたって証拠があるんだっ!」
男の主張に、レンタロウは思わず溜息を吐いてしまった。
「はぁ……お前、スリをするのは初めてだろ?」
「どっ、どうしてそんな事を!」
「アラート」
「えっ? あ、アラート?」
「ナノデジは警戒モードに設定しておくと、スキマーに情報を抜き取られそうになった時、アラートってのが働いて生命活動補助機能と電磁バリア展開以外の全機能を一時的にシャットダウンさせるんだよ。無論、お前が欲しかったキャッシュ機能もな」
「ゲッ! グワッ! イテテテテテテテッ!!」
スリの男が逃げる挙動を取ろうとするが、そうはさせまいと、レンタロウは掴んだ男の腕を外側に捻ると、男はあまりの痛みに絶叫しながら、体を九の時に曲げた。
「そうだ丁度良い。お前金に困ってるんだろ?」
「イダダダッ! ――えっ?」
スリの男は悶え苦しみながらも、金という言葉に反応した。
「この男を知らないか?」
スリの男の腕を掴んでいる方とは反対の手で、レンタロウは懐から写真を取り出し、それを見せた。
「し……知らねえよそんな男!」
「そうか」
「もういい加減手を放してくれ! このままじゃ折れちまう!」
「こんなもんじゃ人間の腕は折れねぇよ。それよりお前、この男を捜すのに協力しろ」
「さ……捜すのに協力ゥ? 何で俺がそんな事を――」
「別に協力しなくてもいいぞ。その代わり、今後しばらくは片腕が動かない生活を送る羽目になるかもしれんがな」
「わ、分かった! 分かったから! 協力するからそれだけは堪忍してくれっ!!」
「そうか、ならいい」
するとレンタロウはスリの男の手を開放する。男は瞬時にレンタロウの近くから離れ、無理に捻られて腕がおかしくなっていないかと、腕を回したりして調整を図った。
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