15 / 36
第2話 鉄鋼街のコロッケパン
第2話 鉄鋼街のコロッケパン 08
しおりを挟む
「良く教育されてるだろ? 俺は教育が趣味なんでな」
「教育が趣味ねぇ……」
一体どんな教育をしてんだかと、レンタロウは口には出さず、心の中で留める事にした。
「どうだお前ら、この男をどっかで見た事無いか?」
ニシキが尋ねると、一人の男性構成員が右手を挙げて一歩前に出てきた。
「私、昨日この男を見かけました。場所はコッパー街です」
「コッパー街か……あそこはゴチャついているし、姿を隠すにはうってつけか。だがしかし――」
腕組みをし、ニシキは頭を悩ませる。その理由はやはり、ニシキもその顔に何処か見覚えがあるのだが、しかしそれを明確に思い出せず、モヤモヤとしたものが残っていたからだ。
「この男がウチの事務所に来たって憶えがある奴はいないのか?」
ニシキは尋ねたが返事は返って来ず、前に出てきた構成員の男も首を横に振った。
「そうか……まあひとまず、コッパー街に居るかもしれんという事だ。足が付いて良かったな」
「まあな。ありがとさん、早速当たってみるとするよ。行くぞサヤカ」
「は、はい!」
レンタロウとサヤカは椅子から立ち上がり、その場を去ろうとしたその時――
「待ちな」
ニシキは座ったまま、二人を呼び止めた。
「マフィアから情報を仕入れておいてタダで帰ろうなんて、あまりに図々しいと思わねぇか?」
「……なんだ、カネか?」
「ハッ! 俺達に比べたら、アンタが持ってるカネなんて雀の涙程だろ? そんな奴からたかったりするなんてケチな事はしねぇよ」
「チッ……じゃあ何だ?」
「アンタみたいな仕事人に頼む事といったら一つ……依頼だよ。俺からの仕事を一つ受けて貰おう」
「依頼か……」
普段ならそれくらいならと、直ぐに二つ返事を出す事が出来たのだが、しかし第47基地局の破壊工作の一件もあり、帝国軍から追われるより早くこの街を出たかったレンタロウにとって、この依頼はあまり好ましいものではなかった。
「何だ? 仕事も出来ないってのか?」
参ったとばかりの態度をしてみせるレンタロウを見て、ニシキは鋭い目つきで睨んできた。
「いや、出来ない訳ではないが……この街にあまり長居出来ないもんでな」
「そいつはどういう事だ?」
レンタロウはニシキに、第47基地局の破壊工作を行った事を掻い摘んで説明すると、ニシキは「なるほどな」とその理由に納得をしたように思えたのだが――
「フブキさん、それとこれとは別だ。俺達もタダで協力する程、お人好しな集団じゃないんだ」
「……なるほどな」
そう言われてしまえば、レンタロウも承諾するしかなかった。リターンの無い仕事を引き受けないのは、レンタロウも同じだったからだ。
「分かった。それでアンタが俺達に依頼したい事ってのは何だ?」
レンタロウが尋ねると、ニシキはフッと鼻で笑った。
「なに、どちらかと言えば情報の交換さ」
「情報の交換?」
「その写真の男の正体、そいつを俺にも報告してくれ」
「えっ……それで良いのか?」
もっと面倒な仕事を押し付けられると思っていたレンタロウは、思わぬ内容に拍子抜けしてしまった。
「こうしないとどうせアンタは俺に何の情報共有もせずこの街を去っていくだろ? それに俺はどうしてもコイツの顔に見覚えがあるのだが、全く思い出す事が出来ない。これではいつまでもモヤモヤし続ける事になっちまうからな」
「なるほど」
結構繊細な奴なんだなと、レンタロウは話を聞きながら思った。
「分かった。じゃあ写真の男の正体が分かり次第、アンタに連絡して情報を渡そう。ナノデジのアドレスを教えてくれ」
「これだ」
ニシキは近距離通信機能を使って自分のアドレスを飛ばし、それを受け取ったレンタロウのナノデジはすぐさまアドレス帳にそのアドレスを登録した。
「よし、行くぞサヤカ」
「ええ」
レンタロウとサヤカは今度こそニシキの元を後にし、コッパー街を目指して歩き始めたが、その後ろ姿を見て、ニシキはニヤリと一方の口角を上げてみせた。
「コッパー街……まっ、見つかるといいがな」
ニシキのその呟きはレンタロウとサヤカの元には届かないが、しかしその言葉の意味を二人は、コッパー街に実際到着して思い知る事となった。
「教育が趣味ねぇ……」
一体どんな教育をしてんだかと、レンタロウは口には出さず、心の中で留める事にした。
「どうだお前ら、この男をどっかで見た事無いか?」
ニシキが尋ねると、一人の男性構成員が右手を挙げて一歩前に出てきた。
「私、昨日この男を見かけました。場所はコッパー街です」
「コッパー街か……あそこはゴチャついているし、姿を隠すにはうってつけか。だがしかし――」
腕組みをし、ニシキは頭を悩ませる。その理由はやはり、ニシキもその顔に何処か見覚えがあるのだが、しかしそれを明確に思い出せず、モヤモヤとしたものが残っていたからだ。
「この男がウチの事務所に来たって憶えがある奴はいないのか?」
ニシキは尋ねたが返事は返って来ず、前に出てきた構成員の男も首を横に振った。
「そうか……まあひとまず、コッパー街に居るかもしれんという事だ。足が付いて良かったな」
「まあな。ありがとさん、早速当たってみるとするよ。行くぞサヤカ」
「は、はい!」
レンタロウとサヤカは椅子から立ち上がり、その場を去ろうとしたその時――
「待ちな」
ニシキは座ったまま、二人を呼び止めた。
「マフィアから情報を仕入れておいてタダで帰ろうなんて、あまりに図々しいと思わねぇか?」
「……なんだ、カネか?」
「ハッ! 俺達に比べたら、アンタが持ってるカネなんて雀の涙程だろ? そんな奴からたかったりするなんてケチな事はしねぇよ」
「チッ……じゃあ何だ?」
「アンタみたいな仕事人に頼む事といったら一つ……依頼だよ。俺からの仕事を一つ受けて貰おう」
「依頼か……」
普段ならそれくらいならと、直ぐに二つ返事を出す事が出来たのだが、しかし第47基地局の破壊工作の一件もあり、帝国軍から追われるより早くこの街を出たかったレンタロウにとって、この依頼はあまり好ましいものではなかった。
「何だ? 仕事も出来ないってのか?」
参ったとばかりの態度をしてみせるレンタロウを見て、ニシキは鋭い目つきで睨んできた。
「いや、出来ない訳ではないが……この街にあまり長居出来ないもんでな」
「そいつはどういう事だ?」
レンタロウはニシキに、第47基地局の破壊工作を行った事を掻い摘んで説明すると、ニシキは「なるほどな」とその理由に納得をしたように思えたのだが――
「フブキさん、それとこれとは別だ。俺達もタダで協力する程、お人好しな集団じゃないんだ」
「……なるほどな」
そう言われてしまえば、レンタロウも承諾するしかなかった。リターンの無い仕事を引き受けないのは、レンタロウも同じだったからだ。
「分かった。それでアンタが俺達に依頼したい事ってのは何だ?」
レンタロウが尋ねると、ニシキはフッと鼻で笑った。
「なに、どちらかと言えば情報の交換さ」
「情報の交換?」
「その写真の男の正体、そいつを俺にも報告してくれ」
「えっ……それで良いのか?」
もっと面倒な仕事を押し付けられると思っていたレンタロウは、思わぬ内容に拍子抜けしてしまった。
「こうしないとどうせアンタは俺に何の情報共有もせずこの街を去っていくだろ? それに俺はどうしてもコイツの顔に見覚えがあるのだが、全く思い出す事が出来ない。これではいつまでもモヤモヤし続ける事になっちまうからな」
「なるほど」
結構繊細な奴なんだなと、レンタロウは話を聞きながら思った。
「分かった。じゃあ写真の男の正体が分かり次第、アンタに連絡して情報を渡そう。ナノデジのアドレスを教えてくれ」
「これだ」
ニシキは近距離通信機能を使って自分のアドレスを飛ばし、それを受け取ったレンタロウのナノデジはすぐさまアドレス帳にそのアドレスを登録した。
「よし、行くぞサヤカ」
「ええ」
レンタロウとサヤカは今度こそニシキの元を後にし、コッパー街を目指して歩き始めたが、その後ろ姿を見て、ニシキはニヤリと一方の口角を上げてみせた。
「コッパー街……まっ、見つかるといいがな」
ニシキのその呟きはレンタロウとサヤカの元には届かないが、しかしその言葉の意味を二人は、コッパー街に実際到着して思い知る事となった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる