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トドメを刺してと君は言う【中編】

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コンコンッ



「爽…?まだ寝てる…?」
「……………いや、さっき目…覚めたよ…どうぞ」


一応でノックしたけど、返事が返ってきて驚いた。

中に入ると、横たわったままの爽がこちらを見ている。目は覚めたみたいだけど、まだ具合は悪そうだ。


「あれ…なんか、いい匂い……」
「あ、お粥なんだけど…食べられそう?」
「マジ…?あきの…手作り…?」
「もちろん」
「絶対食べる!!」


食い気味に返事が来て笑ってしまう。爽ってたまにとても幼く見える時があって、そういうところたまらなくかわいいなって思っちゃう。俺の方がずっと年下なのにね?
俺はクスクス笑いながら爽が待つベッドに向かう。

ベッドサイドのテーブルにトレーを置いて、爽が身体を起こす手伝いをする。布越しでも熱が引いてきたことがわかって、少し安心した。


「もしかして……医者…呼んだ?」
「あ、うん!お義母さんに電話したら呼んでくれて…点滴打ってくれたのと、お薬貰ったよ?」
「…そっか、ありがとな」
「ううんっ…俺、何にもしてないし…」
「いや…めちゃくちゃ色々してくれてるよ」
「……ほんとに、全然何もできてないよ…」



俺1人じゃ、病院にも連れて行けなかったし…お医者様を呼んだのだって俺じゃない。
俺は…爽のためにもっと色々したいのに……


自分の不甲斐なさが情けなくて、少しだけ俯いていると、爽はそっと俺の頬を撫でる。

あれ………、やっぱり、爽にされるとすごく心地いい……
なんで、こんなに違うんだろう…?爽って…触り方上手いのかな…?


「あき……」
「……ん?」
「お前はいるだけで十分」
「ええっ?なにそれ?」



「そばにいてくれるだけで俺を元気にするよ…あきは」



真っ直ぐ俺の目を見て言う爽に、思わず目を逸らしてしまう。

ねぇーー!!!!

この王子様ほんっっと恥ずかしいってば!!!!砂糖爆弾めっ!!!!俺なんかにこんなキラキラ撒き散らして一体どうする気!!?世の女の子たちのためにとっておいてよね!!!!



「あれ、あき照れてる?」
「照れてないっ!!!!」
「照れてんじゃん…かわいっ…」
「もー!!早く食べてよっ!!!」
「え?食べさせてくんねーの?」
「ハァ!!?」
「こういう時の、お約束だろ?」
「なっ…、あっ、」
「ブフッ!!!!冗談だって!!!」
「もっ…もーっ!!!やめてよ爽っ!!」
「あははっ…!お前見てるとマジで元気出る」


クスクスとお腹を抱えて笑う美青年は、ベッドから俺を見上げている。俺の方が身長がかなり低くて、いつもは爽を見上げる立場だから…ちょっと新鮮。
にしても…爽ってば俺のことからかってばっかり!!意地悪っ!!

爽にトレーを渡して、俺は近くの椅子に座る。さっきよりかなり元気になってくれたみたいで…よかった。点滴が効いたみたい。ご飯食べさせたらお薬飲ませて早めに寝かせなきゃ。


ニコニコしながら頂きますと呟く爽を、椅子に体育座りをしてジッと見つめる。

………美味しいと、いいんだけど。



「…んっ!!うっま!!!すっげぇうまいっ!!!!!」
「ほんと?」
「うんっ!今まで食べたお粥の中でダントツに一番うまい!!!!あき天才じゃん!!!」
「あはっ!爽大袈裟ーっ!」
「マジでうまいって!!!お粥って、こんなうまいんだな!!」


あまりにも褒めてくれるから、なんだか恥ずかしくて…俺は両膝に顔を埋める。

普段からどんなご飯を作っても…例え失敗したとしても、爽は俺の料理をめちゃくちゃに褒めてくれるけど今日のは一段とすごい。

爽のお嫁さんになる人は…幸せだな。
こんな褒めてもらえたら、料理作るのだってもっと楽しくなるに違いない。


………って、今は俺が爽の許嫁なんだけど。きっと、今だけの特権だね。


「えへへっ……褒められるのって……嬉しっ…」
「うーわ……」
「ん…?なに?…なにその顔?」
「……あきってさぁ……」
「?」
「ハーーーーッ………天然こえーーーっ……」


爽は手で顔を押さえて項垂れる。
爽って結構な頻度で俺のこと天然って言うけど…俺全然天然じゃないのにな。どこを見て天然って言ってるんだろ。謎すぎる。




爽はペロリとお粥を平らげ、俺が渡した薬を飲んだ。粉薬もあったから、若干顰めっ面をしていて笑ってしまった。結構苦かったみたい。子供みたいでかわいい。
今後のためにお薬を飲む用のゼリーでも買っておいてあげようかな?ほら、子供用のやつ。…って、それはやりすぎ?

俺は爽からトレーを受け取って、もう一度横になるように促した。


「さぁ、ほらゆっくり寝て…?」
「ん……あき、」
「なに?」
「お粥めちゃくちゃ美味しかったよ…ありがとな」
「ふふっ…うんっ!」
「あと……」



爽は、ギュッと俺の手を握る。





「俺が寝るまで、そばにいて……」





いつもの爽からは想像もつかない、弱った姿に…無性に抱きしめたい気持ちが込み上げる。




不思議だなほんと……

どうして俺は…こんなに爽に尽くしたいって思ってしまうんだろう。





「……ふふっ……爽、赤ちゃん返りぃ~?」
「バカ…病人をからかうなっての…」
「……いいよ、寝るまでそばにいる」
「…マジで?」
「うん…だから、寝て?それで……早く元気な顔見せてね?」


爽は俺の言葉を聞いて、一度ニコッと笑った後…ゆっくりと目を閉じた。




……早く、良くなりますように。

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