上 下
6 / 24
1章 なんで月に町が? なにそれ魔法??

天才魔法使い、和泉心温!②

しおりを挟む
 「心温様に魔力があると考えました」
わお、マジで!? 心温は驚いた。
「ではまず、基本の魔法について説明します。やってもらうのは【ライト】です。【ライト】と唱えるだけで、体が光ります。暗い所に行く時に便利です」
へえ、呪文とかないんだ。簡単だ。と心温は思った。
確かに、ゲームとかだと複雑な呪文ばかりだ。
 光って! 心温はそう願いながら呪文を唱えた。
「【ライト】」
一秒後、部屋全体がまばゆい光に包まれた。
え、【ライト】ってこんなにすごいの!? 心温はあり得ない事態に呆然としていた。
(まぶしい……)
 しばらくして、光は消えた。
「ま、まさかこんなに……」
タラコスパゲッティ……ではなくてタラべコスパ・ゲティが呟いた。
「では次、【ファイア】です。あの人形に向かって唱えてください」
光に少しうろたえていたものの、きっぱり言った。
あの人形が焦げていたのはこのせいか。と心温は気付いた。
心温は、右手のなんとなく人差し指と中指だけを立てて、人形を指さした。
「【ファイア】!」
思い切り、心温は唱えた。
直径1メートルはある火の玉が人形に衝突した。
人形は燃え、あっという間にその炎が絨毯に燃え移った。
ボオッと、音を立てて燃え始める。
「ええええ!? 燃えちゃう!」
心温はめちゃくちゃ慌てて右往左往していた。
だがタラべコスパだけは、平然としていた。
「【ウォーター】」
タラべコスパが、呪文を唱えた。
水の球が、炎へと向かって行く。
シュワアと音がして、一部だけ炎が消えた。
「全部消えてない!?」
心温は、どれだけ炎の威力が高いの!? と驚いていた。
自分で出したものだというのに。
「心温様! 【ウォーター】と唱えてください!」
タラべコスパが、必死になって叫んだ。
もう、心温が命綱のような存在である。
心温は、深呼吸をした。
(やる! 絶対に!)
心温は、そう決めた。
そして指先に意識を集中させ――
「【ウォーター】‼」
大量の水が川のようになって、火に向かって行く。
シュウウウウウウ‼
見事に火を跡形もなく消し去った。
「お、お見事です、心温様。次は扱いが難しい【ウィンド】の練習に移ります」
 「【ウィンド】!」
心温は、そう唱えた。
奥にあった箱が風によって運ばれ、手元に渡った。
しかし、ホコリも運ばれてしまった。
「へ、へ、へっくしょん!」
服装だけは女子力がついたというのに、手で押さえないでクシャミをしてしまう。
心温には、女子力がこれからも一切つかないのかもしれない。
「信じられない……。あちこち行ってしまってうまく操れない【ウィンド】をたった一回で成功させるなんて……」
タラべコスパは、先から同じことをぶつぶつつぶやいている。
当の本人は、【ウィンド】を一発で成功させる凄さを知らないのだが。
「これで基本はできました。光・炎・水・風。これらの呪文は少しアレンジもできるのです」
「アレンジ?」
言葉の意味が分からず、心温は思わず敬語を使うのをやめてしまった。
「ええ、そうです。例えば……」
タラべコスパは、手を前に出した。
「【ウィンドボール】」
風の球が、目の前に現れた。
タラべコスパが手をパッと払うと、それは消えてしまった。
「このように、【ウィンド】は本当の風のように流れていきますが、アレンジしてボールにしました」
なるほど! 心温はそう思った。
タラべコスパさんは、教え方が上手だとも思った。
「では、ジュリエット様がご依頼されたことをするため、場所を移動しましょう」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

異界の師、弟子の世界に転生する

猫狐
ファンタジー
イシュリア皇国。その守護者として君臨する者がいた。 守護者は圧倒的な力を持ち、国が異界から攻められれば即座にはじき返す程の力を持っていた。 しかし、その守護者にも師匠がいた。 昔攻め入ったとある部屋にぽつんと寝ていた青年に何も出来ず、その強さに弟子入りした。 しかし修行し元の国の守護者となるまで強くなるも、遂に師匠を超えることなく、師匠は病で命が絶たれてしまった。 願わくば師匠が自分の世界にて転生し、今度は無事に暮らせるように。 その願いは聞き届けられた。 ※この作品は同じ名前で小説家になろう様にも掲載しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...