上 下
1 / 16

プロローグ

しおりを挟む
 「ふぅ……」
んー、聖女のお勤めはさすがにきついわあ……。
といっても今日は終わり。
結界もちゃんと張れてるし。
国王さまに報告!
私は、家の庭から城に移動しようと足を動かした。
 「そうか終わったか。ご苦労だ、アンジュ・ティラー」
玉座に座った国王さまはそう告げる。
長いひげと小さな瞳は、誰が見ても慈悲深い王様に見えるんだけど……。
「陛下。エイミが聖女になる件は――」
「奴は駄目だ。外見が人と天地ほどの差がある」
……。
 確かに、エイミは家族と外見が違う。
私達が茶髪なのに対して、エイミは白銀髪。
私達が水色の瞳なのに対して、エイミは水色の瞳と黄緑の瞳を持つオッドアイ。
私は、綺麗でいいと思うけど……。
 国王は、外見が変わっている人を嫌う。
それが王子や王女でも。
外見が変わっていたら王位は継がせない。
つまり、脳内が偏見のカタマリ。言い過ぎかもしれないけど。
しかも、他にも問題がありありで……。
「それと――」
なんだろう?
この話のあとに話すこと、ほとんど無いというのに……。
「聖女を廃止しようと思っておる」
「はい?」
思わぬ言葉に、間の抜けた声が出る。
えええ?? 本気で言ってる??
「わしは近くの国の真似をして聖女を勤めさせたが、聖女がいる意味が分からん。ただ膝をついてじっとしているだけだろう。国の役にたたない」
それは違う。膝はついているけれど結界維持の呪文を唱えているのだ。
声は小さいのだけれど。
「それはだめです、国王さま! 聖女を廃止したらこの聖女用の服でしか張れない結界が解けて、魔物が国に侵入して来ま……」
私は、必死で国王に聖女のいる意味を説明した。
だが、国王には通じなかった。
「何? 結界が解ける? 魔物が侵入してくる?? ハッハッハ‼ 馬鹿らしい。この国に魔物など攻めてきたことが無いというのに!」
違う。全然違う。
もともとこの国に聖女はいなかった。
だから、魔物がたびたび侵入して問題になっていた。
だけど、魔物を退ける結界というものがある。
それは国の中で一番“聖魔力”が強いものが勤める『聖女』にしか張れない。
だからほとんどの国は聖女がいる。
母によれば先代の国王から聖女を勤めさせているそうだ。
65歳という年齢からして、攻められているのを見ていておかしくないのに。
この人はっ……‼
私が王に対して絶望していると、衛兵が玉座の間に入ってきた。
 「変な顔のを雇った男を連行して来ました!」
「そうか。城の地下でムチを1000回打っておけ!」
「はっ‼」
……、まただ。
偏見だけじゃなくって、拷問もしている。
今のは、外見が変わった人を雇ったみたい。
で、それだけで罰せられている。
外見が変わっていたら、社会を生きる権利もないのかな……。
国王に怒りを覚え、私はこっそり魔法でこの場を去る。
「帰っていい」とは言われてないけど。
聖女はもうオシマイだし。
いいよね、別に!
「〖テレポーテーション瞬間移動〗」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

【完結】冤罪で処刑されたので復讐します。好きで聖女になったわけじゃない

かずき りり
ファンタジー
好きで聖女になったわけじゃない。 好きで王太子殿下の婚約者になったわけじゃない。 贅沢なんてしていない。 下働きのように、ただこき使われていただけだ。 家族の為に。 なのに……偽聖女という汚名を着せて、私を処刑した。 家族を見殺しにした……。 そんな国に復讐してやる。 私がされた事と同じ事を お前らにも返してやる。 ******************* こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

Western-Monsters

keiTO
ファンタジー
オランダーのモンスター・キラー“フランクルン・ガルトン”と、その相棒を務める“スノームン”。 二人は西洋“半妖人“で、ヨーロッパ各地で怪奇事件やモンスター狩りをしていた。 ある日、日本から妖怪退治の依頼が入り、日本に向かうが、ひょうんな事に二人は日本妖怪達が住む異界“夢望町”に迷い込んでしまう。 二人は異界から脱出する為には、謎解きや日本最強妖怪を倒さなければならない。 ガルトンとスノは、なぜ夢望町に迷い込んでしまったのか? 西洋妖怪VS日本妖怪の戦争が始まる。

ダンジョンから始まる異世界生活〜異世界転移した勇者なのに誰も拾ってくれませんから、ダンジョン攻略しちゃいます〜へなちょこ勇者の成長記

KeyBow
ファンタジー
突然の異世界転移。いきなりダンジョンに放り出された。女神と契約し、生きる糧を得る為にダンジョンに挑む。転移し、ダンジョンに挑む。転移してから2日目から物語はスタートする。朴念仁なのに周りには美人が集まる?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。

しろいるか
恋愛
子爵家の経済支援も含めて婚約した私。でも、気付けばあれこれ難癖をつけられ、悪役令嬢のレッテルを貼られてしまい、婚約破棄。あげく、実家をすべて乗っ取られてしまう。家族は処刑され、私は義母や義妹の奴隷にまで貶められた。そんなある日、伯爵家との婚約が決まったのを機に、不要となった私は神様の生け贄に捧げられてしまう。 でもそこで出会った神様は、とても優しくて──。 どん底まで落とされた少女がただ幸せになって、義母たちが自滅していく物語。

処理中です...