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第5話前半 この花咲くや道 その1

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護持の元町にみんなが集まったあの夜から数週間が経っていた。
この間に、比呂乃を取り巻く環境は、変化のスピードを速め、なかには現実のことなのかと思うような奇跡もあるが、反面、まだ遅々として進まず、あれは一体何だったのかと思うことも度々あった。
朝早く、比呂乃は思い立って、浅間神社にやって来た。
目覚めてカーテンを開けたら、梅雨にもかかわらず、今朝は爽やかな青空が広がっていたからだ。
浅間神社は、木花佐久夜姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)を御祭神と祀る神社である。コノハナサクヤヒメは、火難除け、安産・子安のほか、海上安全などの御神徳があり、桜の花の語源でもある。
最近こちらにお参りする機会を得て、本殿の奥にある富士塚も含め、特別なものを感じるようになっていた。富士塚には、太郎坊や天狗や神猿の石像まであるようで、7月に入って開山するのを心待ちにしている。
この浅間神社の辺りでは、大正4年(1915年)線路が開通し、門前に江古田駅を受け入れた時、千川通りからの参道は惜しくも中断することになったようである。参道のあった頃の風景は今となっては想像もできない。
ただ、この年11月に大正天皇即位の大礼があり、これを祝うように千川上水の堤を改修し、櫻と楓を植樹したということを神社の記録から知ることができた。
その上、驚いたことに、比呂乃が千川上水について知ったばかりの頃、消えたと勘違いしていた千川通りの櫻並木の植樹の記念碑が、浅間神社の境内の桜の樹の脇に移動されていたのを目にすることができた。
確かにここほどこの記念碑の引っ越し先にふさわしい場所もなかったのであろう。
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