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第2話 ナズナの愛の二重らせん その2
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日も暮れ、バータイムが始まった頃、比呂乃とは昔馴染みの真智子がやってきた。
静岡から友人のみづえが訪ねてきて、二人で食事をした後だという。
真智子にはこの春、孫ができた。
みづえの方も今年、少し先んじて孫に恵まれたらしい。
比呂乃は、二人にマンハッタンというカクテルを勧めた。ウィスキーとベルモットをステアし、レッドチェリーを飾ったカクテルである。このチェリーがマンハッタンの夕陽を思わせるということから名付けられたものらしいが、全体の色調が比呂乃の好きな茜空に確かに似ていた。
「信じられないよ。私たちおばあちゃんだよ。」みづえが言った。
「ほんと。それも同じ時期に。」真智子が答える。
二人は、幼馴染で幼稚園から高校までずっと一緒だったらしい。
乾杯をして二人はカクテルに口に運んだ。
みづえはグラスをカウンターに戻し、大袈裟にふーっと気持ちよく息を吐きながら、
「1週目やり終えましたって感じよ。」と言った。
「ほんと、そうね。
でも、ほんと、孫ってカワイイわ。」
みづえが大きく頷いて同意した。
真智子は満ち足りた微笑を浮かべながら、二人のグラスを眺めていたが、
「さくらんぼ二つ並んでかわいいね。
私が考えた孫の名前ね。チェリーに似た名前なのよ。」
「え、そうなの?
なんてお名前?」とみづえが促した。
「ちえりと名付けたの。
…真智子の智と、娘の梨恵の恵と…。りは何だと思う?」
「ん~、高句麗の麗?」ひょうきん者のみづえは外しにかかった。
「ややこしいわ!」と真智子から芸人風にツッコミを入れられ、みづえは
「だって、あなた中学時代、高句麗がやけに好きだったじゃない?
あと、高校時代は茶屋四郎次郎だよ。」
「あははっ!茶屋四郎次郎さん。懐かしい響き!久しぶりに聞いたわ!」
二人は二人だけが分かる当時の空気を懐かしみ、はしゃいでいる。
次に、みづえは当てにいった。
「理科の理?」
真智子が首を横に振る。
比呂乃が
「利益の利、うううん、福利の利かしら?」
「そう、さすがママ。福利ってのもいいわね、私たちの想いは利他の利のつもり。」
みづえが言った。
「ふ~む。お智慧を他人(ひと)に活かす子供かー。いい名前だよー。」
「うん。家族みんなが賛成してくれたんだ。」
「うんうん。」みづえと比呂乃は深く頷き、新しい生命と注がれる確かな愛情とに寄り添った。
静岡から友人のみづえが訪ねてきて、二人で食事をした後だという。
真智子にはこの春、孫ができた。
みづえの方も今年、少し先んじて孫に恵まれたらしい。
比呂乃は、二人にマンハッタンというカクテルを勧めた。ウィスキーとベルモットをステアし、レッドチェリーを飾ったカクテルである。このチェリーがマンハッタンの夕陽を思わせるということから名付けられたものらしいが、全体の色調が比呂乃の好きな茜空に確かに似ていた。
「信じられないよ。私たちおばあちゃんだよ。」みづえが言った。
「ほんと。それも同じ時期に。」真智子が答える。
二人は、幼馴染で幼稚園から高校までずっと一緒だったらしい。
乾杯をして二人はカクテルに口に運んだ。
みづえはグラスをカウンターに戻し、大袈裟にふーっと気持ちよく息を吐きながら、
「1週目やり終えましたって感じよ。」と言った。
「ほんと、そうね。
でも、ほんと、孫ってカワイイわ。」
みづえが大きく頷いて同意した。
真智子は満ち足りた微笑を浮かべながら、二人のグラスを眺めていたが、
「さくらんぼ二つ並んでかわいいね。
私が考えた孫の名前ね。チェリーに似た名前なのよ。」
「え、そうなの?
なんてお名前?」とみづえが促した。
「ちえりと名付けたの。
…真智子の智と、娘の梨恵の恵と…。りは何だと思う?」
「ん~、高句麗の麗?」ひょうきん者のみづえは外しにかかった。
「ややこしいわ!」と真智子から芸人風にツッコミを入れられ、みづえは
「だって、あなた中学時代、高句麗がやけに好きだったじゃない?
あと、高校時代は茶屋四郎次郎だよ。」
「あははっ!茶屋四郎次郎さん。懐かしい響き!久しぶりに聞いたわ!」
二人は二人だけが分かる当時の空気を懐かしみ、はしゃいでいる。
次に、みづえは当てにいった。
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「ふ~む。お智慧を他人(ひと)に活かす子供かー。いい名前だよー。」
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