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第1話 こぶしの花におかえりなさい その5
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静かな通りから、自転車のブレーキ音がキーッと聞こえた。桜並木から猫でも飛び出したのか。そしてそれきりまた静かになった。
いろんなことが世界中で起こってしまって、誰もが安心な居場所を失くした感じ。
夜中に頭を冷やしに、ふらふら散歩することさえはばかられてしまう。
歩きながら自由に物思うことや、深く呼吸すること、夜空の星を数えることは、人間にとって、とても尊い作業のはずだ。
「女はひとりになる時間が大切よ。分け与える為には、特にね。リンドバーグさんの奥さんが言うてはったわ。」
面白く聞こえるように比呂乃は話した。
「いつ頃どこの国のこと?」
「100年くらい前の、アメリカよ。」
「比呂ちゃん、近所の奥さんのことのように。」
二人は穏やかに微笑み合った。
リンドバーグ夫人の言葉を借りるなら、私たちは島であり、二人は、少しの間の歓談の時を超え、それぞれの豊かな島の姿にかえったのであろう。
比呂乃は悠然と微笑みながら、ガゼルだったら、リンドバーグ夫人が居た頃のアメリカのことも知っているに違いないと、ふと思った。
第1話 おしまい
第1.5話につづく
いろんなことが世界中で起こってしまって、誰もが安心な居場所を失くした感じ。
夜中に頭を冷やしに、ふらふら散歩することさえはばかられてしまう。
歩きながら自由に物思うことや、深く呼吸すること、夜空の星を数えることは、人間にとって、とても尊い作業のはずだ。
「女はひとりになる時間が大切よ。分け与える為には、特にね。リンドバーグさんの奥さんが言うてはったわ。」
面白く聞こえるように比呂乃は話した。
「いつ頃どこの国のこと?」
「100年くらい前の、アメリカよ。」
「比呂ちゃん、近所の奥さんのことのように。」
二人は穏やかに微笑み合った。
リンドバーグ夫人の言葉を借りるなら、私たちは島であり、二人は、少しの間の歓談の時を超え、それぞれの豊かな島の姿にかえったのであろう。
比呂乃は悠然と微笑みながら、ガゼルだったら、リンドバーグ夫人が居た頃のアメリカのことも知っているに違いないと、ふと思った。
第1話 おしまい
第1.5話につづく
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