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ラスト・コンテクスト Part1

大文字の夜に(22)

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揉みくちゃになっているララとオクルスと違い、ツヅキは気づいた。
“鍵”の向こう、地面が一閃の薄く白い光によって区切られている。

暗黒山脈ソレ自体が此度の争奪戦に呼応して示す、“中腹”の境界線だとツヅキは悟った。
何としても“鍵”を手にしなければならない。ココで手にした者がそのまま、“中腹”を越境するだろう。

ツヅキは決意したが、背後に蒸気の熱が迫る。
ララとオクルスはお互いのためにアズールを停止していたが、その熱と推進エネルギーはまだ充分だった。

その慣性が、三人を包み込む。
ツヅキは衝撃を感じた。
伸ばした手と“鍵”が、境界線の直前で蒸気に覆い隠された。


◇◇◇


カップは“重力の壁”を解除した。

「アレ? いいの?」

カオルが問いかける。

「え、ええ。も、もう充分にじ、時間は稼がせていただきました。す、すみません……」

「いや、別に謝ってもらうコトはないかな。そういう闘いだったしね。お疲れ様!」

カオルの竹を割ったような性格に、カップは面食らった。
遠藤は立ち上がり、服についた土を払う。

「後は、デル・ゾーネかパクスかU.J.Iか……はたまたヴェルメロスかだね。“鍵”を手にするのが」

「ヴェルメロス、ですか?」

龍之介が問いかけた。
彼の記憶では、ヴェルメロスの一行は遥か後方にいるハズだった。

「ああ、龍之介殿。あ~、さてはもう勝敗が決したと思って、警戒を緩めてたな~」

「も、申し訳ありません……」

「すみません、遠藤殿。私も……」

童仙も手を挙げる。

「まったく、目の前に集中しすぎるのは勝負好き故のサガだね。ヴェルメロスの……ララさんとオクルス君だったかな。二人が猛スピードで飛んで行くのが見えたよ」

「「マジ!?」」

「うわっ! ビックリした!」

カオルの後ろの薮から声と共に、人影が飛びだした。
レインスとアルマージュだ。

アルマージュはレインスに肩を貸している。
二人は戦闘態勢に入るでもなく、普通に皆に歩み寄った。

「アイツら、まだ良い感じで闘(や)ってんのか!?」

「というか、何この感じ!? もう休戦?」

アルマージュとレインスは立て続けに皆に疑問をぶつける。
カオルが二人を促した。

「まあまあ、お二人さんももう一旦座って休みなよ。勝負はしゅーりょー。少なくとも私たちはね」

「どういうこった?」

続けて、童仙が話す。

「もう私たち以外は、遥か先で“鍵”の王手争いをしているトコロですよ。私たちはココで、実に良い勝負をしましてね。結果、“鍵”どころではなくなってしまいました」

ハハハ、と童仙は笑った。
カップが恥ずかしそうに帽子を被り直す。

「へえ、あの子がねえ」

レインスはカップを見て、呟いた。
カオルが皆に言う。

「まあ、ちょっと休んで、結果を見に行きましょう。ずっとじっとしてても仕方ないしね」

「手をお貸ししますよ」

「おっ、ありがとー。アルマージュのヤツ、労りもクソもなくてさあ。貴方の名前は?」

「龍之介です」

「よろしくー」

レインスが龍之介に手を差しだす。
二人が握手をした。

「おっけ、俺たちもシェイクハンドだ。アルマージュだ」

「遠藤二十。よろしくね」

カップと童仙、カオルはその光景を見つめ、そしてお互いを見合った。

「いやー、一足早く終わってこうなるなら、良かったね」

「そ、そうですね」

「勝負終わって禍根無し。幕の引き始めとしては、申し分ないですね」
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