244 / 270
ラスト・コンテクスト Part1
大文字の夜に(17)
しおりを挟む
カップとツヅキを、ムサシの弾丸が襲う。
ソレらをメイは弾いて、先に進んでいく2人を守っていた。
「クソっ、行かれちまうぜ」
「わかってるわ。でも、この壁だってもう長くはもたない」
焦るムサシに、ジュディが話す。
壁はその強度をいよいよ失い始めたのか、虹色に揺らぎだした。
「お嬢さま、そろそろですかね?」
「ええ。持ちこたえてくれてありがとう」
カップとツヅキは何とか、ムサシの弾丸の射程距離からでられたようだった。
弾丸の標的が、改めてメイに変わる。
メイはその弾丸を弾きながら後退し、ウィーと背中合わせの状態になった。
「準備はいい?」
「あいあいさー、ですぅ」
くるりと回転し、背中合わせの二人が入れ替わった。
『100℃弾』のメイが、ウィーの壁に魔力をぶつけた。
◇◇◇
先を行くツヅキとカップの背後から、強風が吹き過ぎた。
思わずツヅキは立ち止まる。カップが口を開いた。
「お、行われたみたいですね」
「……そうみたいだな」
樹々の向こうを振り返るが、その隙間から差し込む眩い光の他は何も見えない。
「メイとウィーが先に追いついてくれるコトを願うよ」
◇◇◇
「ぐぁっ……!」
龍之介は“壁”に吹き飛ばされていた。
いや、壁の向こう側の三ヶ国全員がそうだった。
「ぐっ……! 早くこの壁を破壊しないと!」
童仙が言う。
メイが壁に放った一撃で、壁は移動を開始したのだった。
そして、その壁に押しやられる形で、三ヶ国は後退していた。
「うああっ!」
龍之介が力を振り絞って剣戟を加える。
皆も呼応するかのように壁を攻撃した。
壁の移動が止まり、低音で鳴動したかと思うと、上の方から崩れ始めた。
数秒後には壁は虹色で半透明の瓦礫と化し、消えてなくなった。
三ヶ国全員が息を切らしている。
お互いへの攻撃を始める余裕もなかった。
しかしやがて一人、また一人と、デル・ゾーネの後を追って“鍵”へと歩み、走りだした。
◇◇◇
「やっと追いつけたわね」
ツヅキとカップが振り向く。
ボロボロのメイとウィーがソコにいた。
“壁”を動かすほどの魔力は、彼女らにもソレ相応の代償を強いたのだった。
「メイ!」
「ウィーさん!」
ツヅキらは駆け寄った。
「何してるの。戻らないで、先を急いでくれないと」
「何が『急いでくれないと』だ。自分らも一緒だ」
「そ、そうですよ」
カップがツヅキから降りようとする。
「大丈夫か?」
「え、ええ。み、皆さんと一緒にも、もう歩けます」
「走りますよぉ」
ウィーが傷だらけの顔で、意地悪そうにカップに言う。
「は、走れます!」
「じゃあ、もう少しだけ頑張りましょ。“鍵”まであと少しよ」
ソレらをメイは弾いて、先に進んでいく2人を守っていた。
「クソっ、行かれちまうぜ」
「わかってるわ。でも、この壁だってもう長くはもたない」
焦るムサシに、ジュディが話す。
壁はその強度をいよいよ失い始めたのか、虹色に揺らぎだした。
「お嬢さま、そろそろですかね?」
「ええ。持ちこたえてくれてありがとう」
カップとツヅキは何とか、ムサシの弾丸の射程距離からでられたようだった。
弾丸の標的が、改めてメイに変わる。
メイはその弾丸を弾きながら後退し、ウィーと背中合わせの状態になった。
「準備はいい?」
「あいあいさー、ですぅ」
くるりと回転し、背中合わせの二人が入れ替わった。
『100℃弾』のメイが、ウィーの壁に魔力をぶつけた。
◇◇◇
先を行くツヅキとカップの背後から、強風が吹き過ぎた。
思わずツヅキは立ち止まる。カップが口を開いた。
「お、行われたみたいですね」
「……そうみたいだな」
樹々の向こうを振り返るが、その隙間から差し込む眩い光の他は何も見えない。
「メイとウィーが先に追いついてくれるコトを願うよ」
◇◇◇
「ぐぁっ……!」
龍之介は“壁”に吹き飛ばされていた。
いや、壁の向こう側の三ヶ国全員がそうだった。
「ぐっ……! 早くこの壁を破壊しないと!」
童仙が言う。
メイが壁に放った一撃で、壁は移動を開始したのだった。
そして、その壁に押しやられる形で、三ヶ国は後退していた。
「うああっ!」
龍之介が力を振り絞って剣戟を加える。
皆も呼応するかのように壁を攻撃した。
壁の移動が止まり、低音で鳴動したかと思うと、上の方から崩れ始めた。
数秒後には壁は虹色で半透明の瓦礫と化し、消えてなくなった。
三ヶ国全員が息を切らしている。
お互いへの攻撃を始める余裕もなかった。
しかしやがて一人、また一人と、デル・ゾーネの後を追って“鍵”へと歩み、走りだした。
◇◇◇
「やっと追いつけたわね」
ツヅキとカップが振り向く。
ボロボロのメイとウィーがソコにいた。
“壁”を動かすほどの魔力は、彼女らにもソレ相応の代償を強いたのだった。
「メイ!」
「ウィーさん!」
ツヅキらは駆け寄った。
「何してるの。戻らないで、先を急いでくれないと」
「何が『急いでくれないと』だ。自分らも一緒だ」
「そ、そうですよ」
カップがツヅキから降りようとする。
「大丈夫か?」
「え、ええ。み、皆さんと一緒にも、もう歩けます」
「走りますよぉ」
ウィーが傷だらけの顔で、意地悪そうにカップに言う。
「は、走れます!」
「じゃあ、もう少しだけ頑張りましょ。“鍵”まであと少しよ」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!
天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。
焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。
一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。
コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。
メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。
男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。
トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。
弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。
※変な話です。(笑)
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
伯爵令嬢に婚約破棄されたので、人間やめました
えながゆうき
ファンタジー
うー、ダイエット、ダイエットー!
子爵家の庭を必死に走っている俺は、丸々太った、豚のような子爵令息のテオドール十五歳。つい先日、婚約者の伯爵令嬢にフラれたばっかりの、胸に大きな傷を負った漆黒の堕天使さ。髪はブロンド、瞳はブルーだけど。
貴族としてあるまじき醜態はすぐに社交界に広がり、お茶会に参加しても、いつも俺についてのヒソヒソ話をされて後ろからバッサリだ。どっちも、どっちも!
そんなわけで、俺は少しでも痩せるために庭を毎日走っている。でも、全然痩せないんだよね、何でだろう?
そんなことを考えながら走っていると、庭の片隅に見慣れない黒い猫が。
うは、可愛らしい黒猫。
俺がそう思って見つめていると、黒い猫は俺の方へと近づいてきた!
「人間をやめないかい?」
「いいですとも! 俺は人間をやめるぞー!!」
と、その場の空気に飲まれて返事をしたのは良いけれど、もしかして、本気なの!? あ、まずい。あの目は本気でヤる目をしている。
俺は一体どうなってしまうんだー!! それ以前に、この黒い猫は一体何者なんだー!!
え? 守護精霊? あのおとぎ話の? ハハハ、こやつめ。
……え、マジなの!? もしかして俺、本当に人間やめちゃいました!?
え? 魔境の森にドラゴンが現れた? やってみるさ!
え? 娘を嫁にもらってくれ? ずいぶんと地味な子だけど、大丈夫?
え? 元婚約者が別のイケメン男爵令息と婚約した? そう、関係ないね。
え? マンドラゴラが仲間になりたそうな目でこちらを見てる? ノーサンキュー!
え? 魔石が堅くて壊せない? 指先一つで壊してやるよ!
え? イケメン男爵令息が魔族だった? 殺せ!
何でわざわざ俺に相談しに来るんですかねー。俺は嫁とイチャイチャしたいだけなのに。あ、ミケ、もちろんミケともイチャイチャしたいよー?
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる