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ラスト・コンテクスト Part1
大文字の夜に(16)
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「大丈夫? カップ」
意識を取り戻しつつあるカップを抱き寄せ、メイが言った。
カップはゆっくりと目を開けると、メイを見た。
「す、すみません」
「何も謝るコトはないわ」
「むしろ、よくやってくれた」
ツヅキも親指を立てて、優しく微笑みながら言った。
ウィーはその光景を、顔を少し振り向かせて横目で確認すると、安堵して前に向き直った。
「この人数を、一人で塞ぎ止める気ですか?」
童仙が、透明の壁越しに声をかける。
「物理攻撃はムダですよぉ」
「攻撃によるでしょう?」
ノワールが壁に手をかざしながら言う。
「確かに。ソレに」
ムサシがそう言いながら、逆流銃を取りだす。
「コイツの弾丸には関係ないぜ」
ウィーは表情に動揺を一切見せなかった。
ココで引いてしまえば、精神的なモノに負うところも多い魔術の術式ごと、飲まれてしまうからだ。
「さあて、誰から試されますかぁ?」
「全員ね」
ジュディが答えると、壁の向こうの三ヶ国全員が構え、壁に攻撃を繰りだした。
確かに、直線的な物理攻撃は先程のカトリーヌやオクルスのように、反発して弾かれてしまう。
だが、特に南山城国の“切り裂く”剣戟。
コレは壁にそのままにダメージを与え、放ち手にも影響はなかった。
遠藤も「刃物は苦手なんだけど」と言いながら、小太刀を壁に振るう。
壁は即座に修復するとは言え、僅かに彼らの剣戟の方がその修復よりも早い。
また、パクスのノワールは自らの拳圧による真空で、ブレーズは声の波長を調整してぶつけるコトで壁を切り裂き始めた。
U.J.Iはフランシスが石と投げ方を工夫するコトで、壁に攻撃を加える。
ジュディはナイフを2本取りだすと、近接格闘術の応用と自らの“体質”を使って、素早く複数の斬撃を壁に与えていった。
「(ぐううっ……!)」
ウィーは壁が削られていくのを、我が身が切り裂かれるが如く感じた。
三ヶ国は全員『80℃弾』だった。速さと力を兼ね備えた攻撃が、容赦なく壁の厚みを奪う。
対して、ウィーは『100℃弾』だ。パワーでは遥かに彼らを上回っていたが、流石に数の暴力に対して圧倒されつつあった。
しかも、ムサシだけは逆流銃で直接デル・ゾーネの一行に攻撃を加えてくる。
メイがその弾丸を弾くが、端的に言ってデル・ゾーネは今、挟み撃ちの状態だった。
「マズいな……」
ツヅキが呟く。
カップはまだ魔術を行使できるほど回復していない。
そして、メイの“移動術”はもう使えそうになかった。
既に、カップを除く全員の身体が、先程の移動術のために内部から悲鳴を発しつつあったのだった。
「ツヅキくん、歩ける?」
「もちろんだ。そのぐらいの体力はまだある」
ツヅキはカップを抱きかかえた。
カップは赤面したが、ツヅキは思ったより軽いななどと考えていた。
メイは弾丸を弾きながら言った。
「先に進んでて」
「ああ」
意識を取り戻しつつあるカップを抱き寄せ、メイが言った。
カップはゆっくりと目を開けると、メイを見た。
「す、すみません」
「何も謝るコトはないわ」
「むしろ、よくやってくれた」
ツヅキも親指を立てて、優しく微笑みながら言った。
ウィーはその光景を、顔を少し振り向かせて横目で確認すると、安堵して前に向き直った。
「この人数を、一人で塞ぎ止める気ですか?」
童仙が、透明の壁越しに声をかける。
「物理攻撃はムダですよぉ」
「攻撃によるでしょう?」
ノワールが壁に手をかざしながら言う。
「確かに。ソレに」
ムサシがそう言いながら、逆流銃を取りだす。
「コイツの弾丸には関係ないぜ」
ウィーは表情に動揺を一切見せなかった。
ココで引いてしまえば、精神的なモノに負うところも多い魔術の術式ごと、飲まれてしまうからだ。
「さあて、誰から試されますかぁ?」
「全員ね」
ジュディが答えると、壁の向こうの三ヶ国全員が構え、壁に攻撃を繰りだした。
確かに、直線的な物理攻撃は先程のカトリーヌやオクルスのように、反発して弾かれてしまう。
だが、特に南山城国の“切り裂く”剣戟。
コレは壁にそのままにダメージを与え、放ち手にも影響はなかった。
遠藤も「刃物は苦手なんだけど」と言いながら、小太刀を壁に振るう。
壁は即座に修復するとは言え、僅かに彼らの剣戟の方がその修復よりも早い。
また、パクスのノワールは自らの拳圧による真空で、ブレーズは声の波長を調整してぶつけるコトで壁を切り裂き始めた。
U.J.Iはフランシスが石と投げ方を工夫するコトで、壁に攻撃を加える。
ジュディはナイフを2本取りだすと、近接格闘術の応用と自らの“体質”を使って、素早く複数の斬撃を壁に与えていった。
「(ぐううっ……!)」
ウィーは壁が削られていくのを、我が身が切り裂かれるが如く感じた。
三ヶ国は全員『80℃弾』だった。速さと力を兼ね備えた攻撃が、容赦なく壁の厚みを奪う。
対して、ウィーは『100℃弾』だ。パワーでは遥かに彼らを上回っていたが、流石に数の暴力に対して圧倒されつつあった。
しかも、ムサシだけは逆流銃で直接デル・ゾーネの一行に攻撃を加えてくる。
メイがその弾丸を弾くが、端的に言ってデル・ゾーネは今、挟み撃ちの状態だった。
「マズいな……」
ツヅキが呟く。
カップはまだ魔術を行使できるほど回復していない。
そして、メイの“移動術”はもう使えそうになかった。
既に、カップを除く全員の身体が、先程の移動術のために内部から悲鳴を発しつつあったのだった。
「ツヅキくん、歩ける?」
「もちろんだ。そのぐらいの体力はまだある」
ツヅキはカップを抱きかかえた。
カップは赤面したが、ツヅキは思ったより軽いななどと考えていた。
メイは弾丸を弾きながら言った。
「先に進んでて」
「ああ」
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