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南山城国(14)

暗黒山脈(37)

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「形勢は逆転しました! お覚悟を」

そう言いながら、龍之介はウィーに斬りかかり続ける。
ウィーは空中に固めた空間そのものでソレを受け止めるが、龍之介の刀は空間を切り裂きながら少しずつウィーに迫り始めていた。

「……勝負は最後まで諦めちゃあダメって、メイド長も仰ってたんですぅ」

そう言いつつも、ウィーは彼方に吹き飛んでいったメイが気になって仕方なかった。
ソレも、龍之介に押されている要因の一つだった。

ツヅキは全体を改めて、かつ急いで観察し直していた。

カップは変わらず遠藤を捕捉し、重力攻撃を仕掛けているが、その速度はいつも一歩遅れていた。
このまま持久戦が続けば、いつかはカップも消耗が限界にくるだろう。
だが、カップの不足を補足するための弾丸を放っても、遠藤の散弾に邪魔されてしまう。

対して、敵側の大将――カオルと、その横の剣士である童仙は、吹き飛んでいったメイを警戒し続けていた。
だが、メイ側に動きがない時間が長くなってきて、二人は他の二人の戦況に介入しようとし始めているのもわかる。
ツヅキとしてもメイが気になるトコロだったが、流石にメイの元に向かうのを許してくれる二人でもないだろう。

「コレしかないか……!」

ツヅキは、銃口を向けた。


◇◇◇


ツヅキの動きに最初に気づいたのは童仙だった。
構えは先程自らの刃をすんでのトコロで回避した少女――メイの飛んでいった方向に向いていたが、視界の端で捉えたツヅキの動きに、少し顔を向ける。

ツヅキは、ウィーと龍之介の方に銃を向けていた。

童仙の頭に最初に浮かんだのは、龍之介への注意ではなく、疑問だった。
龍之介とウィーの攻防はかなりの高速だ。

その高速の攻防の中、撃たれた者を強化する弾丸を、的確に味方に命中させるコトは至難の業だ。
彼――ツヅキは、自棄ヤケになりつつあるのか?

だが、龍之介とウィーの攻防関係を改めて把握し、童仙は気づいた。

その瞬間、ツヅキは二発の弾丸を続けざまに発射した。
弾丸はウィーの元へ。しかし、龍之介の攻撃を避けるウィーの方が、自らその弾丸の射線から外れてしまう。

「龍之介殿!」

童仙が叫んだ。
全員もその声に、意識が一瞬、ウィーと龍之介の方に向く。

弾丸二発は龍之介に着弾した。

カオルと遠藤は、事態の理解のために目まぐるしく脳を動かした。
審査弾? あの速度の二人に向けてイチかバチか? なぜ二発? 龍之介の方が強化される?

結果はすぐに訪れた。
ちょうどウィーの空間を何十回めに斬り抜けた龍之介の、次の一閃。
その速度が如実に落ちた。

いや、刀だけではなく、龍之介の身体のあらゆる速度が少し落ちた。
その刹那を、ウィーとツヅキは逃さなかった。

ツヅキは龍之介への二発の着弾を確認したと同時に、三発めを放っていた。
ソレは速度の落ちた龍之介に容易く命中する。

その命中のタイミングに合わせるように、ウィーは杖を振った。
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