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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(10)

接近遭遇(21)

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「マズいわね……!」

メイの声が、次の部屋への扉を開けた際に静止したままのゴーレムから伝わる。
残された二人もその言葉を心の中で反芻していた。 

ツヅキは必死に何かできないか考えようとするが、自分の無力さだけが答えとなって現れる。
と、カップがツヅキに触れた。いつの間にかカップはツヅキとは反対の方向を見つめており、ちょうど背中合わせのような形になった。

「……ツヅキさん、メイさんのトコロへ行ってください」

「どういう意味だ?」

「そのままです。ここは私が何とかします」

「……ソレを聞いたら余計に行けなくなるが」

「でも、時間がない、というヤツです」

ツヅキはカップの両手を見た。
右手は杖を持ってメイの方向に、左手は掌を開いて“落ちてきている”壁へ向けられている。
その両方が、震えていた。

カップの手の先、壁は静止している。
ツヅキはメイに叫んだ。

「メイ! そっちに何かいるんだろ!? どうなってる?」

「よくわかったわね! 無数の手が登ってきてたけど、震えながら止まってるわ。……カップが気づいたのね」

ツヅキが再びカップの方を向く。

「……わかりましたか? ツヅキさん。先に進んでください」

「待て。一緒に行けるはずだ」

「いいえ。魔術核に触れないと、次の扉への権利は手にできません」

「なら、尚更オレよりも……」

「ダメです。下から登ってきているモノが押さえられるのは私だけです。……アレの正体は『顔を見てはいけないもの』なんです。この忌み地に建てられた学校の地下に、幽閉された落とし児です」

「でも、核とやらは最初にこの扉に触れたオレになってるんじゃあないのか?」

カップはツヅキから背中を離すと、両手はそのままに、後ろ歩きでツヅキの前に出た。
二人が向き合う。

「正確には、部屋と部屋の境界線上に最初に出た人、です」

カップが微笑む。

「先に行って、メイさんに魔術回路に介入するように伝えてください。メイさんは回路を見つけるのは苦手と言ってましたが、誰かの手解きの上で介入するのは得意なハズです。私が手解きしますので、心を読むようにとも伝えてください。
この部屋自体や『見てはいけないもの』を何とかするのはムリだと思いますが、魔術核をツヅキさんから私に変更することは可能なはずです」
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