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United Japanese tea varieties of Iratsuko(9)
宙宇るす流逆(6)
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アサヒが両手をギュッと握る。
ムサシが背中を叩いて鼓舞した。
「大丈夫だよ。何かあったら俺たちがついてる。二人で揉みくちゃになるワケにもいかねえから、一緒には行ってやれねえが、何かあったら絶対に引き戻してやるよ」
「ああ。だから精一杯、息を吸い込んで行ってこい」
フランシスも勇気づけた。
二人を見て頷くと、アサヒはジュディの方を見上げた。
「コッチも貴方をサポートする準備はできてるわ! さあ!」
「わかりましたー!」
アサヒが滝壺に近づく。
波紋が通常とは逆に、滝の根元へと収束していた。
滝壺へ飛び込むと、アサヒは滝に近づいていった。
逆転している流れもあって、思ったより速く身体が吸い寄せられていく。
近づくと共に、水の中へ身体を引き込もうとする力も強くなっていった。
粘度の高い水に足を掴まれているかのような感覚が大きくなっていく。
少し余裕をもって、アサヒは息を吸い込んだつもりだった。
しかしソレに、思ったより余裕はなかった。
吸い込んだ直後、アサヒは水底に引き込まれ、揉みくちゃにされた。
そして急に上向きの力を感じ、無数の細かな泡で目の前が真っ白になったかと思うと、アサヒは滝の柱の中をエレベーターよろしく昇っていた。
ココまでは、激しい水の力に翻弄されていたとは言っても、アサヒの想定通りだった。
しかし、滝を昇る段で予期しないコトが起こった。
アサヒは滝が自動的に自分の身体を上まで運んでくれるモノだと思っていたが、滝はアサヒを排出するかのように横向きの力を、その身体に加え始めた。
ジュディやムサシ、フランシスら成人の身体ならば、ほとんど意識せず水をかいて、その横向きの力に抵抗できる。
しかしアサヒには難しかった。
アサヒは息苦しさにも急かされ、焦りながら水をかいた。
もうすぐ滝の頂上に到達するというのに、身体の半身が滝から出始める。
間に合わない! そう思った時、アサヒは自分の背中を強く引っ張る力を感じた。
その力はアサヒを滝の中に引き戻してくれた。
一瞬の後、アサヒは空中に放りだされた。
しかしその際にも、背中を押す力が働いて、アサヒを空中で動かしてくれた。
「おっと!」
アサヒは柔らかい衝撃を受け、自分がもう空中にいないコトに気づいた。
アサヒを両手で支えたジュディが、その顔を覗き込む。
「よくやったわね。もう大丈夫」
アサヒはその優しく慈愛深い、女神像のように整った笑顔にきらめくような安心感を与えられて一瞬泣きそうになったが、ぐっと堪えた。
「あ、ありがとうございます」
ジュディがアサヒを下ろす。
アサヒは崖の傍に近づくと、ムサシとフランシスに声をかけた。
「大丈夫でした! ありがとうございます!」
「何もしてねえよ! ムサシがおまじないをしてくれたぐらいだな!」
「どうやら効いたみたいで良かったぜ!」
アサヒは小首を傾げる。
ジュディはアサヒに気づかれないように、アサヒの背中にムサシが取りつけた、自らの分離した右手を磁力で回収した。
ムサシが背中を叩いて鼓舞した。
「大丈夫だよ。何かあったら俺たちがついてる。二人で揉みくちゃになるワケにもいかねえから、一緒には行ってやれねえが、何かあったら絶対に引き戻してやるよ」
「ああ。だから精一杯、息を吸い込んで行ってこい」
フランシスも勇気づけた。
二人を見て頷くと、アサヒはジュディの方を見上げた。
「コッチも貴方をサポートする準備はできてるわ! さあ!」
「わかりましたー!」
アサヒが滝壺に近づく。
波紋が通常とは逆に、滝の根元へと収束していた。
滝壺へ飛び込むと、アサヒは滝に近づいていった。
逆転している流れもあって、思ったより速く身体が吸い寄せられていく。
近づくと共に、水の中へ身体を引き込もうとする力も強くなっていった。
粘度の高い水に足を掴まれているかのような感覚が大きくなっていく。
少し余裕をもって、アサヒは息を吸い込んだつもりだった。
しかしソレに、思ったより余裕はなかった。
吸い込んだ直後、アサヒは水底に引き込まれ、揉みくちゃにされた。
そして急に上向きの力を感じ、無数の細かな泡で目の前が真っ白になったかと思うと、アサヒは滝の柱の中をエレベーターよろしく昇っていた。
ココまでは、激しい水の力に翻弄されていたとは言っても、アサヒの想定通りだった。
しかし、滝を昇る段で予期しないコトが起こった。
アサヒは滝が自動的に自分の身体を上まで運んでくれるモノだと思っていたが、滝はアサヒを排出するかのように横向きの力を、その身体に加え始めた。
ジュディやムサシ、フランシスら成人の身体ならば、ほとんど意識せず水をかいて、その横向きの力に抵抗できる。
しかしアサヒには難しかった。
アサヒは息苦しさにも急かされ、焦りながら水をかいた。
もうすぐ滝の頂上に到達するというのに、身体の半身が滝から出始める。
間に合わない! そう思った時、アサヒは自分の背中を強く引っ張る力を感じた。
その力はアサヒを滝の中に引き戻してくれた。
一瞬の後、アサヒは空中に放りだされた。
しかしその際にも、背中を押す力が働いて、アサヒを空中で動かしてくれた。
「おっと!」
アサヒは柔らかい衝撃を受け、自分がもう空中にいないコトに気づいた。
アサヒを両手で支えたジュディが、その顔を覗き込む。
「よくやったわね。もう大丈夫」
アサヒはその優しく慈愛深い、女神像のように整った笑顔にきらめくような安心感を与えられて一瞬泣きそうになったが、ぐっと堪えた。
「あ、ありがとうございます」
ジュディがアサヒを下ろす。
アサヒは崖の傍に近づくと、ムサシとフランシスに声をかけた。
「大丈夫でした! ありがとうございます!」
「何もしてねえよ! ムサシがおまじないをしてくれたぐらいだな!」
「どうやら効いたみたいで良かったぜ!」
アサヒは小首を傾げる。
ジュディはアサヒに気づかれないように、アサヒの背中にムサシが取りつけた、自らの分離した右手を磁力で回収した。
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