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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(9)

接近遭遇(9)

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「よ、いしょっと」

ツヅキがカップを向こう側から引っ張り上げる。
ツヅキの補助もあって、カップはすんなりコチラ側に移れた。

「あ、ありがとうございます。うぃ、ウィーさん! オッケーです!」

「は~い」

向こう側からウィーが返事をする。と

「うりゃ!」

ウィーは向こう側から、勢いよく飛び込んできた。
コチラ側に全身飛び出たかと思うと、重力でまた穴に落ち、行ったり来たりを繰り返して最終的には穴の中空で静止した。

「はえ~。面白いですねぇ!」

「無茶するなぁ……」

ツヅキがウィーも引っ張り上げる。

「帰りもやりたいですねぇ」

「ウィー、穴を閉めるわね」

メイがウィーの足元に近づく。
雑草を除けると、向こう側の天井を構成していたのと同じ石が、一つだけ露出した。
メイが石をタッチすると、付近の地面と草が揺れ動きながら穴を塞いだ。

「穴を塞がないと、向こう側にコチラの光が漏れたままになっちゃうから。ウィー、光のカーテンは解除してもらって大丈夫よ」

「もう塞がった時点でバッチシ、解除です」

ウィーがサムズアップで答える。

「しかし、割と広い空間だな」

ツヅキが頭上を見上げて言う。

彼らの入った空間は、縦に大きい円筒状の空間だった。
足元には雑草が生い茂り、壁は先ほどまでいた学校の廊下と同じく石で組まれている。しかし、学校のソレより白く見える石だった。
その石壁にも、低い部分にはツタが這っている。

天井はかなり高く、しかも天蓋は光り輝いて眩しかった。
そのため、天井が光っているのか、ソレとも吹き抜けなのか一瞬錯覚するほどだ。
尤も、この空間は城である学校の中二階、しかも時刻は夜なので、吹き抜けであるのは“通常の世界観”なら有り得ないとツヅキは判断したが。

一通り天を仰ぐと、目線を下げ、周りを見回した。

「んで」

「扉、でしょ。アレよ」

メイが指差す。
石壁の遥か上、ソレはあった。
周囲に馴染んだ地味な扉は、言われなければ簡単には見つけられそうもなかった。

「なるほど。じゃあ行くか」

「そうね。どうやってよね」

メイが壁に近づく。

「……やっぱり」

「どうした?」

「前にきた時は、この石を押すと」

メイが壁の石の一つを押し込む。
奥まで押し込むと、青い光が押し込まれた穴から漏れてきた。
メイが手を引く。一瞬置いて、石が元に戻った。

「この石を押すと、壁に沿って螺旋階段が出現するはずだった」

「なんで今は?」

「恐らく、私が学生じゃあないからよ」

「そういうものなのか?」

「“鏡”に至る三室は試練の間よ。学生なら優遇してくれるらしいんだけど、今やそうじゃあないわ」

「アトラクションの年齢制限かよ」
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