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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(3)

オートラグ口頭試問(2)

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「以上5か国、我らが『シュロッス・イン・デル・ゾーネ』、
『デル・ゾーネ』より北に位置する、科学技術大国『United Japanese tea varieties of Iratsuko』、
西南に位置する、サムライの国『南山城国』、
『U.J.I』も越えてさらに北、蒸気機関により独自の発展を遂げた『テラ・ドス・ヴェルメロス』、
そして『デル・ゾーネ』と『南山城国』に挟まれた、自然的理想主義国『バクエット・ド・パクス』。
それぞれに“ゼルテーネ”、『南山城国』の言葉で“まれびと”、その他の国の言葉で言えば“ザ・レア”、“ララ”、“ぺルソン・ラー”が召喚されたのが、今回の事象というわけだ」

ツヅキは、ヴァーシュ大法官から一連の話を聞かされ、目が回るようだった。
ただでさえ異世界というだけでも面倒なのに、さらに5か国が登場するときた。
ララの話をはいはい聞いているだけだった先ほどまでが、遠く霞むほどの情報量だった。

「で、その5か国がどこも“南蛮”とやらを制したがっていて、国の危機ってわけですね」

「そうだ」

どうやらこの世界では“国”って概念の規模というか重要度が、ちとデカいようだ、とツヅキは感じていた。
元の世界では国と言えば、極端な話消えたとしても大した問題じゃあなかった。消えた国には同情するが、代わりに誰かがそこに住むだけの話に過ぎない。

だがこの世界では、“国”というのはそれぞれがほぼ単一の“世界”という規模を意味しているようだった。しかも、そこに住んでる人の認識上の問題じゃあなく、物理法則的なレベルで。
だからこの異世界で“国の危機”は、前の世界での“隕石の衝突”レベルのことなのだ。“国”の崩壊は、“世界”が崩壊するレベルの事象。

でなければ何故この“世界”自体が、わざわざ異世界から人を5人も呼び寄せるようなマネをしてみせる?

「それで、俺の役割はなんなんですか?」

「その言葉を待っていた。しかしすぐには答えられない。次は貴公が“口頭試問”に答えるべき順番だからだ」

ああ、そうだったね。

「ええっと……じゃあお願いします」

「では、まず貴公の元いた世界にある、著名な魔導書について話してもらいたい」

ツヅキは動揺した。そんな一般常識的に聞かれても、だ。
しかし、ヴァーシュは微笑んだ。

「わかっておる。口頭試問において、口を司るのは私だけだ。貴公には頭で答えてもらう。故に“口頭”試問なのだ。
私の左隣にいるこの男が、貴公の無意識の記憶を読み取る。人は興味がなくとも、無意識に物を認識し、記憶しているものだ」

ヴァーシュの隣の男が、ヴァーシュに囁く。

「なるほど。貴公の世界では『ネクロノミコン』と『ヴォイニッチ手稿』が著名な魔導書なのか。素晴らしい」

ツヅキには、どちらも初めて聞く名前のように思われた。

「では次だ。魔術回路において重要な右脳について、貴公の元いた世界ではどの程度、解明が進んでいるかね?」
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