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グリーン先生2回目の授業

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 ハースのいるクラスで、2回目の授業だった。
 グリーンは、少々重苦しい気持ちで教室に向かう。

 実はあの授業のあと、ハースが教員室にやって来たのだ。
 アリスに連れられて。
 アリスは授業後に、ハースを説教してくれたらしい。
 周りの教師たちがアリスの成長を褒め称えていたので、昔はどうやらこんなフォローはなかったらしい。グリーンは過去の洗礼を受けた教師たちに、同情を禁じ得なかった。

 そしてその場で、ハースから授業をきちんと受ける、とのお詫びをもらった。

 前回と打ってかわって、ハースは前を向いていた。
 だが、グリーンは、奇妙な気分で授業を進めた。

 ハースの視線に、いやに熱気を感じるのだ。それに、熱心にノートを取っている。他の先生の話から、ハースが本当にノートを取らなくても理解しているのはわかっている。だが、今は熱心にノートを取っている。

 真面目に授業を受けていると言っていいだろう。だが、何だか居心地がひどく悪かった。何しろ、ハースの視線が常にグリーンに向けられているのだ。

 授業が終わると、ハースの視線がようやく外れて、グリーンはホッと息つく。
 ずっと見られているという妙なプレッシャーがあった。
 
 グリーンが片付けをしていると、ハースがノートを持ってやってきた。
「先生。ノートをとったことがないんですが、このように書けば大丈夫でしょうか」
 ハースの質問に、グリーンはなんだか胸が熱くなった。今までノートを取ってこなかったハースが、グリーンのことをきっかけに変わる。
 教師として、嬉しい瞬間だ。

「ノートの取り方は人それぞれだからな。自分が分かりやすい方法でとればいいんだ。だが、せっかくだから、見せてくれ」
 グリーンはノートを開いた。
 その瞬間、ハースの視線が熱かった理由を理解した。
 
 ノートには、グリーンの言ったこと、やったことが、事細かに書かれていた。
 昨日見たハースの手帳のようだった。
 そう、ノートはまるで、グリーンの観察日記だった。

 グリーンはノートをそっと閉じると、ハースに渡した。
「君は、ノートを取らなくても大丈夫だと思うよ。少なくとも、私の授業はノートは不要だろうね」

 グリーンはあんな居心地の悪い視線を感じながら、延々と観察日記をつけられるなんて、ごめんだった。
 グリーンはそこで初めて、ハースから延々と観察され続けているアリスを尊敬した。

 このハースのねちっこい観察に耐え、更にハースの気持ちを動かすことのできる人間は、きっとアリス以外にはいないだろう。
 
 グリーンは、ハースの勉強のしかたについては二度と口を出すまいと誓った。
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