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「魔法の花を見つけてみせます!」
 
 そう宣言したのは、昨日のこと。
 ”魔法の花”の在処は、知っている。
 ――と思っていたけど、小説で具体的に説明されていたわけじゃなかったのを思い出した。

「リヴィア様、一体何を考えているのですか?」

 ぼんやりしている私に、デジャヴなセリフを吐いたのは、ペラジー・ジェローム侯爵令嬢。
 アンリエット様の取り巻きの一人だ。
 最近は、いきなりアンリエット様に近づいてきた私を警戒してか、アンリエット様と私がいる時には近づいてもこないけど。

「何、とは?」
 
 言いたいことは分かったけど、ペラジー様とはあまり話したくなかった。

「アンリエット様に取り入って、何がしたいのかしら? 下賤なヒトの考えることは、本当にわからないわ。殿下の寵愛を受けるのも、体を使ってるくらいだものね?」

 ペラジー様も、リヴィアをいじめた罪で、『学園の恋花』では断罪されていた一人だ。
 このペラジー様は、本当に意地が悪いことしか言わない。
 そもそも私と殿下の噂に尾ひれがついたのは、このペラジー様の発言によるものが大きいと思っている。
 殿下と私に体の関係などないのに!
 前世の記憶を取り戻すまでの私は、さめざめ泣くしかなかったんだけど。

「申し訳ありません。私には、高貴な方のおっしゃることは、理解できないのです。失礼します」

 否定したって、また違う悪口を言われるだけだ。
 こういうのは、相手にしないに限る。

「待ちなさい。貴方みたいな、身持ちの悪い相手が、殿下の相手をするなんて許せないのよ!」

 頬に痛みが走る。
 ペラジー様の顔が、真っ赤に興奮していた。
 ……ペラジー様は単純に、アンリエット様の取り巻きとして怒ってるんじゃなかったんだ?
 
「殿下のことをお慕いされているんですね?」
  
 頬を押さえたまま尋ねると、ペラジー様がギラギラと私を睨む。

「あの素晴らしい殿下を慕わない令嬢なんていませんわ!」
 
 いますけどね。

「ペラジー様は、殿下の婚約者になりたいんですね?」
「な、何を言っていますの?! あ、アンリエット様に不敬よ!?」

 先ほど、怒りで赤らんでいた顔が、耳から赤く染まっていく。
 あ。
 馬鹿殿下の婚約者に、ペラジー様ってぴったりかもしれない。
 身分も、私の満足度も。
 殿下とペラジー様の物語は読みたいとは思わないけど。

 魔法の花が見つからなかったときの保険として、ヒロインをペラジー様にすり替えるって、アリかも。
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