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「義姉上、一緒に頑張りましょう」
ティエリがふわりと私を抱きしめる。
「ティ、ティエリ。こんなことをしてはダメよ」
ティエリに抱きしめられたのは、ダンスの練習以外では多分初めてだ。
しかも、庭木に遮られているとは言え、外!
離れたところにしか使用人がいないからこんな話ができてたわけだけど。
だけどこの状態を誰に見られても、困る気しかしない。
焦る私に、ティエリがクスリと笑う。
「どうしてですか?」
ティエリは一向に私を抱きしめた手を緩めようとしない。
天使は無邪気にやってるだけなんだろうけど、色々とダメなんだって!
「ダメだからよ」
カチャリと庭に面した扉が開いた音がして、余計に焦る。
「ティエリ坊ちゃま。このような姿を見られたら、変な噂が広まってしまいますわ」
庭に出てきたのは、ミリッツァだった。
多分色んな意味で邪魔をしてくれてるんだけど、今は正直有難い。
「そうよ」
私はコクコクと頷く。
「変な噂とは、どんな噂ですか?」
純粋な視線をミリッツァに向けたティエリに、ミリッツァが小さく息を吐く。
「ティエリ坊ちゃまは知らなくてもよいのです。ほら、お嬢様から手を離してください」
ミリッツァの手が、私に触れる。
『皇太子も唆した上にティエリ坊ちゃまも誘惑するなんて、性格も悪い上に阿婆擦れって、救いようがないわね。それにしても、皇太子もティエリ坊ちゃまも、こんな女に騙されるとか頭が悪いわ』
流れ込んできた本音に、奥歯をギリっと噛む。
私のことはどれだけ悪く言われたっていい。
皇太子のことも、どう言われたって、私には関係のないことだし。
だけど、ティエリのことを悪く言われるのだけは、許しがたい。
「ティエリを悪く言わないで」
つい声が漏れる。
『何?!』
「義姉上?」
不思議そうなティエリに、ハッとする。
心の声なんて、他の誰にも聞こえるわけがないのに。
「お嬢様。何を言っているのですか? 私が坊ちゃまのことを悪く言うことなどあり得ません」
『よくよく考えれば、こんな性格の悪い女に懐いてるティエリ坊ちゃまは、本当は頭がわるいのかもしれないわね。こんなんじゃ、ミストラル伯爵家も坊ちゃまの代で終わりかもしれないわ』
「ミリッツァ。貴方、自分では感情を上手く殺してるつもりかもしれないけれど、長い付き合いの私には、貴方の考えていることが手に取るようにわかるのよ。今、ティエリを蔑んだでしょう?」
「お嬢様、何をおっしゃっているのです?」
『ちょっと。この女、何を言い出したの?! 私の完璧な演技が、バレるわけがないわ!』
ミリッツァは変わらずに笑顔を張り付けている。
「私への態度は、全部演技だものね。私、知っているのよ。私がこの怪我をした原因が、貴方だってこと」
私の言葉に、ミリッツァが一瞬だけ表情を変える。
だけど、それは一瞬だけだった。
「何をおっしゃっているのです? お嬢様の怪我は、事故ではありませんか」
『ドレスに細工をしたこと、バレるわけがないわ。あのドレスも処分してしまったし』
ミリッツァは余裕の表情だ。
「ド」
「ドレスに細工をしたのは、君だったんだね。ミリッツァ」
私の言葉を、ティエリが奪った。
ティエリは私からミリッツァの手を離すと、私を隠すようにその前に立つ。
予想外の発言に、私も驚いているけど、ミリッツァも明らかに動揺している。
ティエリがふわりと私を抱きしめる。
「ティ、ティエリ。こんなことをしてはダメよ」
ティエリに抱きしめられたのは、ダンスの練習以外では多分初めてだ。
しかも、庭木に遮られているとは言え、外!
離れたところにしか使用人がいないからこんな話ができてたわけだけど。
だけどこの状態を誰に見られても、困る気しかしない。
焦る私に、ティエリがクスリと笑う。
「どうしてですか?」
ティエリは一向に私を抱きしめた手を緩めようとしない。
天使は無邪気にやってるだけなんだろうけど、色々とダメなんだって!
「ダメだからよ」
カチャリと庭に面した扉が開いた音がして、余計に焦る。
「ティエリ坊ちゃま。このような姿を見られたら、変な噂が広まってしまいますわ」
庭に出てきたのは、ミリッツァだった。
多分色んな意味で邪魔をしてくれてるんだけど、今は正直有難い。
「そうよ」
私はコクコクと頷く。
「変な噂とは、どんな噂ですか?」
純粋な視線をミリッツァに向けたティエリに、ミリッツァが小さく息を吐く。
「ティエリ坊ちゃまは知らなくてもよいのです。ほら、お嬢様から手を離してください」
ミリッツァの手が、私に触れる。
『皇太子も唆した上にティエリ坊ちゃまも誘惑するなんて、性格も悪い上に阿婆擦れって、救いようがないわね。それにしても、皇太子もティエリ坊ちゃまも、こんな女に騙されるとか頭が悪いわ』
流れ込んできた本音に、奥歯をギリっと噛む。
私のことはどれだけ悪く言われたっていい。
皇太子のことも、どう言われたって、私には関係のないことだし。
だけど、ティエリのことを悪く言われるのだけは、許しがたい。
「ティエリを悪く言わないで」
つい声が漏れる。
『何?!』
「義姉上?」
不思議そうなティエリに、ハッとする。
心の声なんて、他の誰にも聞こえるわけがないのに。
「お嬢様。何を言っているのですか? 私が坊ちゃまのことを悪く言うことなどあり得ません」
『よくよく考えれば、こんな性格の悪い女に懐いてるティエリ坊ちゃまは、本当は頭がわるいのかもしれないわね。こんなんじゃ、ミストラル伯爵家も坊ちゃまの代で終わりかもしれないわ』
「ミリッツァ。貴方、自分では感情を上手く殺してるつもりかもしれないけれど、長い付き合いの私には、貴方の考えていることが手に取るようにわかるのよ。今、ティエリを蔑んだでしょう?」
「お嬢様、何をおっしゃっているのです?」
『ちょっと。この女、何を言い出したの?! 私の完璧な演技が、バレるわけがないわ!』
ミリッツァは変わらずに笑顔を張り付けている。
「私への態度は、全部演技だものね。私、知っているのよ。私がこの怪我をした原因が、貴方だってこと」
私の言葉に、ミリッツァが一瞬だけ表情を変える。
だけど、それは一瞬だけだった。
「何をおっしゃっているのです? お嬢様の怪我は、事故ではありませんか」
『ドレスに細工をしたこと、バレるわけがないわ。あのドレスも処分してしまったし』
ミリッツァは余裕の表情だ。
「ド」
「ドレスに細工をしたのは、君だったんだね。ミリッツァ」
私の言葉を、ティエリが奪った。
ティエリは私からミリッツァの手を離すと、私を隠すようにその前に立つ。
予想外の発言に、私も驚いているけど、ミリッツァも明らかに動揺している。
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