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だから②
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クリスティアーヌとの婚約破棄を決めたと、ノエリアに告げると、ノエリアは涙ながらに私を止めた。
「公爵家令嬢であるクリスティアーヌ様の方が、国母としてふさわしいに違いありません。庶子である私がそれに取って変わるなど、許されることではありません。他の貴族も、きっと反対しますわ。どうか、どうか、ファビアン様、考え直していただけませんか? ファビアン様が他の方々から批判されるなど、私、耐えられませんわ」
あまりのいじらしさに、私はノエリアを抱きしめた。
「そんな批判など、ノエリアのすばらしさを知れば、口になどしなくなるはずだ」
それでも、ノエリアは激しく首を横に振る。
「いけませんわ。私は、少しも、ファビアン様の足かせになどなりたくないのです」
「ノエリアが足かせになるわけがないだろう? だから、はい、と頷いておくれ」
私の言葉に、それでもノエリアは頷いてくれなかった。
私は頑固なノエリアに囁く。
「ノエリアは、私と一緒にいたくないのかな?」
ノエリアは涙にぬれた瞳を私に向けると、それにも大きく首を振った。
「そんなわけはありませんわ! 私は、私は、ファビアン様を心からお慕いしているのです!」
「それならば……」
「ダメですわ。……許されるわけがありませんもの……。ただ……」
ノエリアが、ゆっくりと目を伏せる。
まつ毛に、涙が光っていて、愛おしさがこみ上げる。
「ただ、何かな?」
「一つだけ、わがままを言わせていただけるのであれば、もう少しだけ、お傍にいることを許していただけないでしょうか? ファビアン様が私に思い出を下されば、ファビアン様のお傍にいられなくなっても、これからも耐えていけると思いますの……」
私の心は、すでに決まっている。
いや、今の言葉で、確固たるものになった、と言えるのかもしれない。
「ノエリアを国母にすることを厭う貴族の話など、聞く必要などない。ノエリア、私は決めたんだよ。ノエリアを国母にすると」
ぎゅっとノエリアを抱きしめると、ノエリアは顔を私の胸につけたまま、また首を振った。だが、先ほどよりも弱弱しい否定だった。
「私と共に人生を歩んでくれないか、ノエリア。ノエリアの素晴らしさは、私が一番わかっている。その素晴らしさは、この国をもっともっと豊かにするものだよ。……だから、一緒にこの国を豊かにしていかないか?」
ノエリアの視線が恐る恐る上を向く。
「私で、許されるのでしょうか?」
ノエリアの言葉に、私は笑う。
「ノエリア以外は許されないよ。ノエリアだから、許されるんだよ。だから、私と一緒に、この国のために生きていってくれないか?」
ノエリアの目じりから、頬に涙が一筋伝っていく。
「私が、ファビアン様の力になれるのなら、力になりたいです」
「ノエリアしか、私の力にはなりえないよ」
私はノエリアを抱きしめる手を離すと、跪いた。
そして、国母に伝わる指輪を、ノエリアに差し出す。
「ノエリア、私と共にこの国のために歩んでくれないか?」
指輪を見て目を丸くしていたノエリアが泣き笑いの表情になる。
「だめ、かな?」
ノエリアが小さく首を振る。そして、私をじっと見つめる。
「はい」
頷くノエリアを、私はまた抱きしめた。
「幸せになろう。私たちも、そして国民も」
私の言葉に応えるように、ノエリアが私を抱きしめ返してくれた。
素晴らしい国づくりの第一歩は、間違いなく、愛し愛される伴侶と出会う、それだと思う。
だから今、私はその一歩目を、ようやく手に入れたのだ。
「公爵家令嬢であるクリスティアーヌ様の方が、国母としてふさわしいに違いありません。庶子である私がそれに取って変わるなど、許されることではありません。他の貴族も、きっと反対しますわ。どうか、どうか、ファビアン様、考え直していただけませんか? ファビアン様が他の方々から批判されるなど、私、耐えられませんわ」
あまりのいじらしさに、私はノエリアを抱きしめた。
「そんな批判など、ノエリアのすばらしさを知れば、口になどしなくなるはずだ」
それでも、ノエリアは激しく首を横に振る。
「いけませんわ。私は、少しも、ファビアン様の足かせになどなりたくないのです」
「ノエリアが足かせになるわけがないだろう? だから、はい、と頷いておくれ」
私の言葉に、それでもノエリアは頷いてくれなかった。
私は頑固なノエリアに囁く。
「ノエリアは、私と一緒にいたくないのかな?」
ノエリアは涙にぬれた瞳を私に向けると、それにも大きく首を振った。
「そんなわけはありませんわ! 私は、私は、ファビアン様を心からお慕いしているのです!」
「それならば……」
「ダメですわ。……許されるわけがありませんもの……。ただ……」
ノエリアが、ゆっくりと目を伏せる。
まつ毛に、涙が光っていて、愛おしさがこみ上げる。
「ただ、何かな?」
「一つだけ、わがままを言わせていただけるのであれば、もう少しだけ、お傍にいることを許していただけないでしょうか? ファビアン様が私に思い出を下されば、ファビアン様のお傍にいられなくなっても、これからも耐えていけると思いますの……」
私の心は、すでに決まっている。
いや、今の言葉で、確固たるものになった、と言えるのかもしれない。
「ノエリアを国母にすることを厭う貴族の話など、聞く必要などない。ノエリア、私は決めたんだよ。ノエリアを国母にすると」
ぎゅっとノエリアを抱きしめると、ノエリアは顔を私の胸につけたまま、また首を振った。だが、先ほどよりも弱弱しい否定だった。
「私と共に人生を歩んでくれないか、ノエリア。ノエリアの素晴らしさは、私が一番わかっている。その素晴らしさは、この国をもっともっと豊かにするものだよ。……だから、一緒にこの国を豊かにしていかないか?」
ノエリアの視線が恐る恐る上を向く。
「私で、許されるのでしょうか?」
ノエリアの言葉に、私は笑う。
「ノエリア以外は許されないよ。ノエリアだから、許されるんだよ。だから、私と一緒に、この国のために生きていってくれないか?」
ノエリアの目じりから、頬に涙が一筋伝っていく。
「私が、ファビアン様の力になれるのなら、力になりたいです」
「ノエリアしか、私の力にはなりえないよ」
私はノエリアを抱きしめる手を離すと、跪いた。
そして、国母に伝わる指輪を、ノエリアに差し出す。
「ノエリア、私と共にこの国のために歩んでくれないか?」
指輪を見て目を丸くしていたノエリアが泣き笑いの表情になる。
「だめ、かな?」
ノエリアが小さく首を振る。そして、私をじっと見つめる。
「はい」
頷くノエリアを、私はまた抱きしめた。
「幸せになろう。私たちも、そして国民も」
私の言葉に応えるように、ノエリアが私を抱きしめ返してくれた。
素晴らしい国づくりの第一歩は、間違いなく、愛し愛される伴侶と出会う、それだと思う。
だから今、私はその一歩目を、ようやく手に入れたのだ。
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