魔法学無双

kryuaga

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第一章 駆け出し冒険者は博物学者

#46

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迷宮ダンジョンを、「そとこの世界せかい常識じょうしき」ではかることに意味いみはない。いわんや「前世ちきゅう常識じょうしき」をや。

「ダンジョンをれば世界せかいることが出来できる(かもしれない)」とおもっていたが、それは流石さすがおもがりというべきものだったようだ。

それでも、常識じょうしきまえてダンジョンをてみると、それはそれで結構けっこう面白おもしろい。

たとえばこの『おに迷宮ダンジョン』。第一だいいちから第九だいきゅうまでの階層かいそうと、第十一だいじゅういち第十二だいじゅうに階層かいそうは、あたかも人工建造物じんこうけんぞうぶつのような様相ようそうていしている。道具どうぐ使つか小鬼ゴブリンにとっては最適さいてきなフィールドというべきだろう。また第十だいじゅう階層かいそうさえぎるもののない平原へいげんかずたのみとするゴブリンの、やはり独擅場どくせんじょうだ。

一方いっぽう第十三だいじゅうさん階層かいそうから、自然物しぜんぶつのような外観がいかんわる。

第十三だいじゅうさん階層かいそうは、高温多湿こうおんたしつ熱帯雨林ジャングル

第十四だいじゅうよん階層かいそうは、湿地帯しっちたい

第十五だいじゅうご階層かいそうは、石灰質せっかいしつ鍾乳洞しょうにゅうどう

第十六だいじゅうろく階層かいそうは、岩肌いわはだ洞窟どうくつ

第十七だいじゅうなな階層かいそうは、見通みとおしのわる岩山いわやま

だがこの構造こうぞうに、人為じんい(というより何者なにものかの意思いし)をかんじるのは所為せいだろうか?

第十二だいじゅうに階層かいそうまではそこを主戦場しゅせんじょうとするゴブリンにとって都合つごういように。

第十三だいじゅうさん第十四だいじゅうよん階層かいそうは、豚鬼オークにとって、第十六だいじゅうろく第十七だいじゅうなな階層かいそう中鬼ホブゴブリンにとって、都合つごういように設計せっけいされているようながする。……第十五だいじゅうご階層かいそうだれにとって有利ゆうり戦場せんじょうなのか、いまいちからないのだが。

生物せいぶつ魔物まもの魔蟲まちゅう魔獣まじゅうとう)も、その地形ちけい相応ふさわしいモノがうごめいている。

なやまされたのは、第十三だいじゅうさん階層かいそうホーネット第十四だいじゅうよん階層かいそうひる第十五だいじゅうご階層かいそう蜥蜴リザードである。とくひるは、ここまでると魔蟲まちゅうなのかただむしなのかからないが、おおきさは指先ゆびさきサイズのものからにぎこぶしだいのものまで、かずも1ぴきから数百すうひゃく数千すうせん群体ぐんたいまで、様々さまざまだった(【群体操作ぐんたいそうさ】をためしたいともおもわなかった)。結局けっきょく松明たいまつ一匹いっぴきずつ焼払やきはらうのが、一番単純いちばんたんじゅん対処法たいしょほうだった。

なお蜥蜴リザードどくっているが、どくけば食用しょくようる。毒抜どくぬきが面倒めんどうなのと生理的嫌悪感せいりてきけんおかんから、このんでべるひとすくないそうだが。

◇◆◇ ◆◇◆

第九だいきゅう階層かいそうまでは暗闇くらやみなかだったが、第十だいじゅう階層かいそう以降いこうはダンジョン全体ぜんたいあかるい。

第十だいじゅう第十三だいじゅうさん第十四だいじゅうよん第十七だいじゅうなな各階層かくかいそう天井自体てんじょうじたいあかるく、ひるのよう。

第十一だいじゅういち第十二だいじゅうに第十五だいじゅうご第十六だいじゅうろく各階層かくかいそうは、一定間隔いっていかんかく光源こうげんがあり、視界しかい確保かくほろうはない。
 第十五階層の鍾乳洞しょうにゅうどうではっきり確認かくにん出来たのだが、その照明しょうめいはクリスタルしついし純粋じゅんすいひかっているものだった。これは、『水晶すいしょう火魔法ひまほう封入ふうにゅうして魔石ませき燃料ねんりょうにする』魔法照明まほうしょうめい同質どうしつのものとかんがえられる。使つかみちがあるかもしれないと、鍾乳洞がくらくなりぎない程度ていど回収かいしゅうすることにした。

 十三階層じゅうさんかいそう以降いこうは、予定よてい地質調査ちしつちょうさおこな余裕よゆうつくれた。

 とはいっても、前世ぜんせおれもそれほど地質ちしつくわしいわけではない。だから知識ちしきより、無属性魔法むぞくせいまほうLv.2【群体操作ぐんたいそうさ】で既知きち金属きんぞく誘導ゆうどうすることで、それらが存在そんざいすることを確認かくにん出来る程度ていどだろう。

 発見はっけん出来た面白おもしろ金属きんぞくは、以下いかとおり。

 第十三階層……とくになし。

 第十四階層……泥炭ピート

 第十五階層……石灰岩せっかいがん砂金さきん神聖金オリハルコン微量びりょう)・照明石しょうめいいし仮称かしょう)。

 第十六階層……石炭せきたん神聖金剛石アダマンタイト

 第十七階層……とくになし。

 砂金さきんとオリハルコン、石炭せきたんとアダマンタイトがおな場所ばしょから発見はっけんされたことは、おれ仮説かせつ神聖金属しんせいきんぞく通常金属つうじょうきんぞく魔力同位体まりょくどういたい)を裏付うらづける証拠しょうこひとつとえるかもしれない。

 特にアダマンタイトは、事実上じじつじょう鉱床こうしょう』のかたち発見はっけん出来た。それも石炭鉱せきたんこう表層ひょうそう部分ぶぶん板状いたじょうに|アダマンタイト化していたのだ。これの事実じじつひとつをってしても、「石炭鉱せきたんこう表層ひょうそう高濃度こうのうど魔力まりょく長時間ちょうじかんさらした結果けっか、アダマンタイトが生成せいせいされた」と主張しゅちょうすることが出来できるとおもわれる。

 なおこのダンジョン内だんじょんない石炭せきたんは、おれ所有しょゆうする炭鉱たんこう石炭せきたんくら硬度こうどたかい。あと比較分析ひかくぶんせき余地よちがあろう。また泥炭ピートは「もっとしつわる石炭せきたん」とわれるが、酒造さけづくりに使つかわれるというはなしいたこともある。もしかしたらなにかに使つかえるかもしれない。

 これらも当然とうぜん、〔無限インベン収納しゅうのうトリー〕の容量無限ようりょうむげんいことに、採掘さいくつ出来るだけ採掘さいくつしましたが、なにか?

◇◆◇ ◆◇◆

 ほか冒険者ぼうけんしゃたちは、第十二階層だいじゅうにかいそうまでは時々ときどきかけたが(こえをかけたりすることはほとんどない。すれ違ちが場合ばあい挨拶あいさつする程度ていど)、第十三階層だいじゅうさんかいそうからはまったなくなった。

 とはいっても第十三階層だいじゅうさんかいそう第十四階層だいじゅうよんかいそう見通みとおしがわるく、かりほか冒険者ぼうけんしゃがいたとしても(先日せんじつ女性冒険者じょせいぼうけんしゃたちエミリーたちのように)大声おおごえげなければかないだろう。そして密林みつりん湿地帯しっちたいというのは意外いがい五月蠅うるさいから、自然騒音しぜんそうおん戦闘音せんとうおんはかなりちかくでなければ区別くべつがつかないものだ。

 さら第十五階層だいじゅうごかいそう第十六階層だいじゅうろくかいそうでは、おれ自身じしん|ダンジョン攻略こうりゃくほうったらかして趣味しゅみ邁進まいしんしていたから、おれ敵意てきいけない相手あいてのことなどどうでもかった。
 そして第十七階層だいじゅうななかいそう

 ここでは血糊ちのりのついた布切ぬのきれや、れた武具ぶぐなどがつかることがあった。ふるいものからそれなりにあたらしいものまで。つまり、このあたりが最前線フロントラインだったのだろう。

 一方おれほうは、出現しゅつげんする魔物まものたいして、もはや問題もんだいなく対処たいしょ出来できるようになっていた。

 オークや|ホブゴブリン相手あいてでは、残念ざんねんながら一撃いちげき仕留しとめられることは、ほとどない。

 が、『一撃ワンターン必殺キル』が通用つうようする相手あいてにしかてない、というのは「自分じぶんよわい」とっているようなもの。戦闘せんとうは、てき攻撃こうげきけ、自分じぶん攻撃こうげきて、ダメージを蓄積ちくせきさせていって最終的さいしゅうてきたおすものである。つまり、ようやくまともな戦闘せんとう出来できるようになった、というわけだ。

 オークをあしらうのはそれほどむずかしくないが、ホブゴブリンはゴブリンの上位種じょういしゅだけあってあたままわる。こちらの戦術せんじゅつみ、こちらのうごきにたいして先手せんてってさくつぶしにかかる。

 けど、ゴブリンほどさくたよ真似まねはしない。単体戦闘力たんたいせんとうりょく防御力ぼうぎょりょく自信じしんがある所為せいか、小賢こざかしい真似まねをするくらいなら正面しょうめんからかえす、というおとこらしい性質せいしつっている。また集団戦時しゅうだんせんじには組織立そしきだったうごきをすることもすくない。

 だから、それらがすきになる。

 相手あいて一体いったいときは、むしろ正面しょうめんからみダメージを蓄積ちくせきさせる。

 相手あいて複数ふくすうときは、ほかのホブゴブリンをたてにして同士討どうしうちをねらうつもりで翻弄ほんろうする。

 戦闘せんとう時間じかんがかかり、非常ひじょう神経しんけい使つかうが、それでも不意ふいかれないかぎけることはない、と自信じしんてるようになってから、第十八階層だいじゅうはちかいそうりることになった。
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