転生したらぼっちだった

kryuaga

文字の大きさ
上 下
25 / 72
第一章 はじまり

#21

しおりを挟む


 ダンジョンの地下十二階、いくつもある小部屋のうちの一つに、小型の影結界『安息の影球』を張って仮眠を取ろうとしていた時だ。護は複数の気配を察知した。



 その小部屋に来るとは限らないが、いつでも戦闘に移れる体勢を取る。

 少しして気配の主たちが人族の冒険者だと気付いたが、だからといって何もないとは言い切れない、結界の中で息を潜めながら警戒を続ける護。



 すると護に気付いたわけでもないだろうが、冒険者達は護のいる小部屋に入って中を確認した。



「……うん。ここなら大丈夫そうかな。皆、今夜はここで夜営するよ!」



 声の主が中に入る事で、三人の冒険者が続く。全員女で構成されたパーティーのようだ。



「シエーヌは結界お願い。クシーは一応部屋の中に罠が無いか確認して。レーナは私と夜営の準備ね」



 最初に入ってきた女性がリーダーなのだろう、次々とメンバーに指示を与える。



 さて、ここで困るのが護である。彼女達は護に気付く事無く異物を内側に入れたままやや大きめの結界を張ってしまった。これではこっそり逃げる事も出来ない。

 気付かれていないのは僥倖だろう。プラチナランク並の隠身と、魔力と時間をかけて高い隠密性を持つように作った影結界のおかげだ。……むしろ最初に気付いてもらえていれば気を遣って別の部屋に移動しただろうが。



(うう……、どうしよう)



 今更声をかけるわけにもいかず、最終的に、気付かれてないならこのまま隠れておこう。と、方針を決めた護だったが、



「ふー、汗気持ち悪ーい」



 などと言いながら、盾剣士がはだけた服の隙間から汗を拭いだす。支援術師が光球を出しているが、光量は必要最低限だ。大事な部分は見えていないが、薄暗い中、汗にてかる彼女の肌が護の目にはひどく淫靡に見えた。



 ここで改めて言っておくが、護は童○だ。職場に女性はいても歳を食った主婦ばかり、現実で若い女性の肌など間近で見れるはずもないし、そういった店に入る度胸もない。

 地球では一人暮らしで、いつでもパソコンを使ってアレな画像を見て一人で性欲を処理する事もできた。

 こちらに来てからは強くなる事に熱中していた事もあり、今まであまり性欲を感じていなかったが、ここにきて目の前でこれだ。ついつい夢中で凝視してしまっても仕方ない、と思ってあげて欲しい。



「――!? 誰だっ!」



 夢中になるうちに気配がもれてしまったのだろう、宝掘師に気付かれてしまう。



「なっ! 敵!?」「きゃっ!」「え、なに?」



 女性達は宝掘師の視線の先から距離を取って各々の武器を構える。護は我に返って気配を消しなおすが、今となっては手遅れだ。



「そこにいんのは分かってんだ! とっとと出てきやがれ!」



「いるのなら今のうちに出てきたほうが身のためよ。さもなければ……」



 護の存在を確信して叫ぶ宝掘師に対して、リーダーは半信半疑ながらも槍斧を構えて警告する。こうなれば結界から出て行くしかない。と護は覚悟を決めて呼びかける。



「ま、待ってください。今出ますから!」



 自らの結界を解除し、薄明かりの中に姿を現した護に彼女達は驚愕する。



「嘘、こんな近くにいて気付かないなんて……!?」「なっ! いつからあそこに!?」「今の結界、すごく高性能……」「……! こいつっ!」



 慌てて弁解しようとする護だったが、その前に汗を拭っていた盾剣士が騒ぎ出す。



「この変質者っ! ずっとあたし達の事覗いてたんでしょ! 変態! 覗き魔術師!!」



 ずっとではないが、覗いていたのは事実だ。女性に罵倒された事で心に大ダメージを受けた護は咄嗟に謝ることもできず、盾剣士は斬りかかろうとするが、リーダーに止められる。



「待ってレーナ。こうして出てきたわけだし、一応話を聞いてみないと」



「でもイーシャ!! こいつ……!」



「落ち着いて、あんまり騒ぐとモンスターが寄って来るかもしれないわ」



「くっ……! ……ちょっとでも妙な動きをしてみなさい! その首叩っ斬ってやるんだから!」



 護は盾剣士の剣幕に慌てて頷くことしかできない。そこにリーダーが警戒はそのままに問いかけてくる。



「それであなた、一人なの? ほかの仲間は?」



「あ、えっと……仲間はいません、俺一人だけです」



「嘘ついてんじゃないわよ! ダンジョンに一人で潜る馬鹿なんているわけないでしょ!」



 正直に答えたのだが、またも盾剣士に大ダメージを与えられる。疑いの目が深まるも、支援術師がある噂を思い出した。



「……あ、待って。そういえば一人で潜り続ける影魔術師の噂、聞いた事無かった?」



「あれは単なる噂じゃないの? ……あなたが噂の影魔術師? 答えて」



「う、噂ですか?それが俺かは分かりませんけど、ダンジョンにはずっと一人で潜ってます」



 確かに護の事は噂になっているが、ギルド内で会話する相手がラーニャしかいない護が噂を聞くには、他人の会話を拾う以外に手段がない。そう都合よく自分の噂を知っているはずが無いのだ。



「(……クシー、周囲に人の気配はする?)」



「(…………いや、今のところ何も感じない。でも、こいつにも最初気付けなかったし、油断はできないかも)」



「(そう……)あなたは何者? いつからこの部屋にいて、何をしていたの?」



「あ、お、俺はマモル、シルバーランクの冒険者です。あなた達が来る一時間くらい前からいました。ここにいたのは仮眠を取るためです」



 ゆっくりと懐からギルドカードを取り出し、プロフィールを表示させてかざす。



「……間違いはない、みたいね。出来れば私達が部屋に入った時に声をかけてくれればよかったんだけど。一人でダンジョンに潜るくらいだし、そういうわけにもいかないか」



「イーシャ! こんな怪しいヤツを放っておくの!?」



 なんとかリーダーの理解は得られたようだが、盾剣士は納得できないようでリーダーに食って掛かる。



「そうはいっても、ここから地上までずっと連れ歩くわけにもいかないし、怪しいってだけで始末するわけにもいかないわ。拘束だけして放置するのも同じことよ。……夜営地については仕方ない、別の場所を探さないといけないわね」



「……っ! 覚えてなさいっ!! 覗き魔術師!」





 盾剣士にガンをつけられるも、あれよあれよという間に彼女達は撤収して部屋を出て行ってしまった。護はなんとなく部屋に居心地の悪さを感じるが、溜め息交じりに結界を張りなおし、短い眠りに就くのだった。







もうやめて盾剣士!護のライフはゼロよ!



かっこいい厨二二つ名をつけられる前に、不名誉なあだ名をつけられる護君でした。

複数人の性格とか考えるのに中々難航しました、後会話も。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

処理中です...