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23 私を探してください~前編~
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『私を探してください』
白い紙にこの言葉だけ。封筒にも入っていないそれは、ある日、ポストの中にポツン、と入っていた。
その日の朝は、ダイニングで3人揃って手紙の読解を始めた。
「なんでしょうか、これ…」とルシアは深く考えている。
「ふっ、ただの悪戯だろ。そんなのに取り合っている暇はない」
「そうでしょうか。なんか探さないと気が済まない…」オリヴィアは言う。
「確かに。なにか気になりますね…」
「勝手にしろ。俺は知らん」
アンドレアは席を立ち、乱暴にダイニングの扉を閉め、出ていってしまった。
「ねぇオリヴィアちゃん?とりあえずこの手紙の事は様子を見ましょう。それから、考えることにしましょ?」
「うん…。そうだね」
何か気になる。
よくそういう手紙を置いて出ていく人がいる。でもそういう時は、『私を探さないでください』とかでは?
「はぁ、意味が分からない…」
オリヴィアは腑に落ちないままキッチンへ向かい、仕事を始めた。
〇〇〇
翌朝。
オリヴィアはいつものように6時に起きて、ポストへ向かった。
「ん?」
今日もあった。手紙だ。
『私はここにいます。
きっとそれは森の中?私は暗い部屋の中にいます。何もない、暗い部屋。風が吹く度、木の葉がカサカサとなるのです。だから、森なのでしょう。
彼が帰ってくる。またお手紙を出します。どうか、探し当てて。』
「これは、悪戯じゃないでしょう」ルシアが言う。
「そうですね。アンドレア様!探しましょうよ!」
「…断る」アンドレアはきっぱりとそう言った。
「それはないですよ!現にもしかしたら、今だって、その『彼』って人から何かされているかも…」
「そうですよ。アンドレア様、お願いです。どうかこのお方を助けたいのです。アンドレア様のお力をお貸しください」
「はぁ…。俺はまだ悪戯だと思っている。もしそれが本当で悪戯であってもいいのか?」
「「はい!」」
「…しょうがない。明日も手紙があるんだろうから、ポストを注意して見に行け。森、と言われても、この国には小さな森が沢山ある。動くのは明日の手紙が来てからだ」
「「ありがとうございます!!」」
オリヴィアとルシアは早速地下の書庫に行った。
そこでこの国の地図を見て、森を全てチェックした。
「森と言われても、どこなのか皆目見当もつかないわねぇ…」
「はい。片っ端から行くと言うのは、時間がかかりますしね…」
「そうねぇ。やっぱりアンドレア様の言う通りまた明日の手紙に懸けましょうか」
「はい…」
夜。オリヴィアは寝付けないでいた。
「心配だなぁ…」
昨日から心配だったのだけれど、昨日は少しまだ疑っていたからよかった。でも今日はどこにいるかまだ分からないけど、女性が確かに助けを求めてる。
どうにか探し当てて、介抱してあげたい。
結局オリヴィアは一睡もできなかった。
ふらふらしながらポストに向かう。
案の定手紙はあった。
『私がいるのはどこの森だろうか。鳥の鳴き声がずっとしている。
私の部屋は四六時中暗いから、鳥の鳴き声で朝が来たことを知る。
この手紙はね、この暗い部屋の、少し穴が開いている壁の所に、毎日来てくれる犬に運んでもらっているの。どこに運ばれているかは分からない。もしかしたらどこかに投げ捨てられているかもしれない。私はそれでも信じてこの手紙を書いている。
私は生憎この国を知らない。最近、この国に住みたくて、仕事を求めて、少し離れた国からやってきた。そのせいでどこにいるのか分からない。
あぁ、また彼が帰って来る時間。彼は大工をやっているみたい。毎日くぎを叩く音が聞こえる。
どうか、探し当てて。』
森。鳥の鳴き声。大工…。
この3つのキーワードにオリヴィアはなんとなく彼女がいる場所が分かってきた。
「アンドレア様、この国には大工の数が少ないですよね?どのくらいいましたっけ。特に、森の近くに家を持っている大工は、どのくらいいましたか」オリヴィアは聞く。
「えーと…」
アンドレアは住所録を手にして、大工を探した。
「ウチェッロ森の近くにファリーという大工がいる」
「ウチェッロ…。確かあそこは野鳥が沢山住んでいる、と聞いたことがあります…」ルシアが言う。
「確かに、私も聞いたことがある」
「もしかしたらウチェッロの中に小さな小屋があって、そこにいるのかもしれない」
「だったら行かないと!」
「…そうだな」
国王は、国民の命を無差別に奪う者、監禁をしたり、拷問を国民にさせた者を、処刑、という形で処罰する。 ーアレッサンドロ憲法 第5条
アンドレアは、剣を持った。ファリーと出くわしたときに殺してもいい、と憲法で決めたからだ。
オリヴィアも念のため、銃を持った。オリヴィアは護身のため、アンドレアから銃の扱い方を教えてもらっていたから、多分使えるのだろう。
ルシアは猟銃を持っていた。オネエのくせにすんげぇの持ってんな、とオリヴィアは思った。
「乙女じゃないの?」
「心はね。けど、身の危険を感じたらこれで一発パーン、よ。そん時はゴラァ!とかい言いながらやっちゃうかもね。うふ」
「うふ、じゃねぇよ」
とまぁこんな感じでウチェッロに向かうのであった。
白い紙にこの言葉だけ。封筒にも入っていないそれは、ある日、ポストの中にポツン、と入っていた。
その日の朝は、ダイニングで3人揃って手紙の読解を始めた。
「なんでしょうか、これ…」とルシアは深く考えている。
「ふっ、ただの悪戯だろ。そんなのに取り合っている暇はない」
「そうでしょうか。なんか探さないと気が済まない…」オリヴィアは言う。
「確かに。なにか気になりますね…」
「勝手にしろ。俺は知らん」
アンドレアは席を立ち、乱暴にダイニングの扉を閉め、出ていってしまった。
「ねぇオリヴィアちゃん?とりあえずこの手紙の事は様子を見ましょう。それから、考えることにしましょ?」
「うん…。そうだね」
何か気になる。
よくそういう手紙を置いて出ていく人がいる。でもそういう時は、『私を探さないでください』とかでは?
「はぁ、意味が分からない…」
オリヴィアは腑に落ちないままキッチンへ向かい、仕事を始めた。
〇〇〇
翌朝。
オリヴィアはいつものように6時に起きて、ポストへ向かった。
「ん?」
今日もあった。手紙だ。
『私はここにいます。
きっとそれは森の中?私は暗い部屋の中にいます。何もない、暗い部屋。風が吹く度、木の葉がカサカサとなるのです。だから、森なのでしょう。
彼が帰ってくる。またお手紙を出します。どうか、探し当てて。』
「これは、悪戯じゃないでしょう」ルシアが言う。
「そうですね。アンドレア様!探しましょうよ!」
「…断る」アンドレアはきっぱりとそう言った。
「それはないですよ!現にもしかしたら、今だって、その『彼』って人から何かされているかも…」
「そうですよ。アンドレア様、お願いです。どうかこのお方を助けたいのです。アンドレア様のお力をお貸しください」
「はぁ…。俺はまだ悪戯だと思っている。もしそれが本当で悪戯であってもいいのか?」
「「はい!」」
「…しょうがない。明日も手紙があるんだろうから、ポストを注意して見に行け。森、と言われても、この国には小さな森が沢山ある。動くのは明日の手紙が来てからだ」
「「ありがとうございます!!」」
オリヴィアとルシアは早速地下の書庫に行った。
そこでこの国の地図を見て、森を全てチェックした。
「森と言われても、どこなのか皆目見当もつかないわねぇ…」
「はい。片っ端から行くと言うのは、時間がかかりますしね…」
「そうねぇ。やっぱりアンドレア様の言う通りまた明日の手紙に懸けましょうか」
「はい…」
夜。オリヴィアは寝付けないでいた。
「心配だなぁ…」
昨日から心配だったのだけれど、昨日は少しまだ疑っていたからよかった。でも今日はどこにいるかまだ分からないけど、女性が確かに助けを求めてる。
どうにか探し当てて、介抱してあげたい。
結局オリヴィアは一睡もできなかった。
ふらふらしながらポストに向かう。
案の定手紙はあった。
『私がいるのはどこの森だろうか。鳥の鳴き声がずっとしている。
私の部屋は四六時中暗いから、鳥の鳴き声で朝が来たことを知る。
この手紙はね、この暗い部屋の、少し穴が開いている壁の所に、毎日来てくれる犬に運んでもらっているの。どこに運ばれているかは分からない。もしかしたらどこかに投げ捨てられているかもしれない。私はそれでも信じてこの手紙を書いている。
私は生憎この国を知らない。最近、この国に住みたくて、仕事を求めて、少し離れた国からやってきた。そのせいでどこにいるのか分からない。
あぁ、また彼が帰って来る時間。彼は大工をやっているみたい。毎日くぎを叩く音が聞こえる。
どうか、探し当てて。』
森。鳥の鳴き声。大工…。
この3つのキーワードにオリヴィアはなんとなく彼女がいる場所が分かってきた。
「アンドレア様、この国には大工の数が少ないですよね?どのくらいいましたっけ。特に、森の近くに家を持っている大工は、どのくらいいましたか」オリヴィアは聞く。
「えーと…」
アンドレアは住所録を手にして、大工を探した。
「ウチェッロ森の近くにファリーという大工がいる」
「ウチェッロ…。確かあそこは野鳥が沢山住んでいる、と聞いたことがあります…」ルシアが言う。
「確かに、私も聞いたことがある」
「もしかしたらウチェッロの中に小さな小屋があって、そこにいるのかもしれない」
「だったら行かないと!」
「…そうだな」
国王は、国民の命を無差別に奪う者、監禁をしたり、拷問を国民にさせた者を、処刑、という形で処罰する。 ーアレッサンドロ憲法 第5条
アンドレアは、剣を持った。ファリーと出くわしたときに殺してもいい、と憲法で決めたからだ。
オリヴィアも念のため、銃を持った。オリヴィアは護身のため、アンドレアから銃の扱い方を教えてもらっていたから、多分使えるのだろう。
ルシアは猟銃を持っていた。オネエのくせにすんげぇの持ってんな、とオリヴィアは思った。
「乙女じゃないの?」
「心はね。けど、身の危険を感じたらこれで一発パーン、よ。そん時はゴラァ!とかい言いながらやっちゃうかもね。うふ」
「うふ、じゃねぇよ」
とまぁこんな感じでウチェッロに向かうのであった。
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