グリモワールな異世界転移

クー

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第一章 全ての始まり 『種族の集まる国 ガイア』

第五十八話 『ユウのデート日和な日常 イプシー編』

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「俺の初デートは異世界でした……………なんかラノベのタイトルぽいな。なんてアホな事を考えてる場合じゃないな。はぁ、張り切りすぎて早く来すぎたかな? ヤッパリ、デートってなると色々と張り切っちゃうよな?」


 俺(メガネver)は集合時刻の30分前行動をしてしまった事に対して意味のない同意を誰かに求めていた。つまり、今日のユウは動揺していた。それは俺が結婚をして、嫁が二人もいると言うのにデートはしたことがない、と希少な存在な為だ。

 俺の気持ちが落ち着かないまま、時間は経ち、集合時刻ピッタリにイプシーは来た。


「待ちましたか? ユウ」

「…………………」

「ユウ? どうかしましたか?」

「え? いやどうもしてないんだ。ただ…………」

「ただ?」

「イプシーが可愛かったから見とれてた」

「え、え? か、可愛い!? 本当ですか?」

「あぁ、可愛いぞ。いつもと違ってスカートだし。うん。良く似合ってるぞ!」


(少しスカートの丈が短すぎるような気もするけど……でもイプシーのスカートと言うのは新鮮だな。いつもは絶対にスカートなんて穿かないのに。俺の為………なのかな?)


「そ、そう? ありがとう、ユウ」


 イプシーは顔を赤くしながら目線を逸らす。俺はそのイプシーのしぐさで自分も恥ずかしくなり、話を変えた。


「で、今日は何処に行くんだ? 何処か行きたい所とかは?」

「あたしはねー………買いものに行きたいの!」

「そうか、買いものかー…………ならさっそく行くか?」

「うん!」


 俺は買いものが気兼ねなく出来る場所に移動した。



 ──今俺達のいる場所はなんと言うか色々な店が並んだ商店街みたいな場所だ。そこで、イプシーが服を選んでいる。


「ねぇ、ねぇ、ユウどっちがいい?」

「右の方が似合うと思うぞ」

「だったら、右のにするね」

「もう買うのか?」

「うん! ユウが似合うって言ってくれたのを買うよ~」

「そうか、だったら──」

「え? ユウ?」


 俺はイプシーの持っていた服を預かり店員の所に持っていき金を払った。


「ユウ…………ありがとう」

「別にいい。俺はこれでも一国の主だからな。大事な人が欲しいと言ったもの位、買ってやりたいさ」


 俺はそう言って買ってあげた袋を手渡す。


「本当にありがとう、ユウ。大事にするね」

「また、服が欲しかったら俺が買ってやるさ」


 そう言って俺はイプシーの頭を撫でた。イプシーは嬉しそうに目を細めた────



 服選びに結構な時間を使い、昼になり、イプシーの腹の虫の自己主張が激しくなったので、昼飯を食うことにした。ちなみに腹が鳴っている時のイプシーの顔は真っ赤で………凄く可愛かった。


(まぁ、イプシーの事は可愛いと思うし好きなんだけど恋愛感情の好き。と、言う訳では無いんだよな。なんて言うか、妹……的な意味での可愛い、好きって感じで。まぁ、恋愛感情の意味で妹の事を好きな人はいるかもしれないが、俺はそっちではないから、ヤッパリなんか違うんだよな。)


 俺はそんな事を思っていると、頼んでいた料理が運ばれて来た。料理の見た目はパスタみたいで味も似ている。イプシーも同じものを頼んだようだが、味付けが違う。なんと言うかスパゲッティとミートソースパスタみたいな感じだ。


「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」


 俺は挨拶をして、食べ始めた。それに続いてイプシーも食べる。


「ユウ」

「ん? なんだ?」

「ユウが食べてるの一口貰ってもいい?」

「あぁ、別にいいぞ」

「ありがとう! あの、ユウが食べさせて」


 イプシーはそう言って目をつぶり、小さな口を開ける。


(え、まさかこれって噂に聴く、カップルが大衆の面前で恥ずかしげもなくやると言う『はい、あーん』と呼ばれるものか!?)


 俺は緊張で手が震えそうなのを押さえながら、「はい、あーん」と言いながらイプシーに食べさせてあげた。


「うん。おいしい! じゃあ、食べさせてくれたお返しに」

「え? 俺はい───」

「はい、あーん」


 断ろうとしたが、イプシーは俺に自分の料理を食べさせようとしてくれる。


(これは腹を括るしかないな。)


「あ、あーん」

「────どう? おいしい?」

「うん。おいしいよ」

「そう、良かったー」


 イプシーは笑った。俺はその笑顔に吸い込まれそうになる。それくらい魅力的な笑顔だった。



 ………………そんなユウとイプシーの様子を観察する人影が3つあった───


「あーんしてるー。いいなー、ボクもしたいなー。されたいなー」

「しっ! ライムちゃん。あんまり大きい声だしたら気付かれるでしょ」

「そう言うスカーレットも声が大きくなってるぞ、今はユウとイプシーの尾行に集中するんだ。妾達の目的を忘れたのか?」

「そ、それはユウ様とイプシーがいい感じになってその………しないか見張るんでしょ」

「そうだ。だったら、そんな話をしている場合じゃないぞ」

「そうね。ごめんなさいシャーミア」


 と、三人が話していると


「ちょっとソコの、もしかして女の子三人だけ? だったら、俺達と遊ぼうぜ、大丈夫心配しないでも悪いことはしないから」

「いや、あの………」

「お兄さん達、誰?」

「ほら、一緒に行こうぜー」


 ナンパ男達はスカーレットの手を掴んだ。


「きゃぁ!」

「おいお前ら、俺の連れに何か用か?」


 すると、そこにユウが現れてスカーレットを掴んだ手を取り捻りあげた。


「痛てててて、お前なんだよ! この子達の何なんだよ!?」

「スカーレットとライムの婚約者で、シャーミアの恋人だが、何か文句あるか?お前こそ、誰の許可を取って俺のスカーレットの手を触ってるんだ?誰の許可を取って俺の大切な人達にその汚い声を聞かせてるんだ? そんなに死にたいのか? だったら俺の大切な人達の目の届かない所で勝手に死んでくれ」


 俺は隠しもしない殺気で周りを満たす。ナンパ男達はその殺気だけで、俺の事を恐れ怒りなんて起きるはずもなく、恐怖で顔を蒼白にさせていた。


「分かったら俺の前から消えろ。そして、二度と顔を見せるな」

「は、はひぃ! わ、分かりました!!」


 一目散に逃げるナンパ男達。だが、逃がして貰えただけ、マシな方だろう。俺の自分で自覚している性格、人柄からすると、大切な人達を傷つけられそうになっただけでその場で殺していたかもしれない。今回殺さなかったのは至極単純で人の目があったから…………

 訳ではなく、自分の大切な人達に自分が人を殺戮するところ見せて血や死体の所為で気持ち悪くなったりしたらいけないと言う、配慮をしたからだ。

 こんな極端な性格になったのには勿論理由があるのだが、その事はまた何処かで分かるときがくるだろう。


「大丈夫だったか? 皆」

「あ、ありがとう。ユウ様」

「でも、ユウはなんで、妾達がいるって分かったんだ?」

「最初から俺とイプシーの事を尾行していただろ?」

「気づかれていた、と言う訳か」

「で、なんで俺とイプシーの事をつけていたんだ?」

「そ、それは妾達は────」

「ボクもご主人とデートしたかったの!!」

「ラ、ライムちゃん! 違うでしょ」

「そ、そうだぞライム! 妾達は───」

「え? でもボクはご主人とデートしたいよ。ねぇ、ご主人」

「あぁ、俺もライムとデートしたいな。明日はライムとデートしようかな」

「わぁーい、やったー! ご主人とデートだ!」

「スカーレットとシャーミアはどうする?」

「「わ、私(妾)は…………」」

「なんだ、俺とデートするのは嫌なのか、だったらしょうがないな」

「「い、嫌じゃないよ(ぞ)!! 私(妾)もデートしたい!)

「そうか、なら明日はライム、次にスカーレット、最後にシャーミアだな」

「あ、あのー盛り上がってる所悪いんですけど、あたしの事を忘れてません?」


 俺達が話で盛り上がってるとずっと俺の後ろにいたイプシーが話しかけてきた。


「あぁ、すまないな。今はイプシーとデートしてたのに。この話は夜にしてイプシーとのデートを続けようか。だから、今は三人とも王城に戻っていてくれないか?さっきみたいな事があっても困るし」

「わ、分かった」


 スカーレットが代表でそう言って三人は王城に戻っていった。

「よし! デートの続きをするか!!」

「はい!」


 俺とイプシーはその後さらに買いものをしたりして楽しんだ。


 そして、王城に帰って明日は誰が俺とデートをするのかを決めることになり、結局俺が決めた順番になったのだった。
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