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第6章:大魔王討伐パーティ結成
第48話 ドヤ顔勇者
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国王は大きくかぶりを振った。
「ソロモン様っ。いくら一番弟子だからと言って、無理に連れて行くのはおやめくだされ。彼は見るからに頼りないではありませんか。他にいくらでも優秀なローラーがいるでしょう。ほら、彼とかどうです。えーっと、確か名は……」
ソチネが小さく手を挙げただけで、国王が話すのを止めた。
「国王。御判断は全てのメンバーが集まってから下してください」
「そ、そなたがそうおっしゃるのであれば……」
これは間違いなく職権を乱用しているな、と朝陽は虚ろな目で笑った。
そうしているうちに次の来客があった。勇者だ。
「国王様! お初にお目にかかります! 私、勇者のマルクスと申します!!」
謁見の間を闊歩し、国王の前で跪く勇者。国王との挨拶を済ませた彼は、やっと隣で跪く朝陽に気が付いた。
勇者と朝陽の目が合い、二人ともぽかんと口を開ける。
「ア……アサヒ……?」
「勇者じゃないか……。まあ、そりゃそうかあ……」
「なぜこのような場所にいる? ここはお前が来るような場所じゃないぞ」
「えーっと、いやあ、その……」
口ごもる朝陽に向かって、勇者はふんぞり返った。
「俺は、かの偉大な魔術師ソロモンに、大魔王討伐パーティに任命されたんだ! 俺はこの日のために毎日鍛錬に励み、ダンジョンに潜り、先日とうとうレベル五十五にまでなった!」
そして勇者は、意地の悪い笑みを浮かべながら朝陽に尋ねた。
「それで? 〝遅咲き〟のアサヒは、今レベルいくつなんだ?」
「さあ……。あれから一度もステータスを見てないから分からないんだ」
「はっはっは! 見なくても分かるさ。お前は未だにレベル二十五のままなんだから」
朝陽の隣でソチネが噴き出した。それでソチネの存在に気が付いた勇者は、頬を赤らめイケメンボイスを出す。
「おや? あなたまでいらしていたんですね。いやあ、いつ見てもあなたは美しい」
「あらあら、どうもありがとう。ぷぷっ」
朝陽には、なぜソチネがこんなに笑いを堪えているのかが分からなかった。
そこで国王が咳ばらいをする。すっかり身内だけで盛り上がっていたことに気付き、勇者は気まずそうに深く首を垂れた。
国王が、勇者に気さくに話しかける。
「なんだ、みな知り合いだったのだな」
「はい! 知り合いというより、殺したい相手……じゃなくて、かつて私のパーティのローラーを務めた者と、将来の妻です!」
国王、ソチネ、朝陽が勇者を二度見した。
「なっ、なんとっ。勇者はソロモン様の婚約者だったのか!」
「いえいえいえ、違いますよ国王!? 私の婚約者はアサヒですから!」
「それも違いますよねソチネさん? あなたと僕はただの師弟です」
勇者の時が止まる。彼はゆっくりとソチネの方を向き、指さした。
「今、なんと言った?」
「え? だから、私の婚約者はアサヒなの」
「いや、そっちではなく。そっちもものすごく気になるが、今はひとまずどうでもいい」
「?」
次に勇者は国王に問いかける。
「国王……。彼女が魔術師ソロモンというのは、本当ですか?」
「いかにも」
「……」
勇者は顔を真っ赤にしてソチネに頭を下げた。
「今までの数々の無礼、心よりお詫び申し上げます……!」
「本当によ、まったく」
縮み上がった勇者が朝陽の腕を小突く。
「おい、お前は知っていたのか」
「うん、知ってたよ」
「おい貴様っ。国王の御前でくらい俺に敬語を使わないかっ」
「君ってまるで高校部活のめんどくさい先輩みたいだな」
態度を変えない朝陽の耳元で、勇者は彼にしか聞こえない声で唸る。
「レベル二十五の遅咲きローラー風情が、俺に偉そうな口を利くなと言っている。それなのになぜ魔術師ソロモンと親しくしているんだ。いい加減身の程を弁えろ。それに、お前が彼女の婚約者を騙るな。俺が娶るんだ」
相手にしないでおこうと決めていたのに、ムッとした朝陽は思わず言葉を返してしまった。
「僕のことはなんて言ってもいいけどさ。ソチネさんの意思も考えずにそんなこと言うのはやめろよ」
「何が悪いんだ? 俺は勇者だぞ。これから英雄になる男だ。そんな俺の妻になることは、女性にとっては喜ばしいことだろう。バカなのかお前は。ああ、バカだったな。クソステータスの出来損ないローラーなんだから、頭が良いわけがない」
朝陽はこれ見よがしに大口を開けて欠伸をした。
「ソロモン様っ。いくら一番弟子だからと言って、無理に連れて行くのはおやめくだされ。彼は見るからに頼りないではありませんか。他にいくらでも優秀なローラーがいるでしょう。ほら、彼とかどうです。えーっと、確か名は……」
ソチネが小さく手を挙げただけで、国王が話すのを止めた。
「国王。御判断は全てのメンバーが集まってから下してください」
「そ、そなたがそうおっしゃるのであれば……」
これは間違いなく職権を乱用しているな、と朝陽は虚ろな目で笑った。
そうしているうちに次の来客があった。勇者だ。
「国王様! お初にお目にかかります! 私、勇者のマルクスと申します!!」
謁見の間を闊歩し、国王の前で跪く勇者。国王との挨拶を済ませた彼は、やっと隣で跪く朝陽に気が付いた。
勇者と朝陽の目が合い、二人ともぽかんと口を開ける。
「ア……アサヒ……?」
「勇者じゃないか……。まあ、そりゃそうかあ……」
「なぜこのような場所にいる? ここはお前が来るような場所じゃないぞ」
「えーっと、いやあ、その……」
口ごもる朝陽に向かって、勇者はふんぞり返った。
「俺は、かの偉大な魔術師ソロモンに、大魔王討伐パーティに任命されたんだ! 俺はこの日のために毎日鍛錬に励み、ダンジョンに潜り、先日とうとうレベル五十五にまでなった!」
そして勇者は、意地の悪い笑みを浮かべながら朝陽に尋ねた。
「それで? 〝遅咲き〟のアサヒは、今レベルいくつなんだ?」
「さあ……。あれから一度もステータスを見てないから分からないんだ」
「はっはっは! 見なくても分かるさ。お前は未だにレベル二十五のままなんだから」
朝陽の隣でソチネが噴き出した。それでソチネの存在に気が付いた勇者は、頬を赤らめイケメンボイスを出す。
「おや? あなたまでいらしていたんですね。いやあ、いつ見てもあなたは美しい」
「あらあら、どうもありがとう。ぷぷっ」
朝陽には、なぜソチネがこんなに笑いを堪えているのかが分からなかった。
そこで国王が咳ばらいをする。すっかり身内だけで盛り上がっていたことに気付き、勇者は気まずそうに深く首を垂れた。
国王が、勇者に気さくに話しかける。
「なんだ、みな知り合いだったのだな」
「はい! 知り合いというより、殺したい相手……じゃなくて、かつて私のパーティのローラーを務めた者と、将来の妻です!」
国王、ソチネ、朝陽が勇者を二度見した。
「なっ、なんとっ。勇者はソロモン様の婚約者だったのか!」
「いえいえいえ、違いますよ国王!? 私の婚約者はアサヒですから!」
「それも違いますよねソチネさん? あなたと僕はただの師弟です」
勇者の時が止まる。彼はゆっくりとソチネの方を向き、指さした。
「今、なんと言った?」
「え? だから、私の婚約者はアサヒなの」
「いや、そっちではなく。そっちもものすごく気になるが、今はひとまずどうでもいい」
「?」
次に勇者は国王に問いかける。
「国王……。彼女が魔術師ソロモンというのは、本当ですか?」
「いかにも」
「……」
勇者は顔を真っ赤にしてソチネに頭を下げた。
「今までの数々の無礼、心よりお詫び申し上げます……!」
「本当によ、まったく」
縮み上がった勇者が朝陽の腕を小突く。
「おい、お前は知っていたのか」
「うん、知ってたよ」
「おい貴様っ。国王の御前でくらい俺に敬語を使わないかっ」
「君ってまるで高校部活のめんどくさい先輩みたいだな」
態度を変えない朝陽の耳元で、勇者は彼にしか聞こえない声で唸る。
「レベル二十五の遅咲きローラー風情が、俺に偉そうな口を利くなと言っている。それなのになぜ魔術師ソロモンと親しくしているんだ。いい加減身の程を弁えろ。それに、お前が彼女の婚約者を騙るな。俺が娶るんだ」
相手にしないでおこうと決めていたのに、ムッとした朝陽は思わず言葉を返してしまった。
「僕のことはなんて言ってもいいけどさ。ソチネさんの意思も考えずにそんなこと言うのはやめろよ」
「何が悪いんだ? 俺は勇者だぞ。これから英雄になる男だ。そんな俺の妻になることは、女性にとっては喜ばしいことだろう。バカなのかお前は。ああ、バカだったな。クソステータスの出来損ないローラーなんだから、頭が良いわけがない」
朝陽はこれ見よがしに大口を開けて欠伸をした。
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