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第2章:ナナライパーティ
第12話-2 ナナライパーティとの出会い
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三日後の朝、チノマ町の門の前で待っていた朝陽の元に、ちらほらのナナライパーティが集まってきた。一番はじめに来たのは弓使いのマルシャ。彼女は町ではなく森の方向からやって来て、肩には狩りたての鳥が三羽提げられていた。
彼女は朝陽に手を振り、大声で挨拶した。
「アサヒー! おはよー! 早いねー? まだ待ち合わせ時間の五分前だよ?」
「おはようございます。マルシャさんは狩りに行ってたんですか?」
「うん! これ、今晩のごはんにしようと思ってー!」
朝陽は、足元で鳥の血抜きを始めたマルシャから視線を逸らし、門の方に目をやった。
しばらくして、肩を組んで歌っている剣士オウンと槍士ピヴルが合流した。酒臭い。
「ヒィーック! お待たせお待たせぇ! ダハ! ダハハァ!」
「マルシャ、お前それなんだっ。鳥か! 美味そうだ! 食っていいか! アハハハ!」
マルシャは鳥を抱きしめ、二人を睨みつけた。
「だめー! 今日の晩ごはんにするんだから! っていうか酒臭! 朝までお酒飲んでたの!? 今からダンジョン行くのにぃ!?」
「おう! まだあるぜぇ。マルシャも飲むかぁ~?」
「えっ、いいの? 飲むー!」
マルシャ、オウン、ピヴルは鳥の血で塗れた地面に座り、賑やかな酒盛りを始めた。朝陽も酒を勧められたが、丁重に断った。
(マイペースな人たちだな。こんな状態でダンジョンに潜って大丈夫なのかな。ちょっと心配だ)
待ち合わせ時間を三十分過ぎた頃にやっとナナライが来た。寝坊したのか寝ぐせがすごい。
ナナライは、酒盛りをしていたパーティに冷水を頭からぶっかけ、酔いを醒まさせた。
「ごめんね、アサヒ~。寝坊しちゃったし、パーティのひどい姿見せちゃったしでもう最悪! こんなメンバーのローラーしたくないとか思ってない!? 大丈夫!? 引いてるよね!?」
「あはは……。引いてませんよ。面白いと思ってはいますけど」
気を取り直し、ナナライのパーティと朝陽は町を出た。ちょっとした荷物は持たされたものの、鍋などの重い物が入ったリュックはオウンとピヴルが背負ったので、朝陽は彼らの荷物を引っ張った。
「僕が持ちますよ! ローラーなんですし」
「だから持ってもらってんじゃねえか」
「いえいえ。みなさんの荷物を持つのが僕の仕事でしょう? こんな軽い荷物持たせるだけじゃ、雇った意味ないですよ」
オウンとピヴルは目配せをしたあと、朝陽に哀れみをたっぷり込めた視線を送った。
「なあ、アサヒ……。この前から思っていたんだが、お前は以前、とんでもないパーティのローラーをしたことがあるみたいだな?」
目を泳がせる朝陽に、ピヴルは言葉を続ける。
「いいか。ローラーはパシリじゃねえし奴隷でもねえ。サポーターなんだ。俺たちが持てない分をお前に持ってもらう。それがローラーの役割だ。それだけで充分なんだ」
朝陽の喉がキュッと締まり、息が苦しくなった。この歳で泣きそうになったのは、犬の一生を描いた映画を観た時以来だ。
ナナライはアサヒの手を引き、先へ進む。
「さ、行こうよアサヒ! もしかしたらアサヒは知らないかもしれないけど、冒険の旅って結構楽しいんだよ! 今回の旅で、アサヒも楽しんでもらえたら嬉しいな!」
「……ありがとう、みんな」
朝陽がお礼を言うと、ナナライは真っ白な歯を見せて笑った。
「こちらこそありがとう! 貧乏な私たちの単発ローラーになってくれて!」
彼女は朝陽に手を振り、大声で挨拶した。
「アサヒー! おはよー! 早いねー? まだ待ち合わせ時間の五分前だよ?」
「おはようございます。マルシャさんは狩りに行ってたんですか?」
「うん! これ、今晩のごはんにしようと思ってー!」
朝陽は、足元で鳥の血抜きを始めたマルシャから視線を逸らし、門の方に目をやった。
しばらくして、肩を組んで歌っている剣士オウンと槍士ピヴルが合流した。酒臭い。
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「だめー! 今日の晩ごはんにするんだから! っていうか酒臭! 朝までお酒飲んでたの!? 今からダンジョン行くのにぃ!?」
「おう! まだあるぜぇ。マルシャも飲むかぁ~?」
「えっ、いいの? 飲むー!」
マルシャ、オウン、ピヴルは鳥の血で塗れた地面に座り、賑やかな酒盛りを始めた。朝陽も酒を勧められたが、丁重に断った。
(マイペースな人たちだな。こんな状態でダンジョンに潜って大丈夫なのかな。ちょっと心配だ)
待ち合わせ時間を三十分過ぎた頃にやっとナナライが来た。寝坊したのか寝ぐせがすごい。
ナナライは、酒盛りをしていたパーティに冷水を頭からぶっかけ、酔いを醒まさせた。
「ごめんね、アサヒ~。寝坊しちゃったし、パーティのひどい姿見せちゃったしでもう最悪! こんなメンバーのローラーしたくないとか思ってない!? 大丈夫!? 引いてるよね!?」
「あはは……。引いてませんよ。面白いと思ってはいますけど」
気を取り直し、ナナライのパーティと朝陽は町を出た。ちょっとした荷物は持たされたものの、鍋などの重い物が入ったリュックはオウンとピヴルが背負ったので、朝陽は彼らの荷物を引っ張った。
「僕が持ちますよ! ローラーなんですし」
「だから持ってもらってんじゃねえか」
「いえいえ。みなさんの荷物を持つのが僕の仕事でしょう? こんな軽い荷物持たせるだけじゃ、雇った意味ないですよ」
オウンとピヴルは目配せをしたあと、朝陽に哀れみをたっぷり込めた視線を送った。
「なあ、アサヒ……。この前から思っていたんだが、お前は以前、とんでもないパーティのローラーをしたことがあるみたいだな?」
目を泳がせる朝陽に、ピヴルは言葉を続ける。
「いいか。ローラーはパシリじゃねえし奴隷でもねえ。サポーターなんだ。俺たちが持てない分をお前に持ってもらう。それがローラーの役割だ。それだけで充分なんだ」
朝陽の喉がキュッと締まり、息が苦しくなった。この歳で泣きそうになったのは、犬の一生を描いた映画を観た時以来だ。
ナナライはアサヒの手を引き、先へ進む。
「さ、行こうよアサヒ! もしかしたらアサヒは知らないかもしれないけど、冒険の旅って結構楽しいんだよ! 今回の旅で、アサヒも楽しんでもらえたら嬉しいな!」
「……ありがとう、みんな」
朝陽がお礼を言うと、ナナライは真っ白な歯を見せて笑った。
「こちらこそありがとう! 貧乏な私たちの単発ローラーになってくれて!」
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