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プロローグ:異世界転移
第1話 白昼夢
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目が焼けてしまいそうなほどの激しい光に思わず目を瞑る。地面がぐにゃりと歪んだ気がした。徐々に、暖かい空気から冷たい空気へ、春うららかな花の匂いから辛気臭い靴箱の匂いへ移り変わる。同時に、周りにいた子どもたちの声が消え、代わりに誰かの歓声が聞こえた。
光が緩やかに柔らかくなっていく。
朝陽は、おそるおそる、うっすら目を開けた。そしてもう一度目を閉じ、深く息を吐く。
「なんだ、白昼夢か。最近ゲームしすぎだしな。気を付けないと」
先ほど朝陽の視界にうっすら映ったのは、ゴテゴテの鎧を身につけた金髪碧眼のイケメンと、杖を持つ、布面積が少ない服を着た赤髪の美女、そしてハリウッド映画で出てきそうな胸毛ボーボーのマッチョと、三角帽子を被った耳の尖った美少女。
そんな彼らが、応援しているサッカーチームが逆転優勝したときレベルの歓声を上げながら、朝陽の周りを小躍りしている。
これを現実と思うほど、朝陽はあんぽんたんではない。
白昼夢から目覚めるために、朝陽は深呼吸を繰り返した。
「どうした? 気分が悪いのか?」
「だっはっは~! 思ったよりちいせえのが来たなあ!」
空想であるはずのイケメンに肩を抱かれ、マッチョに頭をガシガシ撫でられた。それでも朝陽は頑なに目を閉じたまま深呼吸を続ける。
「やだ、黒髪のヒト族なんて珍しい。それにすごく可愛い」
「しんどいなら回復魔法かけてあげるよ? どこが痛いか言ってみて~」
美女二人にわらび餅のように柔らかい胸を押し付けられた朝陽は、たまらず情けない叫び声を上げ、目を開いた。
「ちょっ、ちょっと、なんですかさっきから! や、やわらか……じゃなくて、やめてください!」
突然大声を出した朝陽に、空想上の人物はポカンと口を開けた。
しかし、金髪イケメンはすぐに笑顔を取り戻し、激しいスキンシップで朝陽を歓迎する。
「やあやあ、異世界人! こちらの世界へようこそ! 俺はこの国の勇者だ。ところで、俺たちは明日魔王を討伐する予定なんだが、君も一緒に来てくれないか?」
正直に言うと、朝陽は先ほどのわらび餅の感触を反芻するのに夢中で、勇者の言葉のほとんどを理解できていなかった。
光が緩やかに柔らかくなっていく。
朝陽は、おそるおそる、うっすら目を開けた。そしてもう一度目を閉じ、深く息を吐く。
「なんだ、白昼夢か。最近ゲームしすぎだしな。気を付けないと」
先ほど朝陽の視界にうっすら映ったのは、ゴテゴテの鎧を身につけた金髪碧眼のイケメンと、杖を持つ、布面積が少ない服を着た赤髪の美女、そしてハリウッド映画で出てきそうな胸毛ボーボーのマッチョと、三角帽子を被った耳の尖った美少女。
そんな彼らが、応援しているサッカーチームが逆転優勝したときレベルの歓声を上げながら、朝陽の周りを小躍りしている。
これを現実と思うほど、朝陽はあんぽんたんではない。
白昼夢から目覚めるために、朝陽は深呼吸を繰り返した。
「どうした? 気分が悪いのか?」
「だっはっは~! 思ったよりちいせえのが来たなあ!」
空想であるはずのイケメンに肩を抱かれ、マッチョに頭をガシガシ撫でられた。それでも朝陽は頑なに目を閉じたまま深呼吸を続ける。
「やだ、黒髪のヒト族なんて珍しい。それにすごく可愛い」
「しんどいなら回復魔法かけてあげるよ? どこが痛いか言ってみて~」
美女二人にわらび餅のように柔らかい胸を押し付けられた朝陽は、たまらず情けない叫び声を上げ、目を開いた。
「ちょっ、ちょっと、なんですかさっきから! や、やわらか……じゃなくて、やめてください!」
突然大声を出した朝陽に、空想上の人物はポカンと口を開けた。
しかし、金髪イケメンはすぐに笑顔を取り戻し、激しいスキンシップで朝陽を歓迎する。
「やあやあ、異世界人! こちらの世界へようこそ! 俺はこの国の勇者だ。ところで、俺たちは明日魔王を討伐する予定なんだが、君も一緒に来てくれないか?」
正直に言うと、朝陽は先ほどのわらび餅の感触を反芻するのに夢中で、勇者の言葉のほとんどを理解できていなかった。
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