【完結】またたく星空の下

mazecco

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6章

第48話 金賞

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 夏休みが始まり、コンクールの練習もラストスパートに差し掛かる。授業がないので、朝から夜までひたすら練習、練習、練習だ。
 顧問も気合いが入っているのか、いつもよりずっと厳しい。段原先輩曰く、今年の演奏が今までと比べ物にならないくらい良い仕上がりになっているので、顧問もつい本気を出してしまっているそうだ。
 それが部員にも伝わっているのか、顧問が厳しくても、誰も泣き言を漏らさなかった。それどころか、厳しくされたらされるほど、部員の目がキラキラ輝くのだ。
 海茅のそのうちの一人だった。

「シンバル! もっと深い音出して!」
「はい!!」

 合奏中に注意されたにもかかわらず、海茅は嬉しそうにガッツポーズをした。
 顧問は期待していない部員には何も言わないと、以前段原先輩が教えてくれた。こうして注意されるということは、顧問に認められた証拠だ。

(もっと良い音出して、先生がぐうの音も出ないようにしてやる!)

 海茅のサスペンドシンバルも絶好調だ。ソロを引き立てる夕波、状況を一変させる荒波、嵐が去ったあとの凪波……。今の海茅は、砂浜に寝転がっているのではなく、海と一体化して波を生み出している。
 その他の海茅が担当しているパーカッションも、完璧とまではいかないが、それなりに良く仕上がっていた。

 昼休み、ある三年部員がお弁当を頬張りながら話しているのが海茅に聞こえた。

「もしかして、今年は金賞取れるんじゃない!?」
「実は私も思ってた!」
「ねー! 金賞なんて取れちゃったら私どうしようー!」
「ダメ金でもいいから、一回金賞取ってみたいよねえ」

 海茅は、一緒にごはんを食べていた優紀と明日香にこっそり尋ねる。

「ねえ、ダメ金ってなに?」

 優紀も分からないようで首を傾げたが、明日香は知っていたようだ。

「支部大会の切符がもらえない金賞のことだよ」

 つまり、金賞ではあるが代表枠には入れず、上位大会に進めないことらしい。

「それでも金賞だったらすごいよね?」

 海茅がそう言うと、優紀と明日香は頷いた。

「すごいと思う。だって今までこの吹奏楽部、銀賞しか取ってないんでしょ?」
「うんうん。取れたら嬉しいね、金賞」

 三年部員の会話を聞いていた部員は、海茅たちのように金賞を意識し始めた。
 遠くにあったときは見向きもしなかったが、手が届きそうなところにあると途端に欲しくなる。やる気を助長させられた部員は、より一層熱心に練習するようになった。
 その日の合奏後のミーティングで、部長が言った。

「残り十日、金賞目指して頑張ろう!」

 部員からは元気な返事。いつもよりやる気に満ち溢れる彼女たちに、顧問は面食らっているようだった。
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