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2章
第15話 主役になったはじめての日
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次の日の合奏は、いつもと違う緊張感があった。
失敗して怒られたらどうしようという冷や汗を滲ませた緊張ではなく、本番で成功させたいという高揚感のあるものだ。
合奏前からもそういった気持ちがあったのか、合奏のことを考えると気が滅入るのに、この日は合奏が待ち遠しかった。
顧問が指揮棒を振ると、深いブレス音と共に楽器に命が吹き込まれた。
無機質な音楽室が、女の子の住まう森に一変する。
狂暴な魔物が王子様に倒されたあたりで、海茅はクラッシュシンバルを持ち上げた。
表現したい音色を頭に思い描きながら、海茅は目を瞑りこの物語の中に溶け込む。
(いち、に、さん、よん……!)
目を見開いた顧問が海茅を見た。しかし海茅とは目が合わない。
海茅は最後の星が流れて消えるその瞬間まで、シンバルの響きに集中していた。
顧問は目尻を下げ、管楽器に目を戻した。
「もっと本気で練習しなさい」
合奏後のミーティングで顧問は部員全員に向けてそう言った。
今日の合奏は、顧問が期待したレベルに到達していなかったらしい。顧問は不機嫌そうに、パートごとに改善点を指摘した。
「彼方は昨日、シンバルを家に持って帰りたいなんてとんでもないことを言った」
顧問が言った一言に海茅は顔を上げた。
(みんなの前で名指し!? 何言われちゃうの!? 恥ずかしい……)
しかし顧問の言葉は、海茅が予想していなかったものだった。
「そしたらどうだ。たった一晩で音が変わった。楽器を持って帰って練習しろとは言わないが、彼方の熱意は君たちも見習いなさい」
部員が声を揃えて返事をする。
海茅は顔を赤らめ、口をパクパクさせた。
(え……? もしかして、ほ、褒められた……?)
海茅のクラッシュシンバルの音は、パーカッション部員にも大好評だった。
特に樋暮先輩と段原先輩は、目を輝かせて海茅を褒めちぎった。
「海茅ちゃん! 今日のシンバル! すーーーっごい良かった!!」
「すごすぎて一瞬手が止まったもん! 感動した~!!」
優紀も興奮ぎみに頷いている。
「ねえ海茅ちゃん! コンクール終わったら、私にクラッシュシンバル教えてよ!」
海茅は恥ずかしがりながらも、まんざらでもないように頭を掻いた。
この日海茅は、生まれてはじめて主役になったような気がした。
失敗して怒られたらどうしようという冷や汗を滲ませた緊張ではなく、本番で成功させたいという高揚感のあるものだ。
合奏前からもそういった気持ちがあったのか、合奏のことを考えると気が滅入るのに、この日は合奏が待ち遠しかった。
顧問が指揮棒を振ると、深いブレス音と共に楽器に命が吹き込まれた。
無機質な音楽室が、女の子の住まう森に一変する。
狂暴な魔物が王子様に倒されたあたりで、海茅はクラッシュシンバルを持ち上げた。
表現したい音色を頭に思い描きながら、海茅は目を瞑りこの物語の中に溶け込む。
(いち、に、さん、よん……!)
目を見開いた顧問が海茅を見た。しかし海茅とは目が合わない。
海茅は最後の星が流れて消えるその瞬間まで、シンバルの響きに集中していた。
顧問は目尻を下げ、管楽器に目を戻した。
「もっと本気で練習しなさい」
合奏後のミーティングで顧問は部員全員に向けてそう言った。
今日の合奏は、顧問が期待したレベルに到達していなかったらしい。顧問は不機嫌そうに、パートごとに改善点を指摘した。
「彼方は昨日、シンバルを家に持って帰りたいなんてとんでもないことを言った」
顧問が言った一言に海茅は顔を上げた。
(みんなの前で名指し!? 何言われちゃうの!? 恥ずかしい……)
しかし顧問の言葉は、海茅が予想していなかったものだった。
「そしたらどうだ。たった一晩で音が変わった。楽器を持って帰って練習しろとは言わないが、彼方の熱意は君たちも見習いなさい」
部員が声を揃えて返事をする。
海茅は顔を赤らめ、口をパクパクさせた。
(え……? もしかして、ほ、褒められた……?)
海茅のクラッシュシンバルの音は、パーカッション部員にも大好評だった。
特に樋暮先輩と段原先輩は、目を輝かせて海茅を褒めちぎった。
「海茅ちゃん! 今日のシンバル! すーーーっごい良かった!!」
「すごすぎて一瞬手が止まったもん! 感動した~!!」
優紀も興奮ぎみに頷いている。
「ねえ海茅ちゃん! コンクール終わったら、私にクラッシュシンバル教えてよ!」
海茅は恥ずかしがりながらも、まんざらでもないように頭を掻いた。
この日海茅は、生まれてはじめて主役になったような気がした。
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