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最終編:反乱編:王城
三本の糸と戦いの終わり
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ヴィクスの泣き叫ぶ声はアーサーの耳にまで届いた。
「ヴィクス……? ヴィクスに何かあった!?」
「アーサー、行きましょう!!」
「私も行きます……!」
双子とシチュリアは国王をS級に預け、来た道を戻った。
「ヴィクス……ダフ……ッ」
彼らが目にしたものは、命の灯が消えようとしているダフと、彼にしがみついて泣いているヴィクス、そして彼らの周りには臣下の死体であろうものが散らばっていた。
モニカとシチュリアは彼らに駆け寄り、ダフに回復魔法をかける。しかし二人とも顔を歪めていた。
(……回復魔法じゃ……ダフはもう助からない……)
ヴィクスの瞳にシチュリアが映る。彼はハッとして彼女の肩を掴んだ。
「シチュリア……! 僕とダフに加護の糸を……!」
「っ……。だめよ、ヴィクス。それ以上寿命を減らしちゃ……」
「構わない! 加護の糸でしかダフは助からないだろう!? お願いだ!」
シチュリアはヴィクスを見上げた。彼がこんなに必死になって、双子以外の誰かの命を救おうとしたことが今まであっただろうか。
「ダフは、あなたにとってそれほど必要な存在?」
シチュリアの問いに、ヴィクスは泣きながらほんのり微笑んだ。
「お兄様とお姉様のために残しておいた命を与えたいくらいに」
「……分かったわ」
シチュリアも目に涙を浮かべ、微笑んだ。
「あなたの心を開き、癒せる人と出会えたのね、ヴィクス」
「……うん」
「あなたにはダフが必要なのね」
「うん……っ」
「分かったわ」
シチュリアの手の上に、アーサーとモニカが手を乗せた。
「シチュリア、僕とダフも加護の糸で繋いで」
「私も。三人の命を繋げたら、ヴィクスの寿命もそこまで減らないでしょ?」
「分かったわ。……大変だけど」
ヴィクスは双子に目をやった。
「お兄様……お姉様……僕だけで充分です」
「ううん。僕たちにとってもダフは大切な友だちなんだ。僕たちはもう大切な人を失いたくない」
「大切な人っていうのは、ヴィクスも入っているのよ。だから私たちのワガママきいて」
「……」
ダフの胸に三本の加護の糸が繋がれる。彼らの命が糸を通って流れ、消えかけていた命に再び灯がともった。
目を開けたダフに、ヴィクスは抱きつきわんわん泣いた。バカ、バカ、バカーと幼児のような語彙力をぶつけ、ぽかぽかと体を叩く。
「僕より先に死ぬなんて許さないよ……。君は……君はっ……! 僕の初めてできた友人なんだから……!」
それを聞いたダフは泣きながら笑い、一生その身を尽くすと誓った主人の体を包み込んだ。
◇◇◇
アウス軍の兵は、城から出てきた両手両足を縛られた国王に釘付けになった。彼の隣には総大将のアウス王子が立っている。
アーサーはみっともなく泣いている国王を見下ろした。
「お父上……」
「アウスッ……すまんかった……悪かった……! もうお前のことを不吉の象徴などと呼ばんからぁ……どうか命だけは助けてくれぇ……。ほら……わしの可愛いアウス……良い子だからぁぁぁ……」
「……モリアのことだけでも、愛してくれたらよかったのに」
「えぐっ、えぐっ、だって王妃が……王妃がお前らのことを憎んでいたから……わしも仕方なく……」
「仕方なく……そのようには思えませんでした」
言葉を交わせば交わすほど、アーサーの目が冷たくなっていく。
「……あなたに憎しみがないと言えば嘘になります。ですができることなら……一度だけでも愛されてみたかった」
アーサーは自嘲的に笑った。
「モニカは強い子ですから、あなたたちに未練はひとつもないようです。僕は情けないことに……ずっと心の奥底でそう思っていました。記憶の隅々まで見渡し、一度だけでも愛を注がれたことがないか探したこともあります。残念ながら、そんな記憶はひとつもありませんでしたが」
アーサーは目を瞑り、深く息を吸った。
「でも......。モニカを......僕たち双子を、産んでくれてありがとう。......お父さん」
そして傍にいるサンプソンを呼ぶ。
「サンプソン……ごめんね。こんな役目をさせて」
「いいんだ。君に親殺しをさせるわけにはいかないし、君の代わりができるのは僕しかいない」
サンプソンは国王の命乞いに耳を貸さず、容赦なく斬首した。
戦争の終わり。
そして明るい未来が芽を出した瞬間だった。
アーサーとモニカが剣を空高く掲げると、兵たちの歓声が青空を埋め尽くす。
サンプソンは空を仰ぎ、涙を流した。
「ジル、見ているかい? 君の待っていた明るい未来が……やっと来たよ」
「ヴィクス……? ヴィクスに何かあった!?」
「アーサー、行きましょう!!」
「私も行きます……!」
双子とシチュリアは国王をS級に預け、来た道を戻った。
「ヴィクス……ダフ……ッ」
彼らが目にしたものは、命の灯が消えようとしているダフと、彼にしがみついて泣いているヴィクス、そして彼らの周りには臣下の死体であろうものが散らばっていた。
モニカとシチュリアは彼らに駆け寄り、ダフに回復魔法をかける。しかし二人とも顔を歪めていた。
(……回復魔法じゃ……ダフはもう助からない……)
ヴィクスの瞳にシチュリアが映る。彼はハッとして彼女の肩を掴んだ。
「シチュリア……! 僕とダフに加護の糸を……!」
「っ……。だめよ、ヴィクス。それ以上寿命を減らしちゃ……」
「構わない! 加護の糸でしかダフは助からないだろう!? お願いだ!」
シチュリアはヴィクスを見上げた。彼がこんなに必死になって、双子以外の誰かの命を救おうとしたことが今まであっただろうか。
「ダフは、あなたにとってそれほど必要な存在?」
シチュリアの問いに、ヴィクスは泣きながらほんのり微笑んだ。
「お兄様とお姉様のために残しておいた命を与えたいくらいに」
「……分かったわ」
シチュリアも目に涙を浮かべ、微笑んだ。
「あなたの心を開き、癒せる人と出会えたのね、ヴィクス」
「……うん」
「あなたにはダフが必要なのね」
「うん……っ」
「分かったわ」
シチュリアの手の上に、アーサーとモニカが手を乗せた。
「シチュリア、僕とダフも加護の糸で繋いで」
「私も。三人の命を繋げたら、ヴィクスの寿命もそこまで減らないでしょ?」
「分かったわ。……大変だけど」
ヴィクスは双子に目をやった。
「お兄様……お姉様……僕だけで充分です」
「ううん。僕たちにとってもダフは大切な友だちなんだ。僕たちはもう大切な人を失いたくない」
「大切な人っていうのは、ヴィクスも入っているのよ。だから私たちのワガママきいて」
「……」
ダフの胸に三本の加護の糸が繋がれる。彼らの命が糸を通って流れ、消えかけていた命に再び灯がともった。
目を開けたダフに、ヴィクスは抱きつきわんわん泣いた。バカ、バカ、バカーと幼児のような語彙力をぶつけ、ぽかぽかと体を叩く。
「僕より先に死ぬなんて許さないよ……。君は……君はっ……! 僕の初めてできた友人なんだから……!」
それを聞いたダフは泣きながら笑い、一生その身を尽くすと誓った主人の体を包み込んだ。
◇◇◇
アウス軍の兵は、城から出てきた両手両足を縛られた国王に釘付けになった。彼の隣には総大将のアウス王子が立っている。
アーサーはみっともなく泣いている国王を見下ろした。
「お父上……」
「アウスッ……すまんかった……悪かった……! もうお前のことを不吉の象徴などと呼ばんからぁ……どうか命だけは助けてくれぇ……。ほら……わしの可愛いアウス……良い子だからぁぁぁ……」
「……モリアのことだけでも、愛してくれたらよかったのに」
「えぐっ、えぐっ、だって王妃が……王妃がお前らのことを憎んでいたから……わしも仕方なく……」
「仕方なく……そのようには思えませんでした」
言葉を交わせば交わすほど、アーサーの目が冷たくなっていく。
「……あなたに憎しみがないと言えば嘘になります。ですができることなら……一度だけでも愛されてみたかった」
アーサーは自嘲的に笑った。
「モニカは強い子ですから、あなたたちに未練はひとつもないようです。僕は情けないことに……ずっと心の奥底でそう思っていました。記憶の隅々まで見渡し、一度だけでも愛を注がれたことがないか探したこともあります。残念ながら、そんな記憶はひとつもありませんでしたが」
アーサーは目を瞑り、深く息を吸った。
「でも......。モニカを......僕たち双子を、産んでくれてありがとう。......お父さん」
そして傍にいるサンプソンを呼ぶ。
「サンプソン……ごめんね。こんな役目をさせて」
「いいんだ。君に親殺しをさせるわけにはいかないし、君の代わりができるのは僕しかいない」
サンプソンは国王の命乞いに耳を貸さず、容赦なく斬首した。
戦争の終わり。
そして明るい未来が芽を出した瞬間だった。
アーサーとモニカが剣を空高く掲げると、兵たちの歓声が青空を埋め尽くす。
サンプソンは空を仰ぎ、涙を流した。
「ジル、見ているかい? 君の待っていた明るい未来が……やっと来たよ」
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