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最終編:反乱編:南部モリア軍
開戦
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左右をサンプソンとマデリアに、背後をフォントメウのエルフたちに護衛されながら南部に到着したモニカを目にした途端、〝モリア軍〟の兵が馬から下りて跪いた。
兵は首を垂れたまま、隣にいる兵と囁き合う。
「S級冒険者だけじゃなく、高貴なエルフを三人も連れている……。さすがはモリア様だ……」
「すげー。……あの子町で見かけたことあるが……まさか王女様だったとは……」
「美しいな……この世のものとは思えないほど」
「そりゃ、亡くなったはずのモリア様なんだから。この世のものじゃないのさ」
彼らの妙な会話はしっかりモニカの耳に入っていた。モニカは顔を真っ赤にして、隣にいるサンプソンに話しかける。
「ううぅ~……。またこれだよぉ……いやだよこのお姫様な待遇……」
「お姫様じゃないよ、モニカ。王女様なんだから」
「もっといやよぉ……」
モニカたちは先陣に立ち、跪いている何千もの兵を見下ろした。
「モニカ、開戦の合図を」
「ええっ……」
「士気が上がるような、気の利いた一言をお願い」
「えええ……」
オタオタするモニカに、マデリアが一喝する。
「モニカ。彼らはあなたに命を預けるのよ。しっかりしなさい」
「っ!」
「今から命を懸けて戦う彼らに何か言うことはないの?」
「……ある」
「そう。じゃあそれを言ってあげて」
モニカは自分の頬をぺちぺち叩き、深く息を吸いこんだ。
「平和な世の中を! 私たちで切り開こう!」
「うおおおおおおおお!」
「そのためにもみんなが生きてないとダメだからね!」
「う、うおおおおおおお……!」
「全部終わったら、みんなでおいしいもの食べようねー!!」
「うおおおおおおおおお……!?」
「じゃあ、いくよぉぉぉー!」
今まで経験してきたものと毛色の違う開戦の合図に、兵たちは少し戸惑った。モニカの両隣りにいるS級冒険者が腹を抱えて笑っていたので、つられて兵も噴き出してしまう。何千人もの兵の笑い声が響き渡り、兵が口々に叫んだ。
「帰ったらたらふく酒を飲みてぇ!」
「鳥の丸焼きにかぶりつきてぇ!」
「勝つぞぉーーー!!」
大勢に笑われてまた顔を真っ赤にしていたモニカに、サンプソンが笑い涙を拭いながら言った。
「うん! みんなの士気が上がったね! ちょっと間抜けな合図だったけどいいんじゃない?」
「うぅぅ~……恥ずかしいよぉ~……」
「大恥晒したわね、モニカ。でも兵が楽しそうだからいいじゃない。さ、行くわよ」
「う、うん!」
「あなたがただのお飾りの総大将じゃないってこと、知らしめてやりなさい」
マデリアに渡されたエーテルを飲み干し、モニカは杖を握った。
「兵に魔物は倒せない。私たちで倒すわよ」
「うん!!」
「逆に僕たちは人間の兵は構わなくていい。無視して突っ切るよ」
そう言って、サンプソンはひょいとモニカを自分の馬に乗せた。
「君、馬は乗り慣れていないだろう? 僕が運ぶ」
「ありがとうサンプソン! よろしくね!」
「ああ、命に代えても守ります、王女様」
「う……わっ!!」
サンプソン、マデリア、マーニャ、フーワ、シャナの馬が先陣を切って走り出し、兵たちもそれに続いた。
彼らを待ち受けていたのは、バンスティン大公の大軍。しかし彼らはエルフたちの魔法によって吹き飛ばされ、モニカに触れることすらできなかった。
「はぁぁ……御子をこんな血なまぐさいところに放り込むなんて……ヒトというのはなんと罪深い生き物なんだろうねえ……」
フーワがモニカのうしろでボソボソと毒づいていると、マーニャが何度も頷いた。
「全くだ。返り血一滴たりとも御子につけたくない」
「うーん、どうしてもモニカは過保護な大人に愛されてしまうわねえ」
シャナが困ったように笑った。(ちなみにユーリはオーヴェルニュ家でお留守場)
久しぶりの戦いの場に、シャナは心躍っている様子だった。風魔法で兵をなぎ倒し、悪い笑みを浮かべている。
「ふふ。魔力を半分失ったって、私はまだ充分戦力になるわよ」
「ああ恐ろしい顔をしているねえ。それがフォントメウのエルフがする表情かい?」
「そんなことを言いながら、あなただってノリノリで戦っているじゃない、フーワ」
「ンー。ケンカする相手がいなくなってから退屈してたんだよぉ」
マーニャはジトッとした目で二人を見て、ため息をついた。
「弟子が弟子なら師も師だな……」
兵は首を垂れたまま、隣にいる兵と囁き合う。
「S級冒険者だけじゃなく、高貴なエルフを三人も連れている……。さすがはモリア様だ……」
「すげー。……あの子町で見かけたことあるが……まさか王女様だったとは……」
「美しいな……この世のものとは思えないほど」
「そりゃ、亡くなったはずのモリア様なんだから。この世のものじゃないのさ」
彼らの妙な会話はしっかりモニカの耳に入っていた。モニカは顔を真っ赤にして、隣にいるサンプソンに話しかける。
「ううぅ~……。またこれだよぉ……いやだよこのお姫様な待遇……」
「お姫様じゃないよ、モニカ。王女様なんだから」
「もっといやよぉ……」
モニカたちは先陣に立ち、跪いている何千もの兵を見下ろした。
「モニカ、開戦の合図を」
「ええっ……」
「士気が上がるような、気の利いた一言をお願い」
「えええ……」
オタオタするモニカに、マデリアが一喝する。
「モニカ。彼らはあなたに命を預けるのよ。しっかりしなさい」
「っ!」
「今から命を懸けて戦う彼らに何か言うことはないの?」
「……ある」
「そう。じゃあそれを言ってあげて」
モニカは自分の頬をぺちぺち叩き、深く息を吸いこんだ。
「平和な世の中を! 私たちで切り開こう!」
「うおおおおおおおお!」
「そのためにもみんなが生きてないとダメだからね!」
「う、うおおおおおおお……!」
「全部終わったら、みんなでおいしいもの食べようねー!!」
「うおおおおおおおおお……!?」
「じゃあ、いくよぉぉぉー!」
今まで経験してきたものと毛色の違う開戦の合図に、兵たちは少し戸惑った。モニカの両隣りにいるS級冒険者が腹を抱えて笑っていたので、つられて兵も噴き出してしまう。何千人もの兵の笑い声が響き渡り、兵が口々に叫んだ。
「帰ったらたらふく酒を飲みてぇ!」
「鳥の丸焼きにかぶりつきてぇ!」
「勝つぞぉーーー!!」
大勢に笑われてまた顔を真っ赤にしていたモニカに、サンプソンが笑い涙を拭いながら言った。
「うん! みんなの士気が上がったね! ちょっと間抜けな合図だったけどいいんじゃない?」
「うぅぅ~……恥ずかしいよぉ~……」
「大恥晒したわね、モニカ。でも兵が楽しそうだからいいじゃない。さ、行くわよ」
「う、うん!」
「あなたがただのお飾りの総大将じゃないってこと、知らしめてやりなさい」
マデリアに渡されたエーテルを飲み干し、モニカは杖を握った。
「兵に魔物は倒せない。私たちで倒すわよ」
「うん!!」
「逆に僕たちは人間の兵は構わなくていい。無視して突っ切るよ」
そう言って、サンプソンはひょいとモニカを自分の馬に乗せた。
「君、馬は乗り慣れていないだろう? 僕が運ぶ」
「ありがとうサンプソン! よろしくね!」
「ああ、命に代えても守ります、王女様」
「う……わっ!!」
サンプソン、マデリア、マーニャ、フーワ、シャナの馬が先陣を切って走り出し、兵たちもそれに続いた。
彼らを待ち受けていたのは、バンスティン大公の大軍。しかし彼らはエルフたちの魔法によって吹き飛ばされ、モニカに触れることすらできなかった。
「はぁぁ……御子をこんな血なまぐさいところに放り込むなんて……ヒトというのはなんと罪深い生き物なんだろうねえ……」
フーワがモニカのうしろでボソボソと毒づいていると、マーニャが何度も頷いた。
「全くだ。返り血一滴たりとも御子につけたくない」
「うーん、どうしてもモニカは過保護な大人に愛されてしまうわねえ」
シャナが困ったように笑った。(ちなみにユーリはオーヴェルニュ家でお留守場)
久しぶりの戦いの場に、シャナは心躍っている様子だった。風魔法で兵をなぎ倒し、悪い笑みを浮かべている。
「ふふ。魔力を半分失ったって、私はまだ充分戦力になるわよ」
「ああ恐ろしい顔をしているねえ。それがフォントメウのエルフがする表情かい?」
「そんなことを言いながら、あなただってノリノリで戦っているじゃない、フーワ」
「ンー。ケンカする相手がいなくなってから退屈してたんだよぉ」
マーニャはジトッとした目で二人を見て、ため息をついた。
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