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決戦編:裏S級との戦い
薬
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「アーサー……?」
アーサーの視線に違和感を抱き、首を傾げるモニカ。アーサーは慌てて笑顔を作り、明るい声を出した。
「モニカ、無事でよかった! みんなを助けてくれてありがとう!」
「う、うん……」
「こっちももう終わったよ。ダンジョンはこれで終わり。さ、早く帰ろう」
「え、でもそこに魔物いるじゃない……」
「ああ、この子、シルヴェストルっていうんだけど、今日から僕の使い魔になったから。連れて帰るよ」
「ええええええ!? ちょっと待って、私に相談もなしに何してるの!?」
「ごめん! でも許して、仕方なかったんだー」
「アーサー! 魔物は猫や犬じゃないのよ! ワガママ言わないで、置いて帰りなさい!」
「えええ……、でももう契り交わしちゃったし……」
「ダメよぉ!!」
頬を膨らませてプンプン怒るモニカに、困ったように笑うアーサー。二人の間に、シルヴェストルが割って入った。
「盛り上がってるところ悪いけど、まだダンジョンは終わってないよ」
「「ええ!?」」
「あと一階残ってる。裏S級のアジトがね。そこにヴァラリアがいるでしょ。倒さなきゃ」
「あ、そっか……」
「でも僕が倒してくるよ。ちょっと待っててくれる?」
「えーっと……」
アーサーはちらりとカミーユを窺い見た。カミーユは頷かず、ムスッとした声を出す。
「いや、俺が行く」
「カミーユ……」
「勘違いするなよ。アーサー、お前を信用してないんじゃねえ。そっちの魔物を信用してねえだけだ」
「心外だなあ。僕がアウスとの約束を破るはずがないのに」
シルヴェストルが不満げに小石を蹴り上げたが、すぐに笑顔になりアーサーの腕に抱きついた。
「でも、これからアウスと一緒にいられるのなら、ちょっとむかつくことを言われても我慢できるね!」
「あーーーー! あんた、なにアーサーとイチャイチャしてんのよ! 離れなさい! そこは私の特等席よ!?」
「ごめんねモリア。……えっと、今日から君のことはお義姉さんって呼べばいい?」
「ちょっ……!? えっ!? アーサーこいつ何言ってんの!?」
「うーん、ちょっと主従関係を勘違いしてるんだ、この子……」
がやがやとモニカとシルヴェストルがアーサーを取り合っていると、地下に続く階段が開き、ヴァラリアが顔を出した。
「よっこいせ……っと。なんか地下までうるせえ声聞こえてたぜ、モニカ」
「あんた……っ!」
「なんだ? みんな無傷じゃねえか。……って、うわ。マルムとヘラ死んでる……。えぇ~まじか……」
ヴァラリアに気付いたシルヴェストルが、一瞬にして彼の前に立つ。
ヴァラリアはまじまじと彼を見て、ヘッと笑った。
「おー。マルムの言ってた通りだ。寝返ったんだな、シルヴェストル」
「ああ、やっぱりマルムに気付かれてたのか」
「おう。地下五十階までS級が一人も欠けずに降りてこられたのも、お前が裏で魔物の間引きしてたからだろ?」
「正解。だってみんなに生き残って欲しかったんだ」
「アーサーへの脅しに使うために、だろ」
「……」
ヴァラリアは遠くで眉を寄せているアーサーに話しかけた。
「おーいアーサー! お前、ずっとこいつの手のひらで転がされてたんだぞー。お前はずーっとこいつに見張られてた。ピンチの時に何度か助けられなかったか? 恩を売られてちょっと良いヤツかもって思わされたんだろ? それにS級を全員生き残らせたのも、究極の選択を強いるためにわざと殺さなかったんだぞー」
「ヴァラリア、僕はやっとの思いでアウスを手に入れたんだよ。仲を裂くようなことを言うなら、殺すよ」
「ははは! こんなこと言っても言わなくても、俺を殺すつもりだろ?」
「話が早いね。じゃ、さよなら」
首を撥ねられる直前、ヴァラリアがモニカに声をかけた。
「モニカ、お前が俺のフレンチトースト食う姿、可愛くて好きだったぜ。俺の手で殺したかっ――」
「っ……」
シルヴェストルがヴァラリアの首を撥ねたのと同時に、ヴァラリアがシルヴェストルに注射を打ち込んだ。首がなくなったのに、注射器を押し込み液体を最後まで注入する。
シルヴェストルは慌てて注射器を抜いたが、液体は体内に入ってしまった。
「これは……一体……」
ヴァラリアの首が、けたたましく笑う。
「魔物の理性を奪い去り……本能だけになる薬……。魔物の本能は……ヒトを喰うことだ……さあ、殺せシルヴェストル……ヒトに憧れ……ヒトになりたかったお前は……言葉すら忘れた凶悪な魔物に……な……る……」
「……」
シルヴェストルの顔が蒼白になる。体に異変が起こったのを察知したようだ。彼は必死の形相でアーサーに向かって叫んだ。
「逃げてアウス!! 他のヒトも連れて逃げるんだ!! 僕は君との約束を破りたくない……! 早く! 僕から逃げて――」
言葉の途中で、シルヴェストルの体から力が抜ける。そして次の瞬間、シルヴェストルがカミーユに襲いかかった。
アーサーの視線に違和感を抱き、首を傾げるモニカ。アーサーは慌てて笑顔を作り、明るい声を出した。
「モニカ、無事でよかった! みんなを助けてくれてありがとう!」
「う、うん……」
「こっちももう終わったよ。ダンジョンはこれで終わり。さ、早く帰ろう」
「え、でもそこに魔物いるじゃない……」
「ああ、この子、シルヴェストルっていうんだけど、今日から僕の使い魔になったから。連れて帰るよ」
「ええええええ!? ちょっと待って、私に相談もなしに何してるの!?」
「ごめん! でも許して、仕方なかったんだー」
「アーサー! 魔物は猫や犬じゃないのよ! ワガママ言わないで、置いて帰りなさい!」
「えええ……、でももう契り交わしちゃったし……」
「ダメよぉ!!」
頬を膨らませてプンプン怒るモニカに、困ったように笑うアーサー。二人の間に、シルヴェストルが割って入った。
「盛り上がってるところ悪いけど、まだダンジョンは終わってないよ」
「「ええ!?」」
「あと一階残ってる。裏S級のアジトがね。そこにヴァラリアがいるでしょ。倒さなきゃ」
「あ、そっか……」
「でも僕が倒してくるよ。ちょっと待っててくれる?」
「えーっと……」
アーサーはちらりとカミーユを窺い見た。カミーユは頷かず、ムスッとした声を出す。
「いや、俺が行く」
「カミーユ……」
「勘違いするなよ。アーサー、お前を信用してないんじゃねえ。そっちの魔物を信用してねえだけだ」
「心外だなあ。僕がアウスとの約束を破るはずがないのに」
シルヴェストルが不満げに小石を蹴り上げたが、すぐに笑顔になりアーサーの腕に抱きついた。
「でも、これからアウスと一緒にいられるのなら、ちょっとむかつくことを言われても我慢できるね!」
「あーーーー! あんた、なにアーサーとイチャイチャしてんのよ! 離れなさい! そこは私の特等席よ!?」
「ごめんねモリア。……えっと、今日から君のことはお義姉さんって呼べばいい?」
「ちょっ……!? えっ!? アーサーこいつ何言ってんの!?」
「うーん、ちょっと主従関係を勘違いしてるんだ、この子……」
がやがやとモニカとシルヴェストルがアーサーを取り合っていると、地下に続く階段が開き、ヴァラリアが顔を出した。
「よっこいせ……っと。なんか地下までうるせえ声聞こえてたぜ、モニカ」
「あんた……っ!」
「なんだ? みんな無傷じゃねえか。……って、うわ。マルムとヘラ死んでる……。えぇ~まじか……」
ヴァラリアに気付いたシルヴェストルが、一瞬にして彼の前に立つ。
ヴァラリアはまじまじと彼を見て、ヘッと笑った。
「おー。マルムの言ってた通りだ。寝返ったんだな、シルヴェストル」
「ああ、やっぱりマルムに気付かれてたのか」
「おう。地下五十階までS級が一人も欠けずに降りてこられたのも、お前が裏で魔物の間引きしてたからだろ?」
「正解。だってみんなに生き残って欲しかったんだ」
「アーサーへの脅しに使うために、だろ」
「……」
ヴァラリアは遠くで眉を寄せているアーサーに話しかけた。
「おーいアーサー! お前、ずっとこいつの手のひらで転がされてたんだぞー。お前はずーっとこいつに見張られてた。ピンチの時に何度か助けられなかったか? 恩を売られてちょっと良いヤツかもって思わされたんだろ? それにS級を全員生き残らせたのも、究極の選択を強いるためにわざと殺さなかったんだぞー」
「ヴァラリア、僕はやっとの思いでアウスを手に入れたんだよ。仲を裂くようなことを言うなら、殺すよ」
「ははは! こんなこと言っても言わなくても、俺を殺すつもりだろ?」
「話が早いね。じゃ、さよなら」
首を撥ねられる直前、ヴァラリアがモニカに声をかけた。
「モニカ、お前が俺のフレンチトースト食う姿、可愛くて好きだったぜ。俺の手で殺したかっ――」
「っ……」
シルヴェストルがヴァラリアの首を撥ねたのと同時に、ヴァラリアがシルヴェストルに注射を打ち込んだ。首がなくなったのに、注射器を押し込み液体を最後まで注入する。
シルヴェストルは慌てて注射器を抜いたが、液体は体内に入ってしまった。
「これは……一体……」
ヴァラリアの首が、けたたましく笑う。
「魔物の理性を奪い去り……本能だけになる薬……。魔物の本能は……ヒトを喰うことだ……さあ、殺せシルヴェストル……ヒトに憧れ……ヒトになりたかったお前は……言葉すら忘れた凶悪な魔物に……な……る……」
「……」
シルヴェストルの顔が蒼白になる。体に異変が起こったのを察知したようだ。彼は必死の形相でアーサーに向かって叫んだ。
「逃げてアウス!! 他のヒトも連れて逃げるんだ!! 僕は君との約束を破りたくない……! 早く! 僕から逃げて――」
言葉の途中で、シルヴェストルの体から力が抜ける。そして次の瞬間、シルヴェストルがカミーユに襲いかかった。
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