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北部編:決断

話し合い

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アーサーとモニカは、イルネーヌ町でベニートパーティと再会できたことに大喜びした。ベニートたちも、元気そうな双子を見てホッと胸を撫でおろす。

次の日の夜、クルドのアジトに、クルドパーティ、カミーユパーティ、ベニートパーティ、シャナ、ユーリ、そして双子が集まった。アジトは決して狭くはなかったが、さすがに16人もの人が集まるとギチギチだ。

そんな中、カミーユが皆に向かって口を開いた。

「おいお前ら、話したいことがある。アーサーとモニカのことだ」

やっとか、という様子で皆がリビングルームに集まった。子どもたち、シャナ、そしてクルドとカミーユは椅子に座り、その他のメンバーは立つ。

カミーユは双子に視線を向け、異論は認めない口調で話す。

「アーサー、モニカ。ここでは隠し事はなしだ。ここにいる全員……ユーリ以外は、お前らの正体を知っている。この際ユーリにも聞かせるぞ。いいな」

「……うん」

アーサーとモニカはちらりとユーリを見た。嫌われちゃったらどうしよう、と不安そうに体を揺らしている。
カミーユはそれに構わず、ユーリに双子の正体を明かす。

「ユーリ、アーサーとモニカは、10年前に死んだとされている、アウス王子とモリア王女だ」

「え? ……ええーーーー!?」

驚きすぎて、ユーリが椅子からひっくり返ったので、リアーナとマデリアが噴き出した。

「ユーリのこんなみっともねえ姿、初めて見たぜー! ギャハハ!」

「かわいいわ。とてもかわいい。どれだけ大人びていても、子どもなのね」

ユーリには、二人のくだらない会話なんてひとつも耳に入らず、口をパクパクさせながら双子を指さした。

「え? あれっ? ということは、アーサーとモニカは、王子さまと王女さまってこと……?」

「そう言ってるだろ」

「え? え? ええ? ど、どうして王子さまと王女さまが、ポントワーブにいるの……?」

かくかくしかじか、カミーユは大雑把に双子がポントワーブに来た経緯を話した。その間アーサーとモニカはビクビクしていたが、話を聞き終えたユーリは、もちろんそんなことひとつも気にしなかった。

「そっか。大変な幼少時代を過ごしていたんだね。アーサー、モニカ、ポントワーブでの生活は楽しい?」

「うん」

「すごく楽しいよ」

アーサーとモニカがコクコク頷くと、ユーリはニパッと笑う。

「良かったあ」

「~~……」

ユーリの笑顔に、双子は目を擦った。黙っててごめんなさいと小さな声で謝ったが、ユーリは「いいんだ」と二人の手を握る。

「失礼になっちゃうかもしれないけど、僕にとってアーサーとモニカが、王子さまとか王女さまとか、そんなの関係ないし。そうでしょ?」

「うん……」

「ありがとう、ユーリ……」

しんみりした空気に、時間を気にしているカミーユがすっぱりと割り込む。

「ま、そういうことなんだ。そんで、こいつらは教会事件以来ずっと王族に命を狙われているんだ。王族が大掛かりに暗殺をしかけたのは三年前と、ほんでついこの間だ」

「……そんな……」

「こいつらの暗殺のついでに目を付けられてんのが、俺のパーティと、クルドパーティ、ベニートパーティだ」

「「え……?」」

始めて聞く事実に顔を上げた双子と目が合ったカミーユは、小さく頷く。

「おう。ま、その件に関してお前らが申し訳ねえと思う必要は全くねえ。お前らの事だから、それを知ったら自分らを責めると思って今まで黙ってたが、今はそうも言ってらんねえし、お前らにも協力してもらいてえんだ」

「そうだ。お前ら、冷静に聞いてくれよな。それで今後どうしていくかを、一緒に考えるんだ。分かったな」

クルドの言葉に、アーサーとモニカは唇を噛んで「分かった」と応えた。

「まず、お前らに包み隠さず伝えておく。俺らのパーティは、お前らと引き離すためにずっと指定依頼を出し続けられていた。あわよくば死ねとでも思ってたんだろう」

「……」

双子は、カミーユパーティが多忙なことを知っていた。だがそれがまさか自分たちのせいだったとは思いもしなかった。

「カミーユーー」

アーサーの言葉を、カミーユが遮る。

「おっと、謝るのはなしだぜ。いいか、これから絶対に俺らに謝んな。謝られたって嬉しくねえ」

「……」

「次、クルドパーティは、お前らの暗殺を、ヴィクス王子から受けていた。それは聞いてるよな?」

「うん」

「それともう一つ。お前らがイルネーヌ町に来たタイミングで、クルドパーティへの仕事が来なくなった」

「え……?」

「ちなみに俺らの指定依頼も止まった」

「……?」

「わけわかんねえだろうが、そのまま通して聞いてくれ」

「う、うん……」

「最後にベニートパーティだ。こいつらは、この三年間で三回、正体不明の依頼者から指定依頼を受けていたんだが、全部お前らを守るような動きをさせられている。魔女の件と、今回の件でだ」

「……?」

「以上だ」

難しい話にすでに白目を向いているモニカの隣で、アーサーが眉をひそめてカミーユに尋ねた。

「えっと、カミーユ。よく分からない……。それじゃあまるで、僕たちを暗殺しようとしてる人と、守ろうとしてる人がいるみたいに聞こえるけど」

「そうなんだよ」

「え……」

「事前に大人たちでじっくり話し合ったんだがな。そこで出た仮説がひとつある」

「どんな……?」

カミーユはクルドとベニートに目線を送り、彼らが頷いたのを見てから答えた。

「王族の中で、お前らを暗殺したいやつと、守りたいやつがバチッてる可能性だ」
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