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北部編:懐かしい顔ぶれ

誰と誰が寝るか問題

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アーサーとモニカがカミーユパーティと再会して一カ月が経った。彼らは今もクルドのアジトで生活をしている。

あの日から毎日、アーサーはジルに血液をもらっている。アーサーが欲しがるというよりかは、毎晩ジルが飲んでくださいと言わんばかりの勢いで彼の部屋に入り、ナイフを差し出すのだ。
モニカに血液をもらっている時は遠慮して思う存分飲めなかったが、ジルはむしろたくさん飲んだ方が喜んでくれるので、正直アーサーにとっても助かっていた。

リアーナは、アーサーの魔力を楽しそうに眺めたり、モニカと魔法の基礎練習をして過ごした。双子と過ごせる毎日が幸せで仕方ないのか、彼女はいつも以上に大きな笑い声をあげていた。

カトリナは、モニカの短くなった髪を整えてあげた。そしてショートカットにも似合う服を一緒に買いに行き、可愛い可愛いと言って彼女を褒める。
購入したもふもふの帽子を室内でも外そうとしないほど、モニカにとって短くなった髪はあまり人に見せたくないものだったが、カトリナのおかげで少しずつ自分の姿を受け入れられるようになってきた。

体調が悪く、精神状態も不安定だった当初に比べ、元気そうに明るく笑う時間が増えたので、クルドたちもカミーユたちも、ひとまずホッと一息ついた。

クルドとカミーユの勧めで、双子は当分の間クルドのアジトで生活をすることになった。ポントワーブだけでなく、今やどこにいても危険なので、常にS級がいるこのアジトで生活するのが一番安全だろうというのが彼らの意見だった。

カミーユパーティも、指定依頼が来ない間はクルドのアジトで滞在することにした。
家族がいるので一カ月の半分はポントワーブで過ごそうとしていたカミーユだったが、それをシャナとユーリに伝えると、それなら私たちがそちらへ行くと返事が来た。彼らと顔見知りのクルドパーティは大喜びで彼らを歓迎した。その代わり、ベッドひとつにつき二人(子どもは三人)が寝なければならないことになる。

ユーリと一緒に眠れると聞いたアーサーとモニカは大喜びだったが、カミーユパーティとクルドパーティは壮絶な言い争いを繰り広げた。

「もちろん俺はシャナとだよな。当然だよな」

カミーユは余裕たっぷりにそう言い、一人優雅に葉巻を吸っている。

「常識的に考えると、カミーユとシャナ、クルドとブルギー、マデリアとミント、リアーナとカトリナ、そして僕とサンプソンだね」

真っ当な意見を出したジルに、すぐさまサンプソンとマデリアの反論が飛んでくる。

「いやだよ君と寝るなんて。僕がシャナと寝るから、カミーユがジルと寝て」

「おいなんでだよ!!」

「そうよ。どうせならユーリと寝たいわ。だからカミーユがアーサーとモニカと寝て、シャナはミントと寝るの」

「嫌に決まってんだろ! ユーリに手ぇ出したらぶっ殺すぞ!」

「え……カミーユ、わたしたちと一緒に寝るの、そんなにいやなの……?」

「そ、そっかあ……ごめんね、今までベッドに潜り込んだりして……」

しょんぼりと俯く双子に、カミーユは慌ててかぶりを振る。

「ちげぇぇっ! お前らと寝るのがいやっつってんじゃねえ!! マデリアと! ユーリを! 一緒に寝かせたくねえんだよ!!」

「じゃあユーリとカミーユが寝ればいいんじゃない? それで僕はシャナと寝るよ」

大声で喚くカミーユに爽やかな笑顔を向けるサンプソン。それに対して頬を膨らませるマデリア。

「あら。じゃあ私は誰と寝たらいいのよ」

「ジルでいいんじゃない?」

「そうね。ジルでもいいわよ、私は。本当はユーリがいいけど」

そっと腕に触れられたジルは、無表情で彼女の手を振り払いボソッと口を開いた。

「僕は嫌だよ。それならカミーユと僕が寝る」

「なんでそうなる!!」

言い合っている四人をニコニコと眺めていたカトリナが、ゆっくりと立ち上がる。

「うーん、じゃあそのあたりはあなたたちでゆっくり決めてちょうだいねェ。私とリアーナ、クルドとブルギーは決まりでしょうから、あっちでゆっくり、静かにお茶でも飲んでるわァ」

「そういうことだな!! おい、アーサー、モニカ! あっちでうまいもん食おうぜー!」

「「わーい!!」」

カトリナとリアーナ、そして双子が退場する姿をポカンと見ていたカミーユは、ハッと我に返り彼らに叫んだ。

「お前らぁ! 俺を助けろよ!! おい! おいぃ!!」

しかし、彼らが振り返ることはなかった。

揉めに揉めたカミーユ、ジル、サンプソン、マデリアは、最終的には2vs2の対戦で勝敗をつけた。
盾役のジルがやたらとサンプソンを狙って攻撃しに行くので、カミーユはマデリアの魔法を一身に受ける羽目になる。しかし辛くもカミーユ組が勝ち、ベッドは当初ジルが提案した振り分けとなった。
窓からその対戦を見物していた双子は、S級同士の白熱した戦いをとても楽しんだという。
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