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北部編:イルネーヌ町
あと白金貨七十枚
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こんな調子で、双子とマデリア、サンプソンは三日に亘ってBランクダンジョンの魔物素材を回収した。
ほとんどがEからⅮ級魔物だったが、なんせ数が多すぎる。倒しても倒しても現れる敵に、アーサーとモニカが「もう勘弁してくれ」と弱気な声をあげるほどだった。
その上、魔物が捌けたらその間はひたすら魔物素材の回収をしなければならない。休む時間は一日当たり三時間ほどしか与えてもらえなかった。
それでも、アーサーとモニカの類まれな能力は目を見張るものだった。
アイスゴーレムなどの魔法が弱点の魔物と遭遇してしまったときにはモニカが一掃し、トロールやオーガなどの大量発生している魔物はアーサーがサクサクと倒していく。それは三日目の疲労が溜まりに溜まったときでも変わりなく、モニカの魔法威力とアーサーの攻撃精度は衰えていなかった。
活動時間の三分の一を魔物解体に費やしているうちに、アーサーもモニカも魔物素材回収に慣れてきた。初日は三十体のオーガを三時間かけて解体していたが、今では二時間でこなすことができるようになった。それに魔物解体中も周りに注意を払える余裕もできて、サンプソンとマデリアが手助けしなくても、侵入してきた魔物を魔法や弓矢でひょいひょいと倒す。
双子の成長速度に、マデリアとサンプソンが口笛を吹く。
「やるじゃない、あの子たち。素材回収も人並みまでは良くなったわね」
「そうだね。これでどこに出しても恥ずかしくないよ」
「そうねえ。初日はほんとにひどかったもの。初心者丸出しで」
「カミーユたちは教えるのが下手くそだって再確認したよ」
「ふふ。ほんとに」
素材回収を終えた双子が戻って来ると、マデリアが彼らを小さな洞窟へ案内した。中ではホカホカのスープと焼き干し肉、パンなど、いつもより豪勢な食事が用意されている。アーサーとモニカが涎を垂らしてそれらにかぶりつくのを眺めながら、サンプソンが尋ねる。
「君たち、この三日で結構な量の素材を回収できたと思うんだけど、それで足りる?」
「うーん。これでどのくらいの稼ぎになるのか分からないからなんとも……」
モニカが応えると、マデリアが素材単価について大まかに教えてくれた。
「だいたいだけど、オーガ一体につき金貨三枚分、トロール一体につき金貨二枚分、アイスゴーレム一体につき金貨五枚分の素材が回収できるわ」
「えーーー!? アイスゴーレムってそんなに高かったのぉ!?」
のけぞるモニカに、彼女はジトッとした目を向ける。
「そうよ。アイスゴーレムの氷はなかなか溶けないから、漁師たちや氷彫刻職人に高値で買い取ってもらえるのよ。なのにあなたときたら一瞬で溶かしちゃうんだもの。残っているのはゴーレムの目玉だけよ。ちなみにゴーレムの目玉はひとつ大銀貨三枚」
「ひぇん……」
双子が今まで回収した主な魔物は、オーガ三百体、トロール四百体、アイスゴーレム三十体、その他雑魚魔物約千五百体だ。アイスゴーレムはもったいないことをしたが、それでも現時点で概算白金貨二百四十六枚と金貨八枚を稼げたことになる。
「おー! すごい、あっという間に稼げちゃった!」
大喜びしているアーサーがそう言うと、彼らの三日間の苦労を知っているサンプソンがクスクス笑う。
「あっという間ではないけど、三日で白金貨二百枚はなかなか上出来だね」
「あと白金貨六十枚かあ……」
「……え、まだ足りないの? 白金貨六十枚も?」
「うん……。でも自分たちの生活費も欲しいし、あと白金貨七十枚は欲しいところ……」
「その金額をFランクダンジョンで稼ごうと思ってたのかい? アイススライムをひたすら倒して?」
「うん……」
言葉を失ったマデリアとサンプソンが顔を見合わせた。
「うーん、なんてマイペースなんだろう」
「私たち、そろそろ帰りたいのよ。お酒が尽きたんだもの」
「だから残りのお金は手っ取り早く稼ぐよ」
「五時間仮眠しなさい。それでちゃちゃっと最下層に行くわよ」
「最下層……って、もしかして……」
アーサーがおそるおそる尋ねると、マデリアが床に寝転びながら応える。
「A級キマイラ一点狙いよ。あれは一体で金貨十五枚分の素材が取れるから」
「たった五十体倒せば終わり。安心して。四十体は僕たちが倒してあげるから」
「じゃ、おやすみなさい」
「僕は見張りをするから、アーサーとモニカも安心して眠ってね」
洞窟を出ようとするサンプソンに、アーサーは心配そうな表情を浮かべた。
「え、でもサンプソンさん、三日間ずっと見張りしてくれてるよ。そろそろ寝た方が……」
「大丈夫。こんなのよくあることだから。一週間は寝なくて平気」
「サンプソンのことは気にせず、あなたたちは寝なさい。さすがに疲れた顔をしてるわよ」
「でも……」
このやりとりすら時間の無駄だと感じたのか、マデリアが双子に杖を一振りした。アーサーとモニカはこてんと眠り、五時間後に起こされたときには少しだけ体が軽くなっていた。
ほとんどがEからⅮ級魔物だったが、なんせ数が多すぎる。倒しても倒しても現れる敵に、アーサーとモニカが「もう勘弁してくれ」と弱気な声をあげるほどだった。
その上、魔物が捌けたらその間はひたすら魔物素材の回収をしなければならない。休む時間は一日当たり三時間ほどしか与えてもらえなかった。
それでも、アーサーとモニカの類まれな能力は目を見張るものだった。
アイスゴーレムなどの魔法が弱点の魔物と遭遇してしまったときにはモニカが一掃し、トロールやオーガなどの大量発生している魔物はアーサーがサクサクと倒していく。それは三日目の疲労が溜まりに溜まったときでも変わりなく、モニカの魔法威力とアーサーの攻撃精度は衰えていなかった。
活動時間の三分の一を魔物解体に費やしているうちに、アーサーもモニカも魔物素材回収に慣れてきた。初日は三十体のオーガを三時間かけて解体していたが、今では二時間でこなすことができるようになった。それに魔物解体中も周りに注意を払える余裕もできて、サンプソンとマデリアが手助けしなくても、侵入してきた魔物を魔法や弓矢でひょいひょいと倒す。
双子の成長速度に、マデリアとサンプソンが口笛を吹く。
「やるじゃない、あの子たち。素材回収も人並みまでは良くなったわね」
「そうだね。これでどこに出しても恥ずかしくないよ」
「そうねえ。初日はほんとにひどかったもの。初心者丸出しで」
「カミーユたちは教えるのが下手くそだって再確認したよ」
「ふふ。ほんとに」
素材回収を終えた双子が戻って来ると、マデリアが彼らを小さな洞窟へ案内した。中ではホカホカのスープと焼き干し肉、パンなど、いつもより豪勢な食事が用意されている。アーサーとモニカが涎を垂らしてそれらにかぶりつくのを眺めながら、サンプソンが尋ねる。
「君たち、この三日で結構な量の素材を回収できたと思うんだけど、それで足りる?」
「うーん。これでどのくらいの稼ぎになるのか分からないからなんとも……」
モニカが応えると、マデリアが素材単価について大まかに教えてくれた。
「だいたいだけど、オーガ一体につき金貨三枚分、トロール一体につき金貨二枚分、アイスゴーレム一体につき金貨五枚分の素材が回収できるわ」
「えーーー!? アイスゴーレムってそんなに高かったのぉ!?」
のけぞるモニカに、彼女はジトッとした目を向ける。
「そうよ。アイスゴーレムの氷はなかなか溶けないから、漁師たちや氷彫刻職人に高値で買い取ってもらえるのよ。なのにあなたときたら一瞬で溶かしちゃうんだもの。残っているのはゴーレムの目玉だけよ。ちなみにゴーレムの目玉はひとつ大銀貨三枚」
「ひぇん……」
双子が今まで回収した主な魔物は、オーガ三百体、トロール四百体、アイスゴーレム三十体、その他雑魚魔物約千五百体だ。アイスゴーレムはもったいないことをしたが、それでも現時点で概算白金貨二百四十六枚と金貨八枚を稼げたことになる。
「おー! すごい、あっという間に稼げちゃった!」
大喜びしているアーサーがそう言うと、彼らの三日間の苦労を知っているサンプソンがクスクス笑う。
「あっという間ではないけど、三日で白金貨二百枚はなかなか上出来だね」
「あと白金貨六十枚かあ……」
「……え、まだ足りないの? 白金貨六十枚も?」
「うん……。でも自分たちの生活費も欲しいし、あと白金貨七十枚は欲しいところ……」
「その金額をFランクダンジョンで稼ごうと思ってたのかい? アイススライムをひたすら倒して?」
「うん……」
言葉を失ったマデリアとサンプソンが顔を見合わせた。
「うーん、なんてマイペースなんだろう」
「私たち、そろそろ帰りたいのよ。お酒が尽きたんだもの」
「だから残りのお金は手っ取り早く稼ぐよ」
「五時間仮眠しなさい。それでちゃちゃっと最下層に行くわよ」
「最下層……って、もしかして……」
アーサーがおそるおそる尋ねると、マデリアが床に寝転びながら応える。
「A級キマイラ一点狙いよ。あれは一体で金貨十五枚分の素材が取れるから」
「たった五十体倒せば終わり。安心して。四十体は僕たちが倒してあげるから」
「じゃ、おやすみなさい」
「僕は見張りをするから、アーサーとモニカも安心して眠ってね」
洞窟を出ようとするサンプソンに、アーサーは心配そうな表情を浮かべた。
「え、でもサンプソンさん、三日間ずっと見張りしてくれてるよ。そろそろ寝た方が……」
「大丈夫。こんなのよくあることだから。一週間は寝なくて平気」
「サンプソンのことは気にせず、あなたたちは寝なさい。さすがに疲れた顔をしてるわよ」
「でも……」
このやりとりすら時間の無駄だと感じたのか、マデリアが双子に杖を一振りした。アーサーとモニカはこてんと眠り、五時間後に起こされたときには少しだけ体が軽くなっていた。
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