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北部編:イルネーヌ町
氷の洞窟型ダンジョン(G級)
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一着しかない薄着の服のまま宿の外へ出た双子は、ガチガチ震えながら冒険者ギルドへ向かった。ひと気がなく静かな町だが、冒険者ギルドに入った途端、賑やかな騒音に包まれる。二人は懐かしい雰囲気に思わず頬を緩ませた。
イルネーヌ町の冒険者ギルドは、部屋の中央に大きな暖炉が設置されていた。赤々と火をくべている暖炉を、数十の丸テーブルが囲んでいる。テーブルには毛皮のマントを纏った冒険者が、酒を飲んだり地図を広げたりしている。仲には暖炉で干し肉を炙り、うめえうめえとはしゃいでいる者たちもいた。
「冒険者って、どこでも賑やかな人たちが多いんだねえ」
ほわーと幸せそうな顔をするアーサーに、モニカもコクコク頷いた。
「うんうん! やっぱり賑やかな場所の方が落ち着くね! あー、この町に冒険者ギルドがあってよかったあ」
「ほんとほんと」
わたしも毛皮のマント欲しいなあと、指をくわえて冒険者を眺めているモニカの手を引き、アーサーは情報屋の元へ向かった。そこで大銀貨二枚で周辺の地図を買い、テーブルに地図を広げる。
「さて、この町から近いのは、FとEのどっちかなあ~」
「あった! E級! きゃー! やったー!」
「げっ」
モニカが指さしたEランクダンジョンは、この町から三十分ほどの場所に位置していた。残念ながら、Fランクは町から徒歩で二時間の距離にある。
「ふふん! アーサーが言ったんだからね! Gランクの次はEランクで決まり!」
「分かったよぉ……。その代わり、始めに行くGランクダンジョンは、十割殲滅する気で素材回収しようね。良い武器と防具を揃えないといけないから」
「もちろん! あと、毛皮のマントもね!」
その後双子は冒険者ギルドを出て、余っていたお金で食料とアイテムボックスを購入した。弓矢も欲しいところだが、残念ながら所持金が足りなかった。
「うぅ……。毎日ガレットを食べてたからだ……」
「大丈夫よ。遠距離はわたしに任せて!」
「素材は傷めないようにね? モニカ」
「あっ、そうだった……。それじゃあ思いっきり魔法打てないじゃない……」
「そうだよ。残念でした」
Gランクダンジョンは、町の西門から出て徒歩一時間の場所にあった。ポントワーブあたりではまず見かけない、氷の洞窟型ダンジョンだ。つららが下がる青く光る氷でできた洞窟に、双子は感嘆の声を漏らした。
「わあ……きれい……!」
「フォントメウみたいだ……」
「アーサー、早く入りましょ!」
モニカがおおはしゃぎで洞窟の中へ走っていき、ツルンと足を滑らせて盛大に転んだ。慌ててアーサーは駆け寄り、モニカを抱き起こす。
「モニカ! 大丈夫!?」
「いったぁ……」
「床も氷でつるつるだね。気を付けて進まないと……」
「それにすごく寒いよぉ……」
「これは……あんまり長居できないかもね」
氷の床を歩くことはなかなか難しい。アーサーはすぐに慣れて器用に転ばず歩いていたが、モニカは三歩歩けば足を滑らせた。最終的には、モニカはしゃがんで兄の手に掴まり、彼に引っ張ってもらって移動した。
しばらく奥へ進むと、水色に変色したスライムが現れた。ぽよぽよと柔らかそうな体を揺らしているものもいれば、カチカチに固まっているものもいる。
「モニカ! アイススライムとアイスカチッカだ!」
「きゃー! かわいい!」
「アイススライムの液体と、カチッカの破片は素材になるよ。よし、素材を集めよう」
モニカはもう歩くことを放棄して、うつ伏せに寝そべり滑ってアイススライムを捕まえていた。革袋の中にアイススライムを放り込み、ナイフでぷちぷち刺していく。革袋がたぷたぷになるまで、それを繰り返した。
一方アーサーは、アイスカチッカをアサギリの柄先で砕いた。岩のように固いカチッカにガンガン叩きつけられるたびに、アサギリの怒号が洞窟に響き渡る。
《おぉぉいアーサーこらテメェ! 俺はハンマーじゃねえ脇差だ!! そんなかてぇもんに叩きつけんじゃねえクソがぁ!!》
「ごめんねアサギリ。でも君しかカチッカを砕けそうなものがなくて」
《いや俺も砕けねえよ!!》
「ううん、砕けてるよ。自信もって!」
《ちげえぇ!! それはお前のクソバカ力で無理矢理砕いてるだけだっつの!! やめろぉぉぉっ》
結局、アイスカチッカを殲滅するまでアーサーはやめてくれなかった。
「よし! 次に進もうかモニカ」
「はーい!」
《もう二度とアイスカチッカとかいうクソ魔物は出てくんなよ……アーサーてめぇ、あとで覚えてろよな……今晩嫌な夢見させてやるからなクソが……》
再び、モニカはアーサーに掴まり奥へと進む。兄に引っ張ってもらっている間に、モニカは温かい風を吹かせて濡れた服を乾かした。
「あ、モニカ。その風すっごく温かくて気持ちいい」
「ね! この風があったら寒さもしのげるかも。ずっとあったかい風吹かせとこうか」
「嬉しい! ん~。モニカの魔法は便利だなあ」
道中、ゴブリンやオークなどお馴染みの魔物も現れた。それらも氷の洞窟で棲息していたためか、毛深かったり氷魔法を扱えたりと、独自の進化をしていた。モニカによる一閃の風魔法によって、反撃する間もなく殲滅されてしまったが。
「懐かしいなあ。昔はよく、ゴブリンやオークの素材でお金稼いでたねえ」
エリクサーでお金の余裕ができてからは、あまり魔物の素材回収をしていなかった。オークの素材をサクサクと取り出していくアーサーは、その懐かしい作業に口元を緩めている。
「昔はオークの背骨を取り出すだけでバテてたのにね」
見物していたモニカがそう言うと、アーサーはクスクス笑った。
「今じゃ、こんなナイフでも楽々取り出せるよ。ちょっとは強くなったのかな」
「なってるわよ。六年間、色んな経験してきたんだもん」
イルネーヌ町の冒険者ギルドは、部屋の中央に大きな暖炉が設置されていた。赤々と火をくべている暖炉を、数十の丸テーブルが囲んでいる。テーブルには毛皮のマントを纏った冒険者が、酒を飲んだり地図を広げたりしている。仲には暖炉で干し肉を炙り、うめえうめえとはしゃいでいる者たちもいた。
「冒険者って、どこでも賑やかな人たちが多いんだねえ」
ほわーと幸せそうな顔をするアーサーに、モニカもコクコク頷いた。
「うんうん! やっぱり賑やかな場所の方が落ち着くね! あー、この町に冒険者ギルドがあってよかったあ」
「ほんとほんと」
わたしも毛皮のマント欲しいなあと、指をくわえて冒険者を眺めているモニカの手を引き、アーサーは情報屋の元へ向かった。そこで大銀貨二枚で周辺の地図を買い、テーブルに地図を広げる。
「さて、この町から近いのは、FとEのどっちかなあ~」
「あった! E級! きゃー! やったー!」
「げっ」
モニカが指さしたEランクダンジョンは、この町から三十分ほどの場所に位置していた。残念ながら、Fランクは町から徒歩で二時間の距離にある。
「ふふん! アーサーが言ったんだからね! Gランクの次はEランクで決まり!」
「分かったよぉ……。その代わり、始めに行くGランクダンジョンは、十割殲滅する気で素材回収しようね。良い武器と防具を揃えないといけないから」
「もちろん! あと、毛皮のマントもね!」
その後双子は冒険者ギルドを出て、余っていたお金で食料とアイテムボックスを購入した。弓矢も欲しいところだが、残念ながら所持金が足りなかった。
「うぅ……。毎日ガレットを食べてたからだ……」
「大丈夫よ。遠距離はわたしに任せて!」
「素材は傷めないようにね? モニカ」
「あっ、そうだった……。それじゃあ思いっきり魔法打てないじゃない……」
「そうだよ。残念でした」
Gランクダンジョンは、町の西門から出て徒歩一時間の場所にあった。ポントワーブあたりではまず見かけない、氷の洞窟型ダンジョンだ。つららが下がる青く光る氷でできた洞窟に、双子は感嘆の声を漏らした。
「わあ……きれい……!」
「フォントメウみたいだ……」
「アーサー、早く入りましょ!」
モニカがおおはしゃぎで洞窟の中へ走っていき、ツルンと足を滑らせて盛大に転んだ。慌ててアーサーは駆け寄り、モニカを抱き起こす。
「モニカ! 大丈夫!?」
「いったぁ……」
「床も氷でつるつるだね。気を付けて進まないと……」
「それにすごく寒いよぉ……」
「これは……あんまり長居できないかもね」
氷の床を歩くことはなかなか難しい。アーサーはすぐに慣れて器用に転ばず歩いていたが、モニカは三歩歩けば足を滑らせた。最終的には、モニカはしゃがんで兄の手に掴まり、彼に引っ張ってもらって移動した。
しばらく奥へ進むと、水色に変色したスライムが現れた。ぽよぽよと柔らかそうな体を揺らしているものもいれば、カチカチに固まっているものもいる。
「モニカ! アイススライムとアイスカチッカだ!」
「きゃー! かわいい!」
「アイススライムの液体と、カチッカの破片は素材になるよ。よし、素材を集めよう」
モニカはもう歩くことを放棄して、うつ伏せに寝そべり滑ってアイススライムを捕まえていた。革袋の中にアイススライムを放り込み、ナイフでぷちぷち刺していく。革袋がたぷたぷになるまで、それを繰り返した。
一方アーサーは、アイスカチッカをアサギリの柄先で砕いた。岩のように固いカチッカにガンガン叩きつけられるたびに、アサギリの怒号が洞窟に響き渡る。
《おぉぉいアーサーこらテメェ! 俺はハンマーじゃねえ脇差だ!! そんなかてぇもんに叩きつけんじゃねえクソがぁ!!》
「ごめんねアサギリ。でも君しかカチッカを砕けそうなものがなくて」
《いや俺も砕けねえよ!!》
「ううん、砕けてるよ。自信もって!」
《ちげえぇ!! それはお前のクソバカ力で無理矢理砕いてるだけだっつの!! やめろぉぉぉっ》
結局、アイスカチッカを殲滅するまでアーサーはやめてくれなかった。
「よし! 次に進もうかモニカ」
「はーい!」
《もう二度とアイスカチッカとかいうクソ魔物は出てくんなよ……アーサーてめぇ、あとで覚えてろよな……今晩嫌な夢見させてやるからなクソが……》
再び、モニカはアーサーに掴まり奥へと進む。兄に引っ張ってもらっている間に、モニカは温かい風を吹かせて濡れた服を乾かした。
「あ、モニカ。その風すっごく温かくて気持ちいい」
「ね! この風があったら寒さもしのげるかも。ずっとあったかい風吹かせとこうか」
「嬉しい! ん~。モニカの魔法は便利だなあ」
道中、ゴブリンやオークなどお馴染みの魔物も現れた。それらも氷の洞窟で棲息していたためか、毛深かったり氷魔法を扱えたりと、独自の進化をしていた。モニカによる一閃の風魔法によって、反撃する間もなく殲滅されてしまったが。
「懐かしいなあ。昔はよく、ゴブリンやオークの素材でお金稼いでたねえ」
エリクサーでお金の余裕ができてからは、あまり魔物の素材回収をしていなかった。オークの素材をサクサクと取り出していくアーサーは、その懐かしい作業に口元を緩めている。
「昔はオークの背骨を取り出すだけでバテてたのにね」
見物していたモニカがそう言うと、アーサーはクスクス笑った。
「今じゃ、こんなナイフでも楽々取り出せるよ。ちょっとは強くなったのかな」
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