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魂魄編:ピュトア泉
僕の妹、かわいすぎでは…?
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アーサーとフィックがケラケラ笑っていると、小屋の扉が勢いよく開き、少女二人が入ってきた。
長髪と短髪の、銀髪の少女。二人とも同じような服を身に付けていたせいかよく似ていた。アーサーははじめ、聖女の方をモニカだと思った。
「あら。目が覚めた途端元気ですこと」
「アーサーーーー!!」
「?」
長髪の少女がしとやかに微笑み、短髪の少女が大泣きしながらアーサーに飛びついた。
アーサーは、しがみついてわんわん泣いている少女と、フィックのそばで立っている少女を交互に見て、不思議そうに首を傾げる。
「えーっと……あれ? こっちがモニカ?」
「アーサー。君、妹の顔も忘れちゃったのかい?」
フィックが呆れてそう尋ねた。
確かに、今抱きついている少女の匂いや体のふにふにさはモニカのものだ。ぼんやりする頭で考えていたがなかなか働かない。アーサーはそっと短髪の少女の肩を掴み、体を離させて顔をまじまじと見た。よく見ると、髪型以外はモニカそのものだ。
「……モニカ?」
「……」
モニカはしゃくりあげながら頷くが、一向に兄と目を合わせようとしない。それに、髪型を気にしているのか何度も手櫛で梳いている。
「髪、切ったんだね」
「……」
アーサーが髪のことに触れると、モニカは唇を震わせてボロボロと涙を流した。アーサーは彼女の指で涙を拭い、申し訳なさそうに微笑んだ。
「僕のせいだね」
「……」
モニカは首をぶんぶんと横に振った。
「大好きな髪を切らせちゃって……こんなこと言うのは怒られちゃうかもしれないけど……」
「……」
モニカはきゅっと目を瞑った。アーサーの次の言葉を聞くのが怖い。
(きらわれちゃう……。アーサーは長い髪の方がすきだもん……。こんな短い髪……アーサーが綺麗に手入れしてくれてた髪を切っちゃって……がっかりされちゃう……。アーサーの顔を見るのがこわい……)
「すっっっごく似合ってるよ!! モニカ!!」
「っ……」
「えー! 長い髪のモニカもきれいだったけど、短い髪のモニカはかわいくていいなあ~!! うわー! かわいい! かわいいー!」
「……」
モニカはおそるおそる兄を見た。彼は目を輝かせて、頬を紅潮させている。
「短い髪だとモニカのきれいな輪郭が際立っていいねえ! それに、なんだかスタイルもよく見えるよ! わあー首筋がシュッとして見える! かわいい! かわいいよモニカー!! こんなかわいい子が僕の妹かあ~! 今さらだけど、なんだか照れるなあ」
「アーサー……」
「はっ……。ご、ごめん! ごめんねモニカ! モ、モニカは長い髪が好きだもんね。なのにごめんね、こんなこと言って……」
興奮して饒舌になっていたアーサーが、ハッとして口に手を当てた。モニカはおそるおそる口を開く。
「い、いやじゃないの……? がっかりしてない……?」
「え? 僕が? どうして?」
「だって、アーサー、わたしの長い髪が大好きだって言ってた……」
アーサーはうーんと考え込み、確かに口癖のように「モニカの長い髪が好き」だと言っていたことを思い出した。
そこでやっと、モニカがなぜこんなにビクビクしているのかも分かった。
「も、もしかして、髪が短くなったモニカのことを僕がきらいになるとか思ってたの?」
「だ、だってアーサー、わたしの本体は長い髪だと思ってたでしょ……?」
「思ってないよ!? モニカの本体はちゃんとモニカだよ!?」
「だから、髪が短くなったらがっかりされると思って……。ふえっ……ふええ……」
「ええー!? そ、そりゃ確かにモニカの長い髪は、良い香りがして、ふわふわで気持ち良くて大好きだったけど! それはモニカの髪だからであって、正直に言うと僕は長くても短くてもどっちでもモニカのこと大好きだよ! モニカが自分の長い髪のこと大好きだったから、僕もモニカの大好きなものを大好きになっただけ! つまり、僕はモニカのことが大好きだから、モニカの大好きな長い髪を大好きになって……あれ、何言ってるのか分からなくなってきた……」
ごまかすように笑いながら頬を掻くアーサーに、シチュリアとフィックがクスクス笑う。
「目覚めて早々騒がしい人ね」
「ね? 面白いだろう?」
「ええ。不思議な人」
「言葉を交わすだけで、いや、彼が話しているところを見るだけで、幸せな気持ちになるね」
「……」
それからもアーサーは、短くなった髪を気にしているモニカに、何度も何度も「かわいい」と言った。それはモニカを元気づけようとしているためでもあったが、それ以前にただ単純にアーサーが短髪姿の妹が気に入ったからだった。
鼻の下を伸ばしてデレデレしているアーサーに、モニカは少しずつ元気を取り戻していった。
「アーサー、髪が短いわたしもかわいい?」
「すっごくかわいい!」
「髪が短いわたしでもすき?」
「だいすき!」
「ほんと?」
「ほんと!!」
「えへへ」
照れくさそうに笑いながら、モニカはぎゅーっとアーサーにしがみついた。アーサーも妹を抱き返して、彼女の肩に顎を乗せた。
長髪と短髪の、銀髪の少女。二人とも同じような服を身に付けていたせいかよく似ていた。アーサーははじめ、聖女の方をモニカだと思った。
「あら。目が覚めた途端元気ですこと」
「アーサーーーー!!」
「?」
長髪の少女がしとやかに微笑み、短髪の少女が大泣きしながらアーサーに飛びついた。
アーサーは、しがみついてわんわん泣いている少女と、フィックのそばで立っている少女を交互に見て、不思議そうに首を傾げる。
「えーっと……あれ? こっちがモニカ?」
「アーサー。君、妹の顔も忘れちゃったのかい?」
フィックが呆れてそう尋ねた。
確かに、今抱きついている少女の匂いや体のふにふにさはモニカのものだ。ぼんやりする頭で考えていたがなかなか働かない。アーサーはそっと短髪の少女の肩を掴み、体を離させて顔をまじまじと見た。よく見ると、髪型以外はモニカそのものだ。
「……モニカ?」
「……」
モニカはしゃくりあげながら頷くが、一向に兄と目を合わせようとしない。それに、髪型を気にしているのか何度も手櫛で梳いている。
「髪、切ったんだね」
「……」
アーサーが髪のことに触れると、モニカは唇を震わせてボロボロと涙を流した。アーサーは彼女の指で涙を拭い、申し訳なさそうに微笑んだ。
「僕のせいだね」
「……」
モニカは首をぶんぶんと横に振った。
「大好きな髪を切らせちゃって……こんなこと言うのは怒られちゃうかもしれないけど……」
「……」
モニカはきゅっと目を瞑った。アーサーの次の言葉を聞くのが怖い。
(きらわれちゃう……。アーサーは長い髪の方がすきだもん……。こんな短い髪……アーサーが綺麗に手入れしてくれてた髪を切っちゃって……がっかりされちゃう……。アーサーの顔を見るのがこわい……)
「すっっっごく似合ってるよ!! モニカ!!」
「っ……」
「えー! 長い髪のモニカもきれいだったけど、短い髪のモニカはかわいくていいなあ~!! うわー! かわいい! かわいいー!」
「……」
モニカはおそるおそる兄を見た。彼は目を輝かせて、頬を紅潮させている。
「短い髪だとモニカのきれいな輪郭が際立っていいねえ! それに、なんだかスタイルもよく見えるよ! わあー首筋がシュッとして見える! かわいい! かわいいよモニカー!! こんなかわいい子が僕の妹かあ~! 今さらだけど、なんだか照れるなあ」
「アーサー……」
「はっ……。ご、ごめん! ごめんねモニカ! モ、モニカは長い髪が好きだもんね。なのにごめんね、こんなこと言って……」
興奮して饒舌になっていたアーサーが、ハッとして口に手を当てた。モニカはおそるおそる口を開く。
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「え? 僕が? どうして?」
「だって、アーサー、わたしの長い髪が大好きだって言ってた……」
アーサーはうーんと考え込み、確かに口癖のように「モニカの長い髪が好き」だと言っていたことを思い出した。
そこでやっと、モニカがなぜこんなにビクビクしているのかも分かった。
「も、もしかして、髪が短くなったモニカのことを僕がきらいになるとか思ってたの?」
「だ、だってアーサー、わたしの本体は長い髪だと思ってたでしょ……?」
「思ってないよ!? モニカの本体はちゃんとモニカだよ!?」
「だから、髪が短くなったらがっかりされると思って……。ふえっ……ふええ……」
「ええー!? そ、そりゃ確かにモニカの長い髪は、良い香りがして、ふわふわで気持ち良くて大好きだったけど! それはモニカの髪だからであって、正直に言うと僕は長くても短くてもどっちでもモニカのこと大好きだよ! モニカが自分の長い髪のこと大好きだったから、僕もモニカの大好きなものを大好きになっただけ! つまり、僕はモニカのことが大好きだから、モニカの大好きな長い髪を大好きになって……あれ、何言ってるのか分からなくなってきた……」
ごまかすように笑いながら頬を掻くアーサーに、シチュリアとフィックがクスクス笑う。
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「ええ。不思議な人」
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「……」
それからもアーサーは、短くなった髪を気にしているモニカに、何度も何度も「かわいい」と言った。それはモニカを元気づけようとしているためでもあったが、それ以前にただ単純にアーサーが短髪姿の妹が気に入ったからだった。
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